馬肉よさらば

 そしてこんにちは。最初に言っておきますがこのシリーズはグルメガイドではありませんしレシピガイドでもありません。食という概念に含まれるペーソスガイドです。

 馬刺しはうまいということは知っていました。馬刺しはうまいぞ。わたしはそのへんの知識がザル以下の人間で、ありとあらゆるものは口に入れてみてから判断すればいいと思っており(決してマネしないでください)、そもそもわたくしの家庭がその傾向のある家で一回水仙の卵とじを一家全員食って死にそうになったことがあります。ニラ玉のつもりだったんだよ。ニラ玉にしか見えないしなんか苦いとは思ったけどニラ玉って変な味することあるじゃん……。

 野草食をするときは十分気をつけてな……。

 ところで春になったから野草食の狩場をこのへんで探そうと思ってるうちに夏が来てしまいますね。犬猫の排泄物に思いを馳せながら適当な草をかじる遊びをやっていないとなんとなくさびしい育ちなんだ。山時鳥スイバ摘み。

 まあ、うち、向かいに八百屋があって、摘むより早いんですが……。


 違う、野草食の話ではない。馬肉です。珍肉界においても珍度の低い馬肉ですが、生で食って百パーセント安全かっていうとそういうわけでもないらしいということで、まあでもわたしすぐものを生でかじるので、そこはまあ自己責任でかじるのでいいんですが、とりあえず馬刺しがおいしいことはわかります。

 馬刺し以外ではどうやって食べるものなのかさっぱりわかりません。

 Amazonには馬刺しももちろんありまして、例によって送っていただきました。たいへんおいしかったです。冷たくてサクッとしているとモチッとしているの間くらいの歯ごたえで口の中で温まって肉の匂いが広がるんだ。肉の匂いというのはなんなのかというとうすら甘くてうまみ成分の味がする。うまみ成分の味がするってなんだよ何の説明にもなってないな。馬刺しはおいしい。わかる。


 それ以外の調理方法がわからない。


 Amazonで馬肉というとこいつがどうしても攻略したいんですよ。

天馬 の 馬肉 切落し 1kg

 こっちでもいいんですが、

天馬 の 馬肉 太スジ 1kg

 キロ千円だしさ。まあ安いし、いや安いことにこだわるならAmazonで買うなよって話なんですが、再確認しておきますけどこのAmazonから珍肉が送られてくるという遊びはAmazonが本屋なのに肉が買えるという点においてエンタメ性が担保されているし詩情もあるしバカみたいで面白いですね我々は何を買って何を食って何を分け合っているんだろうねという点にポイントがあるのであって、高いのねだりづらいじゃん? こいつらを美味しく料理できればわたしの食生活もハッピーだしポエトリーもニコニコってなもんです。Amazonから送られてきた馬肉の切り落としグラム百円の煮込みを食べる歌を歌いましょう。


 で、結論から言いますが、一度負けました。

 馬肉は硬いんだ。

 まあ煮込み料理をしますよね。検索すると犬用シチューの情報ばっかり引っかかります。おたくのわんちゃんくらい丈夫な歯だったらなあ……粘り強く検索するとスペインだかどっかのグルメレポートが引っかかり(国も含め細部がすべてあやふやです、もう半年くらい前の話なのでお許しください)一週間煮るとある。

 電気代。

(※IHです)

 でも三日くらいは煮ました。肉はカッスカスになりました。一緒に煮た根菜類にたいへんうまみ成分の強い……うまみ成分って言っとけばいいみたいになってるけど……ダシが回ってすごくおいしかったんですが肉はカッスカスになりました。取り出してマヨネーズで合えたらいいんじゃないかなというくらいカッスカスになったんですがうち卵禁止でね……。


「人からもらった肉をカッスカスにしてしまった悲しみ」をかみしめながら大根食ってたあの冬の日。Amazonから送られてきた馬肉をカッスカスになるまで煮てしまったしこれ取り出して佃煮にするしかないかなの歌を歌います……。

 次回があるならおいしく食べられるように頑張ります……。

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