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「まとめ抗菌薬 表とリストで一覧・比較できる 特徴と使い方」を執筆するまで


1. 始めに

 私は鹿児島にある市中病院で感染症内科医をしています。
 感染症内科のトレーニングのため2年間大学病院で研修した以外は、初期研修も含めて同じ病院で仕事をしている一勤務医です。
 学会での受賞歴もなければ、著明な雑誌に論文が掲載されたこともありません。
 感染症内科医として大きな実績のない私が、このような本を出版に至った経緯をまとめましたので、何かの参考になれば幸いです。

2. 感染症の研修

 多くの医師は医学部卒業後2年間の初期研修を修了すると、卒後3年目から将来専攻する診療科のトレーニングが始まります。
 3年目から専攻する診療科には様々な科がありますが、例えば悪性腫瘍の方が抗癌剤治療中に肺炎をおこしてしまう、骨折でリハビリ中の方が尿路感染症で発熱して治療が必要になった、など感染症に関わらない診療科はありません。
 私の勤務する病院がある鹿児島県では、感染症を専門とする医師はとても少なく、感染症について専門科に相談することは容易ではありません。
 そのため、初期研修中に感染症診療のノウハウを身につけたい、将来感染症で困らないようになりたいと希望する先生も多いです。
 当院は鹿児島県内で臨床感染症の研修を受けることのできる数少ない病院ですので、県内外複数の施設から初期研修中の先生方が感染症内科の研修を受けにきてくれます。

3. 「まとめ資料」と「X」

 感染症内科研修を受けたほとんどの初期研修医は、将来感染症内科医にはなりません。
 将来感染症以外の診療科の専門医となる彼らが、研修修了後も感染症内科で学んだ知識や経験を効率よく活かせるよう抗菌薬や感染性疾患のポイントをまとめた「まとめ資料」を作成し、それに基づいた指導をしています。

ペニシリンGについて解説した1枚まとめ資料

 私はX(旧Twitter)で「新米ID」のアカウント名で感染症について発信をしています。
 鹿児島県に限らず、感染症内科を標榜している病院や感染症専門医が勤務している病院は少なく、感染症を学べる機会や環境は整っていません。
 当院の研修医に対してまとめた「まとめ資料」が、感染症を学びたい先生方やメディカルスタッフの方に少しでもお役立ていただければと思い、X上で「まとめ資料」を公開してきました。

4. 「X」でのメッセージから書籍執筆への挑戦

 SNSの良い点は、日常ではつながれないような方とメッセージなどでつながれることです。
 国内外の感染症専門家の先生方やメディカルスタッフの方、感染症以外の分野でも書籍を出版されたり憧れていた方などをフォローしていました。
 発信を続けていると、そのような先生方と相互フォローとなり、中には直接メッセージで交流させていただくこともあります。
 そんな中とある先生から「Xで発信しているような内容をもとに、感染症について書籍として執筆しませんか」とメッセージをいただきました。
 その先生は「輸液」や「心電図」といった誰もが学ばなければならない分野を分かりやすく解説された書籍を複数出版されている方でした。
 まさか自分が書籍を出すことになるなんて想像もしていませんでしたが、私の「まとめ資料」がより多くの方のお役にたてれば、という気持ちから今回の書籍執筆を挑戦させていただくことになりました。

 長文になりましたので、執筆から出版に至るまでの経緯や本書の内容については別の記事にまとめさせていただきます。
 御拝読いただき、ありがとうございました。

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