学校生活をのらりくらりと過ごしたら見透かされていた話
私の所属(?)していた中学校では、
「わかった人は手を挙げて!!」
と、言う先生が多かった。
人見知りがちな性格であった私は、とにかく目立ちたくないタイプなので、答えが分かったとしても、そういう【手を挙げる】ことがとても苦手であった。
問題が難しい、易しい以前に、人前で発表することが苦手だったのだ。
なので、問題が解けたとしても手を挙げないことも多かった。
……ところが、そういう態度を読まれていたのか、ある日に先生が
「わかっているのに手を挙げない人は通知表の成績に響くからね……」
と言ってきたのだ(それも小さい声で)
わかったかどうかどうやって判断するの?と今になっては思うが、そんなこと考える余裕も無かった当時は、どうしたものかと焦った。
というかクラスメイトは、どういうわけか積極的に手を挙げる人が多かった。
もう、すごい人は
『『 はい!!!!
はい!!!!!!!!! 』』
という感じで、【 絶対当てて!!! 】という気迫を感じた。
このようなクラスメイトがいたので、先生はその子を当てやすく、私も雲隠れすることができて助かっていたのだが、それと同時に“大抵手を挙げない生徒”と認識されていたと思う。
そんなことから、
手を挙げたくないけど挙げないと通知表に響く。どうしたものか……
という、個人的には大きな問題に直面し、苦慮していた。
人によっては、「そんなことで…」と思うだろう…
また、私は得意科目と不得意科目が結構分かれているタイプで、苦手な科目では特にこの悩みに拍車がかかっていた。
不得意な教科では、これもまた周りがたくさん手を挙げていたらプレッシャーだった。
そんな折り…当時たまに遊ぶ悪友が、とんでもない知恵袋を教えてくれた。私が苦手な教科での授業のことだ。
「あの先生さ… ハイ!! って自信たっぷりに手挙げる人がいたらその人に当てるから、小さく手を挙げていたら問題ないよ!絶対当てられないから!!いけるいける」
ということなのだ。
ん…? そうだっけ?うーんまぁ、そうかも…
と、頭のなかで過去を振り返りつつ、ハッキリとは思い出せなかったが、なんとなく納得した。
そうしたなか、小技を発動させる場面がそう遠くなく到来した。
私のとても苦手な教科で、先生が「これ分かる人!」と促し、大多数のクラスメイトが手を挙げたのだ…
私はその問題が解けなかった。
直感で、【これは手を挙げないと、のちのちまずそう…】と察知した当時の私はとっさに
……スッ…………
と自信なさげに、みんなとは少し遅れて前のクラスメイトにやや隠れるように手を挙げた。
私は当てられた。
まず、当てられたことによる混乱と、さらには分かっていないのに手を挙げたことによる冷や汗…
アタマの中は真っ白になりつつも、数秒後静かに立ち上がり
「えーっと…」
と、つなぎの言葉を出しながら時間稼ぎをしつつ、超速で何とか手を挙げたことの体裁を保てるような解答を捻り出した。
間違ってはいたが、ひとまず発表は何とかできた。
まず、当てられないことが前提の挙手だったので、たいへんに混乱した。
発表を終え、椅子に座ったのちにサッと悪友の方をすかさず見ると、
“ゴメンゴメン!”
というような素振りだが、身振りはわりと軽い感じだった。
ちょっとしてから思い返すと、あれは先生も、
【あ…手は挙げてるけど多分自信ないんだろうな】
というのは分かっていたように思う。
それからも、目立つことが苦手な私は卒業までこの案件には苦しめられたが、何とかのらりくらりと過ごした。
だけど、先生はこの【のらりくらり】は全部お見通しだったように、大人になってみると思う。
肝心の通信簿は、あまり手を挙げないことへの減点は特に感じなかった。やさしい。
…でも、通信簿の最後の欄の【学校生活】というところには、
「あまり自信がなさそうなことが多いので、もっと自分に自信を持ちましょう。」
と書かれていた。
アドバイスをいただいたものの、大人になっても特に変わらず自信は持てていない。
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