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サンタの国からの贈り物

この記事は、ライターゼミAdvent Calender2023に参加しています。

わが家のサンタさんは「お願いしたもの」を持ってくるのではなく、「こんなのが好きかな?」とサンタさんが選んだものが届くスタイル。
当日の朝まで何かわかりません。

数多くのプレゼントが届きましたが、サンタのふるさと北欧からやってきた贈り物は特別でした。

成長に寄り添い続けてくれた、わが家のお人形の話をご紹介します。

男の子にお人形?思いこみを打ち破れ!

1歳半頃、私はある文章に出会います。

子どもの優しい心を育てるのは、お人形
周囲の大人がしてくれるお世話を、お人形にすることで心が成長する

「お人形をプレゼントしたい」
でも私の子どもは男の子です。
男の子に人形を渡す、心理的なハードルをどうしても越えられません。
まだまだ、ジェンダーフリーという言葉も一般的ではなかった時代です。

一歩を踏み出せないまま、刻々と迫るクリスマス。
そんな時、このお人形さんに出会ったのです。

抱っこをして遊ぶ抱き人形

顔中シミができてしまうほど遊んだノキア

山口県柳井市の絵本と木のおもちゃフォーゲルの店長さんが「こんな子もいますよ」と見せてくださった抱っこができる抱き人形でした。

抱っこをするために、胴体と足がつながったお人形さん。

その日は決心がつかずに帰宅したのですが、この人形なら遊ぶ子どもの姿をイメージできる!
次の週末、もう一度お店に出かけました。

「あの子をください」
意気込んで伝えた私に、「売り物ではないのです」と思いもかけない答え。
店長さんがご自分用に購入していたのです。

がっかりして途方に暮れている私に「こうやって2度も来られたのだから、2体あるので一つお分けします」と譲ってくださいました。

クリスマスの朝、ツリーの下の包み紙の中からお人形を見つけた2歳のムスコは「きゃーかーあいい!」と悲鳴のような声を上げました。

あの声は今でも耳に残っています。
驚きと喜びが爆発したような声で、男の子にお人形を渡す私の不安を吹き飛ばしてくれました。

手作りがしたい、不器用な母の一大決心

男の子にお人形をあげても喜んでくれる。
ノキアと名付けたお人形さんをかわいがる子どもを見て、私は次の憧れを抱きます。
「ウォルドルフ人形を渡したい」

ウォルドルフ人形とは?

ウォルドルフ人形は、シュタイナー教育の理念を背景に生まれた人形です。
天然素材でシンプルな目や口をしたお人形は、コロコロ変わる子どもの心に寄り添ってくれます。

ウォルドルフ人形最大のハードルは、子どもに身近な人が作ること。

母の手作りでなければならないのに、私は裁縫が苦手です。
お人形キットは販売されていますが、一人で完成させる自信はありません。

類は友を呼ぶ?近くにいた先生と理解者

お人形を作って手渡すにはベストタイミングな4歳の秋。
「本当はウォルドルフ人形を作りたい」ともれ出た私の声に、すかさず反応した人がいました。

「TINY BROWNで教えてもらえるから、人を集めてくれたら私が先生に話しをつなぐよ」

子どもが通っていた創作教室で出会ったお母さんでした。
なんと山口県周南市のおもちゃ屋さんに、講師の先生がおられたのです。
すぐにその場にいた人たちで話しがまとまり、人形を作ることになりました。

子どもの姿に似てくる不思議なお人形

胴体に羊毛を詰める作業は、力仕事です。
おなかや腕にパンパンに羊毛を詰め、幼児体形に仕上げます。
このボディの弾力が、子どもにリアリティを生むのです。

不思議なことに、出来上がるボディはみんな違いました。
作り手の思いがそこに込められるので、自然にわが子の姿に近くなるのです。

私のお人形は体重3,603gで生まれた体格の良いムスコのように、ズシリと腕に重みを感じる重さと大きさ!

最後は、髪の毛です。
針に毛糸を通し、1本ずつ生やします。
どんな色にするか、髪型は?

色白でいつもご機嫌のムスコをイメージして、明るい栗色の毛糸を選びました。

年月が経ち、口の糸が朽ちてしまいました


出来上がったのは、クリスマスの前日でした。
なんとかクリスマスに間に合うように、最後は夜活です。
購入しておいた洋服を着せて、子どもにプレゼントします。

「ノキアのお兄さんを作ったよ」
お母さんが自分のためにお人形を作っていることに気づいていましたから、大喜びです。

今回はじわじわと心に染み込むような喜び方でした。
ロミオと名付け、ノキアと一緒に一人っ子のムスコの弟分になってくれました。

今も私たちを見守っているお人形

2体のお人形はずっと子どもに寄り添ってくれました。

小学校低学年頃には、ロミオに話しかけている姿を見かけたものです。

部屋から出られない思春期も、ロミオとノキアを手渡すと受け取って部屋に置いていました。
出口の見えないトンネルの中、2体の人形を側に置いてくれていることに希望を込めて見守る日々でした。

進学のための一人暮らしを始めた時、ロミオは一緒に家を出ました。
ノキアは彼のベッドでお留守番です。

フェイスタイムの顔の奥にロミオが写っていると、「ああ落ち込んでいるんだな」と心の中で思います。
進学先の部屋を訪れてロミオが棚の上で横になっているのを見た時には、「順調に大学生活を送っているのだな」と安心しました。

よだれのシミで真っ黒になった、家に残されたノキアを見て思うのです。

想像していなかった出来事の連続の子育てを、いつも側で見守ってくれていたお人形。
クリスマスプレゼントを悩み考えた時間が、私へのサンタクロースからのクリスマスプレゼントだったと。

サンタの国からやってきた二つのお人形は、今も私たち親子を見守っています。


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