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ハンドメイド納豆の再考察その3(自然納豆菌作り)

納豆作りに関する記事の第3回目です。

前回の記事の終わりに「純粋納豆菌を使用したのにあまりうまくいかなかった」ことを書きました。原因を考えているとどうも大豆の浸水に問題があるのではないか、と思い至りました。
最近読んでいた高野秀行さんの納豆本の中にヒントがありました。

いま手元にないので詳細はかけないのですが、この本の中に、日本における伝統的な納豆づくりは冬季で、俳句における納豆の季語は冬であること、高い温度の水で浸された大豆はpHが酸性に傾き、アルカリ性を好む納豆菌の活性が阻害されることを知りました。だから冬の食べ物なのですね。
前回の純粋納豆菌作りの時には、ちょっとズボラして室温で長時間大豆を浸水してしましました。多分これで酸性になっていたのでしょう。そういえば世界各地には納豆を作る時に灰を入れる地域もあるそうで、アルカリ性にするためなのですね。
そういえば納豆づくりを失敗していたのは夏が多かった気がします。
というわけで対策、そして前からやってみたかった無添加自然納豆に挑戦です。

使用した道具は、真空保温調理鍋、ゼロ活力なべ(圧力鍋)、湯沸かし器。
材料は枇杷の葉、乾燥大豆、水です。

枇杷の葉

我が家の庭には大きな枇杷の木があって今ちょうど実が成っています。少し実を取りつつ大振りな葉っぱを選んで採取します。これまでにも枇杷の葉茶や焼酎エキスとかを作ったことがあるのですが、今回はこれで納豆を作るということにします。
納豆菌は稲にしかない、と思われがちですが、自然界のあらゆる植物についているそうです(勿論例外はあります)。大抵の植物では作れる(相性はある)とか。枇杷の葉は大きくて豆との接地面積が広く、裏側の毛羽立っているところが良さそうです。

今回は大豆の浸水方法を変えます。
ジップ袋に乾燥大豆を入れて目分量で水も入れて冷蔵庫で約24時間おきます。冬並みに水の温度を低くして酸性化を防ぎます。

ゼロ活力鍋に移して、いつもより水を少なめにします。本当は納豆づくりは豆を蒸すほうが栄養素が残ってよいらしく、茹でて栄養が見ずに流出するのを防ぐためです。ゼロ活力鍋は圧力が高くて、向いています。(勿論普通の鍋でも調理可能です)

予め熱湯消毒しておいた真空保温調理鍋の内鍋の底に蒸し器や軽い底上げをします。空気の通りを良くして発酵を促すためです。
その上からこちらも熱湯消毒(軽く湯につけて出すだけで大丈夫でした)した枇杷の葉を葉の裏側が豆に当たるように敷き詰めて、内鍋の内側側面にも出来る限り隙間なく置いていきます。この状態で茹でた豆を熱いうちに入れてきます。この時に豆が3段以上重ならないのが理想とされています。
今回はさらに葉で包んだ上にさらに同じ行程を経てもう一つ包みを作って重ねました。
緩やかな籠が二段重なっているような状態です。

これから上に葉で蓋をしていきます

この後に内蓋をかぶせる前に蓋の内側にキッチンペーパーや付近を置いて蓋をします。発酵時に発生する水分で納豆菌が大豆の表面から落ちないようにするためです。蓋は完全に閉まらないように折りたたんだ紙などを挟むのも良いと思います。
内鍋を入れる前に外鍋(保温側)の底に熱湯を入れます。内鍋を入れて蓋が閉まる程度の量です。外鍋も完全に密閉しないようにします
この状態で毛布に包んで発酵スタートです。

保温力の高い保温鍋ですが、それでも内部の温度は緩やかに下がります。私は最近は温度計を使わなくなりましたが、40℃くらいの温度が良いそうです。大体の感覚で外鍋のお湯を交換します。普段は1日に2,3回といったところです。
24時間ほどで出来るともいえますが、私は念のため48時間この状態を保ちます。調べてみると工業的生産の納豆は24時間くらい、伝統的製法では48時間位が多い気がしました。

葉が変色しています
黒いのは取れた皮の部分です

表面にうっすら見える「かぶり」と呼ばれるものが見えていたら概ね完成だと思います。これが多ければ多いほど上手くいっているように思えます。
作りたての納豆はアンモニアなど臭いがキツい場合もあるので冷蔵庫で半日程度寝かせます。

お土産用に包みなおしたもの
枇杷の葉納豆
塩、エソ醤油、実山椒煮汁などで食べ比べ

初めての枇杷の葉納豆は、よく粘り味も香りも良いものでした。天然ものだと粘りが弱いか殆どないことも懸念されたのですが、市販品ほどではないもののいい粘りがありました。大豆の味わいも残っていて普段より少し固めに茹でたので歯ごたえや食感も良いです。特別変わった臭いがしませんでした。

実はこれまでに無添加自然納豆作りにトライしたことはあったのですが、ほぼ全て失敗でした。稲藁は煮沸した稲から出たエグミが豆に移って食べられないものに、ヨモギやミントなど草で試したものは草が水分に弱くて味に悪影響が出ました。日本で古来から納豆作りといえば稲、だったのは身近にあったからで納豆はあらゆる葉から作れそうです。
日本から伝統的な家庭的納豆がなくなったのは、高度経済成長期から多用された農薬のため、納豆作りに向いた稲藁が入手できなくなったから。
稲は吸水力と保温力が優れているので、納豆作りにはとても向いていると思いますが、安全なものは私でも気軽には手に入りません。
これからは様々な葉と豆の組み合わせで納豆づくりを楽しんでみようと思います。

最後に作り方をまとめた簡単な流れを書いておきます。

  1. 乾燥大豆を冷水で浸水しておく。気温が高ければ冷蔵庫で24時間程。

  2. 圧力鍋等で大豆を煮る(蒸す)。親指と小指で挟んで潰れる程度の柔らかさが理想的。

  3. 容器を殺菌しておいて納豆のスターター(市販納豆、納豆水、乾燥納豆菌、天然の葉など)と大豆を混ぜて24時間から48時間、約40℃の温度で保温して発酵させる。

  4. 数時間から半日位冷蔵庫で落ち着かせて完成。

要約するとこんな感じです。
自分のやり方ですが、出来る限り電気とか道具に頼らないやり方が出来るようになりたかったのでこうなりました。
偶然出来てしまったという起源説があるくらいの食品なのでもっと大雑把でも出来ると思います。
なにかの参考になれば、と思います。

*初の有料記事に挑戦しようかとも思ったのですが、今まで自分も無料で色々読んできて学べたこともあって、やはり無料記事にしました。
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