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刀疵の男[ヒトコワ]

お久しぶりです。
少し余裕が出来たので今日は[ヒトコワ]を語りたいと思います。

それは私が30代の頃、子育て真っ盛り、そして兼業主婦で働いていた時の話です。

その頃、子供達は小学生で朝からバタバタして、そして原チャリで会社まで行く毎日でした。
そんなある日の事、会社まであと数百メートルの所で事故は起きました。渋滞する車の横を走り抜けていると急に左折の車が。あっと言う間で避ける暇も無く、その車に追突してしまいました。
その後は救急車で運ばれ、現場検証終えた事故相手のオバさんと警察官。当時の状況を聞かれ私の過失割合は1割。オバサンはウィンカー出すの遅かったかしら?と悪びれもせず聞いてきたので呆気にとられたのを覚えてます。
その後は病院に痛み止め?の注射とか受けててリハビリ室の様な部屋で常連になっていました。

ある日、いつもの様に、その部屋で注射や電気を当てて貰ってたときに.パジャマ姿のガタイの良いおじ様が「ヨウッ!」って明るく挨拶されてて、ふとそちらを見た私はギョッとしてしまいました。
だって、そのおじ様の顔は時代劇に出てくるお侍さんの様なズバッと斬られた刀疵があったからです。うわー...ヤッベェ...これ見たらアカンやつやん...って目を逸らしたんですが、そこに居た理学療法士さんや看護師さんがワイワイしだしたので、ついつい耳を傾けていました。

どうやらその刀疵のおじ様は明日退院だそうで祝福の言葉が飛び交う中、事情を知らぬ病院関係者が、どうしたの?と問いかけると違う人がニヤニヤしながら「事件よ!事件!!」と嬉しそうに話します。もうこの時点で私の耳はダンボです。
このおじ様も噂の渦中にされて、満更でも無いご様子で語り始めました。
それが以下の文章になります。

それがさぁ〜、俺、母親と弟と買い物行ってたんだわ。帰りに自宅前で母を降ろして弟と月極駐車場に停めて荷物降ろしてた所で近所の顔見知りの20代の男の子に会ったんよ。
ほんで、そいつが近付いて来たから挨拶しようとした所でズバッと斬られたんよ。
何が起こったのか全然分からなくて暫く呆然としてたんやけど次は弟が斬りつけられてて流石に何やっとんじゃーーー!って。
もう無我夢中で警察呼んで救急車呼んで病院で手当て受けてってしてたら、警察官がビニール袋持って来てな?
「これ...弟さんのだと思います」
そう渡されたのは弟の頭の端っこだったんよ。
頭を斬りつけられスパーって斬りとられたのを現場で見つけて持って来てくれたわけ。
もう、何が何だか分からんわ。
だって、その犯人、近所の好青年で会うたびに爽やかに「こんにちは〜!」って挨拶してくれてたんやで?ホンマ...意味が分からんかったわ。
生きてる人間が一番怖いわ....って。。。

これ直に聞いててヒュッ...ってなったのは言うまでも無いです。

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