人が命を絶つということ。

先日、一人の有名人がこの世を去った。

死因は今の所明らかにはされていないが、自殺であろうという見立てだそうだ。

この事は大きく報道され、その死因と予想されるのはインターネット上での多くの誹謗中傷だそうだ。

そうして誹謗中傷をした人達は現在、そのログを消去する事に躍起になっているとの事。

昨今では誹謗中傷に対し、余りにも目に余るものに関しては罪に問われるようになった。

法律的な詳しい知識がある訳ではないので、どのような罪に問われるのかは勉強不足なのをお許し頂きたい。

ただ、よくもまぁ会った事も話した事もない人の事を熱心に言葉にして中傷出来るものだといつも思う。

私自身もいけすかない人というのは結構居る。

恐らく、一般的に生きている人よりもその数は多いのではないかと自分では考えている。

好きな人の事はとても好きになるが故の弊害とも言えるが、おかげで友人と呼べる人間はほぼ皆見に等しい。

と書いていて自分が悲しくなってきた…

ただ、私は仮にいけすかない人間が居たとして、それを態度には出すが言葉には決してしない。

言葉にしてしまうと、それが相手への教訓になってしまう恐れがあるからだし、同時にその事に労力を使ったとて、その人の人生を変えてしまう責任を負うのも嫌だ。

まぁ、人というものはそうそう変わらないものだ。

そもそも、自分の事を嫌っている人間からの忠告を受け入れようなどという人間は聖人であり、それが出来る人が誰かから嫌われるなんて事は論理的にありえない。

そして同時に、誰からも嫌われない人間など存在しないという事でもある。

とまぁ、その程度に考えているので自分が自殺するという動機に他人の意見によってという理由はないと思う。

自分は死生観が歪んでいるという自覚がある。

青臭い事を言うかもしれないが、「死にたい」と言う人に対してそれを止めようとは思わないのである。

呪術廻戦の五条悟も言っているが、

「自分が救えるのは 他人に救われる準備がある奴だけだ」

という心持ちです。

多分、それは相手が自分に宛てた最後通告であるという気持ちも分かるし、理解して欲しいという心の叫びであるとも分かる。

しかし、そこにどんな理由であれ「死」を引き合いに出すのが未だに納得出来ない。

自分ならどんな手を使ってでも相手を苦しめてやると思うからだ。

だから目の前で「死んでやる!」みたいな事を言われても正直ピンとこないばかりか、

「ああ、この人は問題の解決を諦めたのか…」

とその人のことを見損なったという感覚の方が大きくなってしまい、自分自身が悲しくなってしまうのである。

ということを話すと、大抵理解される事がない。

一度、学校の授業でこのような事があった。

「目の前に自殺しようとしている人が居る。貴方はその人に何と声を掛けますか?」

という設問だった。

正直言って意味が分からなかった。

相手との関係性や、その状況などの具体的なシチュエーションが一切提示されなかったのもあるが。

倫理的な授業だったので、多くの人が相手を説得するという方法を提示する中、私は

「その場を去る」

という回答をしてドン引きされた。

だって、「その人の自殺を思い止まらせてください」とは一言も言われなかったから。

多くの人は、止めようとするのが当然という前提に立っているという事をその時初めて理解した。

自分の場合、身近な人がそういう事になり結果その命を失ったとして驚く事はあっても、自らの判断だったのならば決して相手を非難もしなければ落ち込む事もない。

そっか…と納得さえするだろう。

それで終わり。

結局の所ところ、人が人の死だったりを嘆き悲しむのは自分のためだと思うから。

これってかなり穿った見方だとも自覚しているが、そうじゃない?

誰か有名人がこの世を去った時がもっとも分かりやすいと思う。

何故自分にとって血縁も関係性もない人物の事を嘆き悲しむのか?

それは、その人の存在を失う事によって自らに生じる不利益を嘆き悲しむからである。

仮にその人がミュージシャンだったとしよう。

その人がいなくなってしまった事により、自分を支えてくれていたものを作った人の新たな作品を楽しめなくなってしまう。

生でライブでその人が歌ったり演奏したりする姿を永久に見れなくなってしまう。

ちょっと考えただけで、これだけの自らへの不都合が思い浮かんでしまう。

逆に言えば、自分に不都合がない限り人は他人の不幸を嘆き悲しみはしない。

それを出来る人は『できた人』だと思うし、それが世間に対する礼儀でもあるのだろう。

それが美徳だし、そうする事が正しいという事も分かる。

しかし、そこに何か意味があるのか?と思うと何の意味もない。

そして、こんな事を考える事にも意味はないと思えてしまう。

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