深海魚

 昼下がり。15時を過ぎた頃に、眠気がやってきた。眠りに落ちるとき、体が沈むような感覚がする人がいるそうだけれど、私は深海を泳いでいる感覚になる。

 そこは時間が止まったように揺るがず、何も聞こえない。視点を高くしていけば、私は女性で、人で、生物だ。仲間はたくさんいるけれど、この深い海で私はひとりでいる。

 孤独であることは私を落ち着かせてくれる。誰も私を傷つけることはできないし、誰も私を救うことなどできないと教えてくれる。

 コミュニティの中でしか生きられないと知っているし、傷つくことを恐れているし、心の底から自分を理解してもらいたいと願っている。

 人はひとりで産まれてひとりで死んでいくと言うけれど、ほんとうにそんなに静かなものだろうか?産まれる時は母親の悲鳴に近い叫び声とともに産まれるし、死ぬ時はきっと死神や先に亡くなった親しい人なんかがそばで待っている。

 魂だけになれば三途の川をわたって閻魔様に会って天国か地獄か決められるんでしょ?それか魂の集合体の一部になるとか?

 私はきっと産まれた瞬間から、ずっとひとりで深海を泳いでいる。その漠然とした感覚が昔は怖かったけれど、今は心地いい。

 いつかは、誰にも知られずにそっと死んで、バラバラに砕け、何もなかったようにそこは深い海の色だけが残っている。そんな世界が落ち着くわ。



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