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練武知真 第11話『人の目を見るコミュニケーションを学ぶ武術』

武術において、相手から目を離すことは大きなリスクとなります。

どんなに怖かろうが、目をそらさず、相手をちゃんと見て、

相手の動向を把握して、防御し、攻撃しなければなりません。

 

「相手を見る」という事は武術にとって必要不可欠な要素なのです。

 

中国武術の身体要領の一つに

【二目平視(にもくへいし)】

と呼ばれる要領があります。

 

「両の目線を水平にして前へ向ける」ということです。

仰向かず、うつむかず、真っ直ぐに前を見る・・・。

 

これには、顔の向きを正しい状態にするという効果があり、

体軸を頭頂部まで通すという姿勢上の効能のほか、

顎を上げないことによる頭部のガード、

相手の全体を視野に収めるという状況把握の確保など、

実戦上の利点に繋がります。

 

しかし、「二目平視」のトレーニングにおける最も重要な目的は

『揺るがない心』と『自然体』

の形成にあります。

 

戦う相手の目を真っ直ぐに見ることは、

最初かなりの緊張を感じることと思います。

相手の敵意を真正面から受ける為です。

 

それに負けじと、こちらも睨み返すと、

両者の間にバチバチの緊張状態が生まれます。

 

こうなると相手の闘争心が増大し、その戦闘力が大きくなります。

対するこちらも興奮し、冷静な判断や繊細な動きができなくなるリスクが発生します。

「二目平視」は、気合いを入れて睨み返すという意味ではないのです。

 

『淡々と真っ直ぐに見る』

 

これが「二目平視」の求めることなのです。

心に強い闘争心を持ちながらも、

それを表情には現わさず、冷静に相手を見つめる。

 

恐れず、驕らず。

 

相手の敵意を受けても平然としていられる『揺るがない心』。

相手の敵意を受けても自由に動ける『自然体』。

 

それが相手を真っ直ぐに見る【二目平視】という要領なのです。

 

 

他人と接する際、その人の目を真っ直ぐに見ることは、

日本人にとっては何となく気恥ずかしく、

また失礼にならないか気になるところです。

 

また近年は相手の目を見て会話できない人が増えている感じがします。

 

目線を合わすということは、コミュニケーションの基本だと私は思っています。

言葉だけでは、文字だけでは伝わらないことは以外にも多い。

目を見ることによって、

相手の想いをくみ取り易くなり、

自分の想いを伝え易くなります。

 

その際には緊張は不要なのです。

恐れず、驕らず、対抗せず、自然体で。

 

そこから得られた情報を元に判断し行動すれば良い。

コミュニケーション自体を拒否してしまうと

何も生まれないし、広がってゆきません。

誤解や摩擦を生む可能性も出てきます。

 

心を自由にして、相手と接し、

それから判断して行動する・・・。

武術も日常も似ている気がするのです。

 

 

2024年4月24日 小幡 良祐

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