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ごはんのことだけ考えて暮らしたい

 夏野菜、といえば一番最初にあたまに浮かぶのがトマト。つやつやぴっかぴかで真っ赤っていうか朱の混じった赤い実のまるいあいつ。
 暑くなってきてから2日か3日に1回はトマトを使った料理をしてる気がする。やっと8月も下旬。まだまだザ・真夏の真っ只中。食欲も失せるうだる残暑なまいにち。今日はフードエッセイとともに夏野菜代表のトマトを使った我が家定番ごはんのざっくりレシピもいくつか書いてみようかな。

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 実は割と最近まで生のトマトはかなり苦手だった。トマトの嫌いな理由に種の部分のとろっとつぶつぶしたところがトマト氏ののうみそみたいだから、とトマトを擬人化して説明してた。本当の理由は自分でもなぜかわからない。ただ、生のトマトを食べようと口に入れると身ぶるいする感覚が起こって「やっぱりダメだぁ」となるのだ。

 でも火の通ったトマトは好き。焼いてあったりカタチがわからなくなるほど煮込んであったりするもの、つまりトマト味は大好きなのだ。一人暮らしの頃はかなりの頻度でトマト缶を使ってミネストローネやカポナータを作って食べていたし、いつか書いたようにトマトソースのパスタもよく食べた。

 ある日あるとき「フレッシュなトマト」を食べたくてたまらなくなった時期がある。それは抗がん剤治療中のこと。覚悟してたけど抗がん剤の副作用であたしも例に漏れず点滴後吐き気が必ず何日も続いた。昔に比べて副作用は随分少なくなったと聞くけれど、それでもやっぱりムカムカがひどくて、食いしん坊のこのあたしがあれこれと食べたい気持ちが起きない、でもなにか食べてないとムカムカが加速するとゆー地獄。ただただパンとかお米とか炭水化物のみ食べてた。友だちに話したら食べづわり的感覚?と言われたのを思い出す。
 そこにフレッシュトマトは救世主のようだった。地獄の中で見つけた光。あんなに口の中に入れただけで身ぶるいするほど苦手だったのに、このときだけは生のトマトならずーっと食べていられた。むしろ食べたかった。逆に火の通ったトマトの何かはまったく欲しくなかった。
 そして元気になった今、やっぱりまたフレッシュなトマトがやや苦手になった。冷蔵庫の野菜室にトマト部屋を作って必ず5個のトマトを切らさないようにしていたのに。

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 真夏になると実家や知り合いの方からご自宅育ちのトマトをいただく。昨日もパートナーが職場から大きくてつやっとぴかっとしたプチトマトをたっぷりいただいて帰った。普通サイズのトマトよりもプチトマトのほうがいただく率が高いのは、もしかしたらプランターで作る家庭菜園大豊作的なことなのかな。

なすとプチトマトのバルサミコ炒め

 最近好んでよく作るのは、なすとプチトマトのバルサミコ酢炒め。これまた夏野菜でよくもらいがちななすび(縦に4等分して4〜5センチの長さに切る)とプチトマト(縦に半分に切る)と一緒にオリーブオイルでジャジャッと炒めて最後にバルサミコ酢をかけてジャーンとやって、味を落ち着かせるためにふたをして蒸し焼きにするだけ。とっても簡単。我が家は味付けはなすトマトの量にもよるけれどバルサミコ酢のみ。ソーセージを薄く切って入れたりベーコンやハムなどを一緒に炒めるとたんぱく質も塩分も追加されてガツッとした味わいになる。トマトの旨味にバルサミコ酢の芳醇な旨味香りでいろいろ倍々ゲーム。冷めても美味しい。

プチトマトのピクルス

 先日のお盆の家族集まりのときに持っていったのはプチトマトのピクルス。甘酢漬けと言ったほうが正しいかな。最初に湯むきから。プチトマトに包丁で筋を入れるように切り込みを入れて、フライパンに1〜2センチ程度のお湯を沸かしてそこに切れ目を入れたプチトマトをころころ転がすように1分くらいかな?そうすると切れ目から簡単にぷるっと皮がむける。湯むきしたプチトマトを一度沸かしたピクルス液に投入して粗熱を取ってから冷蔵庫で冷やす。甘みが多くお酢が薄めだと子どもたちに大人気。濃いめの味付けにすると冷えたワインや泡にもよく合う。

トマトごはん

 大きなトマトをたくさんいただいたら迷わずトマトソースにしてしまって瓶詰めにするのだけど、2〜3個いただいたときに生で食べるのが苦手なあたしのよくやるメニューはトマトまるごと1個を炊飯器にぶち込んで炊き込みごはんにしちゃう。大きめのトマトなら3合、小さめサイズなら2合。炊く前にトマトに十字の切れ目を入れておくとあとで皮を取りのぞきやすい。味も炊く前に塩を少し。それだけ。たまにめんつゆを白だし的に使うこともあるけど、あたしはシンプルに塩だけで炊くのが好き。コンソメとか入れるとくどい味になってしまうのよね。炊きあがったらトマトをつぶすようにまぜてできあがり。トマトならではの旨味があってだけどあっさりしてて暑い日にさいこー。おにぎりもおすすめ。

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 まだまだたっぷりトマトのおかずはあるけれど、とにかく真夏の台所は長居したくないものですよ。なので簡単でぱぱっと作れる我が家のトマトおかずをご紹介してみました。おっ?これなら試してみようかなって思ってもらえたらうれしいです。

 こうしてみるとあたしは苦手と言いつつ案外トマトが好きなんだなぁと感じる‥。こんなふうにトマトの味や食感を想像しながらまたごはんのことを考える。あれをこーしてあーして。そんなごはんのことを考える時間があたしにはサイコーな時間。しあわせであったかくてうれしい時間。

 あぁ、ごはんのことだけ考えて暮らせたらなぁ。

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