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【開催報告】LingDyインターゼミナール

2021年3月24日(水)にLingDyインターゼミナールをオンラインで開催しました。

イベントの詳細はこちら

このイベントは、フィールド言語学を専攻する修士課程〜博士課程の学生を対象に、大学の垣根を越えた交流を支援・促進することを目的とした企画です。
もともとは昨年2月末に企画していたイベントでしたが、新型コロナウイルスの感染が広がった影響で中止となっていました。
今回、企画を練り直してオンラインイベントとして開催しました。

オンラインイベントということもあって、福岡・広島・京都・東京と全国4都市から10名の学生が参加してくれました。

4時間にわたるオンラインイベントでしたが、終わってみるとあっという間でした。

インターゼミナールは以下の3つのパートで構成しました。

1. 参加者によるライトニングトーク(30分)
2. 先輩研究者座談会(50分)
3. ブレイクアウト・セッション(90分)

1つずつ取り上げて、振り返っていきたいと思います。

ライトニングトーク

10名の参加者には事前に短い研究紹介論文をGoogle Formから提出してもらっていました(ちなみにその論文のことを「豆論文」と呼んでいました)。
豆論文は以下の3つの問いに答える形で執筆してもらいました。

1. いま取り組んでいる研究テーマは何ですか?
2. 博士号取得後にはどんな研究をやってみたいですか?
3. 研究活動において、人と違うことは何ですか?

ライトニングトークでは、この豆論文を1人3分で順番に紹介してもらいました。
質疑応答の時間は設けませんでした。
その代わり、反応や質問はチャットに書き込んでもらいました。
発表者のトークに反応して即座にチャットが盛り上がる様子はオンラインならではの光景だな、と思います。

ちなみに提出してもらった論文は事前に参加者間で公開してありました。
公開は無記名でおこない、付箋で自由にコメントがつけられるようにしました。
コメントに対する執筆者からの回答もあり、付箋を通したやりとりが当日までにあちこちで見られました。
※なおこの仕組みは「京大100人論文」を参考にさせていただきました。

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先輩研究者座談会

AA研・LingDyメンバー4名に、木本幸憲さん(兵庫県立大学)をお招きし、Web座談会をおこないました。
登壇したメンバの簡単なプロフィール(所属と研究対象言語)は以下の通り。

木本幸憲さん(兵庫県立大学、アルタ語(フィリピン))
安達真弓さん(AA研、ベトナム語)
倉部慶太さん(AA研、ジンポー語(ミャンマー))
品川大輔さん(AA研、キリマンジャロ・バントゥ諸語)
青井隼人(AA研、琉球諸語)

提出された豆論文を座談会メンバで事前に読み合う機会は設けたものの、基本的にはシナリオのない自由なおしゃべりが展開されました。
座談会の様子を振り返ってみて、印象的だったキーフレーズを3つだけピックアップします。
※ 当日の要約というよりは、今この時期を書いている時点での私の意見や感想です。

1. 研究には「遊び」が必要
短い期間で成果が出るトピックばかりを追いかけてもつまらない。
フィールドにいるときは、調査・研究だけに没頭しない方がいい。趣味の本を読んだり、お散歩したり、適度な息抜きが必要。
研究に直接関係することばかりを学んでいてもブレイクスルーは生まれない。今の時点ではどう関係するかはわからないけど、とにかく面白いと思うことを積極的に学ぼう。

2. 自分の強みを知る
規範的なスタイルに囚われ過ぎると、自分を苦しめることになる。
苦手なことや気が進まないことを頑張り過ぎる必要はない。
周りの流行や常識より、自分の興味と強みに合わせたテーマを見つけよう。
複数のコミュニティに同時に属していると、価値観を相対化することができる。その中から自分が心地いいと感じる価値観を選択すればいい。

3. 独立系という可能性
アカデミック・ポストに就くことを唯一絶対のゴールと考えていると苦しい。アカデミック・ポストに就くことだけが正解ではないし、それで自分が幸せになれるとは限らない。
言語学では先例がまだまだ少ないが、独立系研究者という生き方もある。アカデミック・ポストに就かなくても、研究は続けられる。

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ブレイクアウト・セッション

10名の参加者を3つの少人数グループに分けてワールドカフェを実施しました。
ワールドカフェとは、特定のテーマについて少人数で対話するグループワークの手法のひとつです。
ワールドカフェのもっとも特徴的なのが、途中でグループメンバーをシャッフルする点です。
メンバーをシャッフルすることで、対話に新しい視点を加えることが可能になり、新しい気づきや学びが生まれやすくなります。
途中何度シャッフルを挟んだとしても、ワールドカフェの最後は必ず元いたテーブルに戻ることになっています。
そうすることによって、それぞれの対話の経験やそれまでに得られらたアイデアを最後に統合することができるわけです。

今回は以下の3つのトークテーマを設定し、グループごとに割り当てることにしました。

1. 研究を進めていく上で直面している困難は何ですか?
2. 現地コミュニティとの関係において抱えている悩みは何ですか?
3. 研究人生を設計していくにあたり、どんな不安がありますか?

困難、悩み、不安… とネガティブなワードを並べてしまったことで、対話が盛り下がってしまう危険もあると思ったのですが、こういった話題を率直に話せる機会もそう多くはないのではないか、と考えたため、このようなテーマ設定にしました。
対面のワールドカフェでは、テーブルが分かれているとは言っても、全員が同じ空間で対話をするので、対話が盛り上がっているかどうかを確認することができます。
ところが今回はオンラインで、ブレイクアウトルームを活用したため、各テーブルが完全に個室で対話する状態となり、対話の様子をきちんと確認することはできませんでした。
それでもグループごとに用意しておいたホワイトボード(Jamboard)を見る限りでは、意見が積極的に交換され、新しい学びや気づきが次々と生まれていたようでした。

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さいごに

インターゼミナールは、コロナ禍でコミュニケーションの機会を奪われた学生たちにとって、楽しい場になったようでした。
最後にアンケートからいくつかコメントを引用します。

学生だけでなく、先生方も悩みながら研究を続けているのだなということが知れて、少しモチベーションが回復しました。また、特に自分は他の研究者との交流が少ないと感じていたので、このように参加しやすく気軽に発言しやすい場を提供していただき本当に良かったです。
悩んでいるのは一人じゃないんだなということがよくわかりました。自分から見るとすごい人が自分と同じように悩んでいるということを知って,悩みが消えたわけではないですが悩んでしまうことを悩むのはやめようと思いました。
コロナ禍でこういう機会を必要としている院生が多いと思うので、同様の内容で何回か開催されても需要はあると思います
交流ができるようなワークショップが本当に少ないと思いますので,また,このようなワークショップに参加したいです。

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