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春に浮かれて

春に浮かれて、近所の川沿いを散歩していた男の子とトイプードルに声をかけた。犬の名前はローロ。小学生の彼はまだ春休み中で今日は塾がお休みと言っていた。全身黒の女に声をかけられて、写真撮ってもいい?と言われて、不安そうな彼をときほぐしたくお話ししている最中も元気なローロは私の左腕と戯れている。
「座ってくれるかな?」私がお願いするとあんなに元気だったローロは男の子の言うことを聞き、ちょこんと座った。シャッターチャンス。
あまり長くいて困らせても申し訳ないので、お礼を言って立ち去った。今思えば春の気持ちいい気候の中、ローロと男の子とこの川沿いをどこまでも歩いてみても良かったんじゃないかなと思う。
ただそんなことをしたら逮捕!になってしまう年齢でもあるので、静かに立ち去っておいて正解だったとは思う。

春に浮かれて、Tシャツにシャツを羽織るだけの格好で出勤した。
結果まだ寒かった。
朝のニュースでお天気キャスターが風が弱いと言ったので問題ないと思った。
一応家のベランダでも気温を確認してきたので、問題ないと思った。
歩いていたら暑かったし問題ないと思った。
過ぎゆく人の格好を見て私よりみんな厚着なのを確認し不安にはなったが、その度、4月だから、春だからと言い聞かせた。
結果まだ寒かった。
夜の冷え込みを想像し、より一層鳥肌がたった。

春に浮かれて、爆買いした。
思いもよらぬ忙しさに見舞われた3月。新卒の肩書を背負って入社した日からもう3年。任される仕事量も求められるスキルもだんだんと増えてくる。毎日残業するほど、人生で1番の忙しさを味わったが、それでも月内にしっかりやり遂げたことを誇りに思ったのと、それらの開放感で3月最後の休日は自分へのご褒美と題し、買い物に出かけた。
服、アクセサリー、ケーキ、花、女のご褒美代表格を両手いっぱいに抱えて幸せの最高潮だった。自分で稼いだお金を自分だけのために使うこの生活が今限定かもしれないことを考え、いつまでもこの時間だったらいいのにと切望した。

春に浮かれて、
「春、それはデニム、ピンク、aikoのセカンドアルバム」とインスタに投稿してしまい、数十分後込み上がる恥ずかしさに耐えきれず消した。
文字での自己表現はここだけに限る。


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