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巡り廻る、生と死

飛行機で書いたメモ 

果てしなく続く雲の上、終わりの見えない地平線、限りなく深い海、それらを目の前にした時に死と永遠について連想させる。永遠という私の嫌いな言葉もそれらの前では美しい産物へと変わっていくから愚かだ。未知でふくらみをもたせる無垢な赤ん坊、寒い朝の天国みたいな白い世界。それらに触れる時、私はいつも泣き出してしまいそうになる。差し伸べる手はいつも震え、踏み出す1歩はいつも遅い。抱いた瞬間に泣き出す赤ん坊の涙を見ながら、後についた足跡を見ながらその美しい涙で、その美しい朝露で全て洗い流して欲しいと願う。

2023.3.16 日記 

猫が小さな生き物の命を奪った。その小さな生き物は私の手の中で息絶えるように動かなくなった。最後の瞳が潤んで見えた私は泣きたくなる気持ちを抑えて、スコップを持った。君は生きていた、君は確かに最後まで生きようとしていた。肝心の猫は何事も無かったかのように自分の餌にありついている。命とはなんなのだろうと考えてみる。虫の死で泣けないこと、小動物の死で泣いてしまうこと、一体なんの違いがあるのだろう。命は平等だなんて昔から1度も思ったことなんてなかった。綺麗な花のために抜かれる雑草に、観賞用の魚と食べるための魚。命は平等ですと言ったあの先生はこの事実を前にして、そう言えるのだろうか?命は平等についているが、命の価値が平等に扱われることはない。だからもし、私が先に死んでしまってもみんな何事もなくこの猫のようにご飯にありついていて欲しい。命に従って価値が存在するのなら、この命の価値も自分で決めたいと心から思うのです。

2023.9.29

十五夜のとても綺麗な満月が出た夜、かぐらは静かに眠りについた。優しい寝顔に少しずつ固くなってゆく身体、微かに香る死の匂いに私は戸惑いながらも心の中で何かを受け入れるための隙間を作っていた。今までは隙間を作る前に悲しみや苦しみがやってきて大切なものたちの前でずっと居座るような感覚だったけど、今回は隙間の中に無理やり押し込むような感覚。暴れるし、はみ出してはいるけれど、前とは少し違う。少しずつ私も変わっているのかもしれない。大好きな頭を撫でながら、早く骨になれるといいねと呟いた。空っぽの肉体ほど悲しいものはないかもしれない。今までの犬たちは栗の木下に埋めていたらしいが、今回は出張火葬というもので火葬してもらうらしい。その中に手紙を入れることにしようと思っている。かぐらのためにではなく自分のために手紙を書いた。"忘れるのではなく受け入れてゆく"前観た映画の感想が私を救うこともあったりする。


出会いと別れ、めくるめく季節の中花が咲き、枯れ、散るように私たちは出会った瞬間に終わりへと進んでゆく。目を閉じ想像してみる、終わり。死、別れ、旅立ち、縁の切れ目。今は愛せぬとも、いつか私の中で受け入れられた時誰よりも強くなれる大切な1部。どんなことも、忘れたくない忘れたくない。突然の夏の終わりを告げる冷たい風。また、逢う日まで。

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