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読書記録~チーズはどこに消えた?~


『チーズはどこに消えた? Who Moved My Cheese?』Spencer Johnson著 門田美鈴 訳

「ずいぶんと分かりづらいタイトルだ。」。初めてこの本を目にしたときにそんなことを思っていた。それは、学生時代に自己啓発書を読もうと大手通販サイトのAmazonで検索していた時であった。就職活動ということもあり、私は自己分析の一環でいろいろな本に目を通していたのだ。結局、その時は自分が求めていた本ではなかったためパスしてしまったが、その印象的なタイトルが頭の片隅にぼんやりと残っていた。


この本を読み、書評を書こうと思った理由はそんなインパクトの大きさが関係していた。自身で興味・関心を持った本を選択し、自分なりの学びを増やしていきたい。どの本をチョイスするかという問題に直面し、考えあぐねていた時に、かつての自分と同じようにタイトルに惹かれてAmazon商品ページを訪ねていた。あの時しっかりと読まなかったこの本の説明を読み終わった1分後、PCの画面には「ご購入ありがとうございました」の文字が浮かび上がっていた。


この本は冷蔵庫の中から忽然と消えたチーズを見つけるために主人公が名推理を繰り広げる推理小説ではない。

ある迷路で起こった出来事をめぐる物語で、登場人物は2人の小人と2匹のネズミだ。この物語の中でチーズは、私たちが人生で求めるもの、つまり、仕事、家族や恋人、お金、自由、健康、承認、などを象徴している。また、「迷路」はチーズを追い求める場所を表しており、会社や地域社会、家庭といった環境の象徴として述べられている。それぞれの登場人物がチーズを手に入れるために行動を起こすのだが、その行動が個性的で面白い。ネズミたちは優れた本能で試行錯誤を繰り返し、小人は優れた知能で熟考しながらチーズを探していくのだ。
物語の随所に行動の指針としたいフレーズが出てくるのだが、特に私が重要だと思った部分を抜粋したい。変化が起こった後に迷路へ一人で進んでいった後の小人の一人であるホーの感情の描写の場面である。

彼はくじけそうになるたび、自分に言い聞かせた。今は望ましい状況ではないが、チーズがないままでいるよりずっといいのだ。(中略)今になってわかるのは、何が起きているのか注意してみていたら、変化に備えていたら、あんなに驚くことはなかっただろうということだ。(中略)変化が起こるのを予想し、変化を求めるのだ。いつ変化が起きるか本能的に感じ取り、それに適応する準備をするのだ。

現状は移り変わるものである。

当然だと思うだろう。しかし、自分が追い求めたものを手に入れるとその常識を忘れがちになってしまう。苦労して手に入れた結果はそうやすやすと自分のもとから離れていかないはずだ。いずれ、手に入れたものがなくなって気付くのだ。自分は間違っていたと。そうならないためにも変化を求めて、それに適応する準備をするべきだと筆者は述べていたのだ。


 現状を客観的にとらえ続けることが変化を本能的に感じとるために必要だとこの本から読み取った。現状に敏感になるためには周囲の状況に意識を向けるべきだ。その際に、主観的な見かたをしていては現状分析にならないだろう。盲目的に現状を突き進んでいく誤った道しるべになってしまう。そうではなく、客観的に自分の考えを批判し、可能性を分析することでどんな変化にも柔軟に対応できる個人になることができるのであろう。

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