Brexitの妥当性:国際金融のトリレンマとポンド危機
今月17日英国とEUの間でNew Brexit deal(新ブレクジット案)の合意が発表された。しかし、19日ボリス・ジョンソン首相の強硬突破を恐れた英国下院は議員を可決させ、これを阻止した。これによりブレクジットのXデーは来年に延期されることになる。
<その様子の動画はこちら>
もちろん多くの市民からの反対もある。
だが、あながちBrexitは間違えとは言い難い。私はむしろ、客観的な立場から言えば、英国はブレクジット、つまりEUから離脱すべきだと思う。
なぜかというと、これは90年代の「ポンド危機」に由来する。
ポンド危機といえば、かの有名な伝説的投資家ジョージ・ソロスを金融のスターダムに登場させるに至った事件である。
かつてEUの前身であるECでERM(欧州為替相場メカニズム)というヨーロッパ内の金融政策が行われた。
1990年、マーガレット・サッチャー首相はERMへの加盟には反対だったが、側近で経済顧問のアラン・ウォルターズの主張やその他の政治的な要因から渋々加盟するに至る。
なぜサッチャー首相が反対したかといえば、当時ECもおなじみドイツのイニシアティブで動いており、これが問題だった。加えて、金融・財政政策が英国財務省のみでの決定ができなくなるといった問題も当時から指摘されていた。しかし、外交上の問題やキャビネットの意向からサッチャーは加盟拒否の選択を取ることができなかった。
これが問題だった。
加えて、左1990年にサッチャーが辞任し、次の首相であるメジャーはERMを支持した。
一方で、90年代は東西ドイツの統合により、西ドイツ地域から東ドイツ地域への開発投資が活発になる時期であったため、イギリスにしてみればポンドはこの成長市場の金融市場に投げ込まれ、実質とは乖離した評価がなされることとなった。
ここで目をつけたのがジョージ・ソロス率いるヘッジファンドのクォンタム・ファンドである。再帰性によって実際よりも高くスターリング・ポンドが評価されている事実に気づき、1992年大胆な「空売り」を仕掛けたのだ。
このポンドの空売りが相次ぎ、結果イギリスはERMを脱退し、変動相場制へと移行した。
その経済的損失は、ロンドン・オリンピックまで引きずることとなった。
この事実を見る時、1992年のポンド危機の構図と現在のEUとイギリスの関係性は近いものを感じる。一刻も早くEUを離脱すべきだという意見は他にもDouble Taxation問題やEU法問題、移民問題などの様々なファクターも踏まえて妥当な主張と言えよう。
あながちボリス・ジョンソンは「野蛮」とは言えないように感じる。
もしかするとこの点に気づき、次なる可能性を秘めたポンド危機を回避したとなれば、ジョンソン首相の尊敬するウィンストン・チャーチルがかつて反対を押し切ってドイツに徹底的対抗の態度を示した時ほどのインパクトを残す可能性がある。
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