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映画でバレエを観る

ビールも舞台も生がいい!

というのは、私の恩師の言葉。
かのブロードウェイスター、ジェイムズ・コーデンも、トニーアワードのオープニングナンバーでこんなことを歌っている。

今やnetflix、hulu、amazonとかあるけど
そこにはいない俳優たちがうつる平坦なスクリーンに飽きたら、ブロードウェイにおいでよ

的な感じで幕が開き(英語わからないから、ほんとに「的な」意訳)
ライブの良さを語り出す。

Real live people re-create for you (今ここにいる俳優たちがあなたのために再上演してくれる)

Every single moment’s unrepeatable(ひとつひとつの動きがその瞬間のためのもので)

It can’t be hashtagged and it isn’t tweetable(ハッシュタグをつけたりツイートしたりで、その瞬間は拡散もできない)

そう、サブスクが流行してとっても便利な時代でその恩恵も受けまくっているけれど、でも生には絶対勝てない。あの空気、あの感動は、生でないと味わえない。だから、本場の舞台を観に、イギリスやらロシアやらに行くために馬鹿みたいにバイトしてたんじゃないか。

だから、だから、今のこの状況がとっっっっても悔しい。くやしい!!!!!!ストリーミング配信みるのも正直疲れたし、いやいや、画面越しに劇場見るなんてもはや苦行でしかない!!

だけど、いつまでもくさくさしていられないので、「画面越しで我慢するか……」ではなく「画面越しならではの」むしろ「画面越しがいい!!!」とまで思えるバレエ動画を集めた。
劇場に行けない腹いせの、成れの果てである。
(劇場をコロナの悪の根源みたいに報道するメディア、本当にやめようね!!!)

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https://youtu.be/UeOy1WKeTRY


ということで、オススメしたいのがペネファザーフィルム社のショートフィルム。バレエのショートフィルムを作っている会社で、イギリスのロイヤルバレエ団のプリンシパルたちが制作に関わっている、バレエファンにはたまらないショートフィルムだ。

だけど、これこそバレエを知らない人に観てほしい。映画好きな人なんかは特に!カンヌ映画祭のショートフィルム部門にもノミネートされているのだから、映像としてのクオリティもお墨付き。

どれも素敵なのだが、まずは1つ、紹介したいと思う。

「THE SUN IS GOD」

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https://vimeo.com/249525218

第一次世界大戦の終戦100年の年(2018年)に作られたもの。戦争に行った愛する幼なじみを待ち続ける女の、追想と決意を描いている。
撮影されたのは、イギリスにあるカントリーハウス“ペットワース・ハウス“。中にはイギリスを代表する画家ターナーの絵画がたくさん飾ってあり、本作ではターナーの絵画をフックとなり、戦争に引き裂かれた2人の男女のロマンチックな踊りが始まる。

主演は、若きロイヤルバレエのプリンシパル、フランチェスカ・ヘイワードとマシューボール。フランチェスカは、映画版キャッツの主演でもあるので、バレエを知らなくても知っている人もいるかも。

2人を優しく包む太陽の光や、彼を連れ去る真っ白な霧は、残酷なほどにロマンチックだ。

最後、女はなにかを振り切るように扉を閉める。男を辛抱強く待つ決意なのか、(男はもう戻ってこないという)事実を受け入れ、強く生きていこうとする決意なのか、この時、女が何を考えていたのかなんて知る由はない。
ただただ、「2人の美しく尊い愛は、戦争によって引き裂かれてしまったこと」「同じような別れが、ありふれていたこと」、その変えようのない事実を私たちはこの美しいショートフィルムとともに胸に留めておかなければいけないのだ。

動きの美しさをとらえるカメラのアングル、生の舞台では不可能なモンタージュ技法によるストーリー展開。バレエと映画のいいとこ取りのようなショートフィルムが勢揃いなのである。
これはむしろ、生より映像がいい。