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生存バイアスに埋もれてしまいそうな海外大受験のお話。

近年、日本から海外の大学に出願する受験者の数は急激に増加しています。塾もその中で競争を繰り広げ、ネット上はたくさんの合格体験記で溢れています。今後も海外大への出願者が増えるのであれば、私みたいな話が1つ残っていても良いのではないかと思い、noteを開きました。後に触れますが、海外大受験を勧めない訳ではありません。私にとっては人生で最も深い経験でした。ただ、一つのケースとして起こり得る話を、ここに残します。(最後に受験生へのメッセージも載せたのでよければ読んでください!)

(*がついている用語は下部に説明があります。)

「高校からの海外大進学者ゼロでも、地方高校でも、海外経験がなくても、自分が行きたい大学に受かることを証明してやる」

という強い気持ちで2度に渡って挑んだ海外大受験だったが、この経験は私の中で不完全燃焼で終わってしまったーーー。

選択

2020年3月下旬。

インスタの「Accepted to xx college!」といったストーリーを私は空っぽな心で見ていた。友人が希望していた大学に受かっていくのをみるのは心底嬉しかったし、誇らしかった。でもその報告を見る度、自分の心は削られていくようだった。

私は、志望順位が高かった大学からは全て不合格となった。(というかほぼ不合格。)奨学金も全額カバーできるようなものは全て不合格だった。課外活動やスコアメイキングなど、自分なりに頑張ったつもりだったが、正直反省点ばかりだった。もっと志望校を絞ることもできたし、エッセイ*は最後まで納得のいくエッセイが何かは掴めないままだった。アプリケーション全体の構成も満足いくものではなかった。当然の結果だったと言える。

それでも私の心はそれを受け入れることができなかった。

合格発表から暫く経った頃、私は自分にとっての理想の学び方・学べる環境についてよく考えるようになった。進学予定の大学ではそれが叶わないなと直感的に思った。何より、今回の結果に納得できていなかった。想像していたものと現実があまりにもかけ離れていて、生きている心地がしなかった。

家族にそれを伝えると、「じゃあ納得できる方法を考えればいい。」と言われた。そこで行き着いた結論は「再受験」だった。

今年こそは塾に通ってしっかりしたサポートを受けようと考えた。親も私の揺るがない決断を受け、快諾してくれた。

今考えれば、再受験は私が初めて下した「レールを外れる」という決断だった。小中高一貫校に通い、退学詐欺を何度も繰り返しながらも結局レールの上に留まり続けることを選んでいた私にとって、初めての不安定な決断だった。1年後自分がどうなるか、想像もつかなかった。とてつもなく怖かった。

拗れ

「今克服したいことは何ですか?」

塾の初回のカウンセリングでこう聞かれた。

私は、「自分に正直になりたい。愚直に生きたい。」と答えた。

私はいわゆるジェネラリストでマルチタスカーである。興味の幅が広く全て手を付けるが何となくになってしまう。常に複数のタスクを抱えていて、一つに絞ることはできない。それは一種の才能だと言ってくれる友人もいたが、私はそんな自分に自信を持てなかった。ずる賢く中途半端に生きていると信じていた。そんな自分を変えたかった。そんな自分を認めることが必要だったのに、それに気づいていなかった。理解していても、自分を認めてあげれられていなかった。

TOEFLやSAT**も受け直した。SATは何とかセーフラインの点数に持っていけたが、それでもギリギリだった。(1ヶ月の勉強でよく伸ばしたと褒めたいが!)TOEFLはこれは苦手だと認めざるをえないほどに点数が伸びなかった。(伸びたけど!)足切りはないと言われている米大の審査基準を信じるしかなかった。

奨学金は全て不合格となった。そもそもギャップイヤー生の出願を受け付けない財団もあった。TOEFLの点数などを考えると当然だったが、たくさん力を借りながらも全てを取りこぼしていく自分に焦り始めていた。

11月に受けた第一志望の大学からは、12月に不合格通知を受け取った。

ギャップイヤー***の間は自分のやりたいことを思う存分試した。ずっとやりたかった音楽神経科学の研究や、バレエ以外のダンス、楽器の練習、新しい言語の習得。とても有意義だった。それと同時に、HLAB留学フェローシップといった高校生に対する経験の還元活動にも取り組んだ。目を輝かせて私たちの話を聞き、時には涙を見せながら自分の話をしてくれる高校生を見ながら、私は勇気をもらっていた。受験追い上げ期の年末に開催されたオンラインプログラムにはあまり参加できなかったにも関わらず、仲間は常に受験を優先するよう配慮してくれた。時々顔を出すと、高校生は「受験頑張ってね!」と言ってくれた。ホテルの部屋で一人エッセイを書き続けていた私にとって、彼らの言葉は何よりの支えだった。

振り返れば、私の心は疲れていた。あまりにも忙しなかった。

2021年3月下旬。

米大の結果発表が始まった。

"We regret to inform you..." "Unfortunately, we are not able to offer you..."

どの通知を開いても、不合格を告げていた。

まさに、掬った水が全てこぼれ落ちていく感覚だった。どれだけ走っても追いかけていたものからの距離がどんどん離れていった。いつの間にか全てがこじれていたことに気づいた。

かなりの額のFinancial Aid****を申請していたため当然合格率が下がることは予想していた。コロナの影響でトップ校の倍率が増大していることも知っていた。そこまで期待はしていなかった。それでも、それでも、この1年はきっと無駄じゃなかったと結果が教えてくれるーーそう信じていた。私の「頑張り」はどこにも届かなかった。

2回受験しても、結果はさして変わらない。突きつけられた現実だった。

運が悪かった。その一言で終わらせたかった。

終わりと始まり

今、私は1校の結果と、Waitlist*****からの繰り上げ合格待ちである。

本来なら、合格した学校から進学先を選ぶプロセスに入る時期だが、私には選択肢はそう多く残されていない。

ギャップイヤーを振り返っても、「こうしていればよかった」と感じることは多々あった。足りない要素も多すぎた。でも、様々な通過点を積み重ねて今存在している自分に、そんな言葉をかけたくはない。むしろ、今の不確実でも、なんとか崖の際を歩き続けられていることは、去年からの、今までの積み重ねの結果である。

結局大学生活の質は、どこにいくのではなく、自分がどうするか、が大半を占めているので、私の今後の大学生活は全て私に委ねられている。受験に失敗したからと言って、それが本当に失敗だったかは卒業するまで、いやいつか振り返る時がくるまでわからないものだ。

それでも、私の海外大受験自体は成功だったとは言えない。

十分満足することのできる結果とも言えるし、何より私は自分が恵まれていることを実感できた。それでも、自分の目標とはかけ離れたところで終わってしまった、という点で「成功」とは断言できない。満足はできないが、納得できる、しなければいけない結果だ。

私の受験はこうやって終わりを迎えた。

まずは走り抜けたことに、達成感を覚えている。少し苦い経験とはなってしまったが、それが今後私の人生にどう生かされるのか。それを楽しみにしたいと思う。今回の経験を通して重ねた自分の努力は、いつか、また違う形で花を咲かせると信じている。

最後に、私のことをずっと信じ応援し続けてくれた友人や先輩、先生、そして何より厳しくも優しくも私を常に見守り、金銭的精神的に支え続けてくれた家族に感謝の言葉を残しておきたい。

たとえ受験が成功という形に終わらなかったとしても、「自分は恵まれた幸せな人間だ」と胸を張って言えるのは全て、どんな小さな形だったとしても私と関わってくれた全ての人たちのおかげである。ありがとうございました。

おまけ 〜未来の海外大受験生へ〜

海外大受験は私にとって素晴らしい経験でした。自分を見つめ直し、自分のこれからの人生を熟考できる最高の機会でした。

高校からの海外大進学者ゼロでも、地方高校でも、純ジャパでも、望めば海外大学に進学できます。きっと、一番行きたい大学にだって合格することができます。結果なんて出ないとわからないのだから、やらずに後悔せずやって後悔すればいいと思います。私も自分の経験を、この選択を後悔したことは一度もありません。

どんな結果になっても、自分が後悔しない選択をしてください。

もしも、あなたの努力が、大学に合格という形で認められなかったとしても、それは無意味ではありません。少なくとも私はそう信じています。

大学進学に関係なく、新しい一歩踏み出すのは怖いものです。でも、その一歩を踏み出そうとしている皆さんは勇敢だと思います。

もし不安なことや困っていることがあれば周りを頼ってください。誰もいなければ私にこっそりメッセージを送ってもらうのも大歓迎です。大した話はできませんが、しょうもないギャグで表情筋を緩ませることくらいはできると思います。

皆さんの健闘を、心より応援しています。


〜用語解説〜

*エッセイ:海外大受験(特に米国と英国)は願書の大半をエッセイという自分についての文章が占める。テストスコアや成績・推薦状以外に、自分の性格や個性、志望動機まであらゆることをアピールする機会である。

**SAT:日本の共通テストのようなもの。Reading(文章読解と文法)とMathの2つのパートが存在する。1600点満点。

***ギャップイヤー:いわゆる浪人。(個人的にこっちの表現の方が好き)

****Financial Aid:海外大学は受験時に大学からの給付奨学金を申請することができる。詳しい説明は割愛するが、Need-blindを採用している大学以外は奨学金を申請するか否かで合格率がかなり変わってしまう。

*****Waitlist:補欠合格。


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