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騙し、騙され -その6 タイ・トゥクトゥク編-

前回までのあらすじ
山奥の限界集落で起こる謎の連続死。調査に送り込まれた岩淵警部。しかし次々起こる村からの反対により調査は暗礁に乗り上げる。ある夜、村外れにある祠に人影を見つけついて行くと…。


-タイ・トゥクトゥク編-


一人旅のときは基本的に歩きで移動する。
豪華なお寺や、仏像などはタイの見どころではあるものの、どちらかというとその辺を歩いている猫や、タイ文字の看板、半裸のおじさんなど、余計なものを見るのが好きだ。
そういう類のものは、のんびり歩きながらでしか出会えないもの。
ただ、それでも有名な寺なども一応見ておきたい欲張りさんだ。
あるお寺が歩いて行ける距離ではなかったためトゥクトゥクで向かう事にした。
なるべく若めの運転手さんのトゥクトゥクを選び捕まえた。
決して若い運転手さんが好きなわけではない。
残念ながら、そっちの趣味はない。
当時の私はタイ語が話せないため、英語で会話しなければならないためだ。
年配の運転手さんだと、英語での会話もできない、地図を見せても地図の見方が分からない、お寺の名前も英語表記されているので読めないという事態に陥るのだ。

「このお寺に行きたい。いくらですか?」

流暢とはとても言えない英語で話す。

「70バーツだね」

若い運転手は話が早い。
そして、英語圏ではない国だと発音が悪くてもお互い理解しあえるから楽でいい。
妥当な値段だったので交渉成立だ。
彼もそのお寺は知っているようで、あっという間に目的地に到着。

「着いたよ」

「70バーツだね」

「700バーツだよ」

ポカン。
ここは大阪の八百屋か?
100円のものを100万円とかいうあれか?
いや、ここはタイだ。
こいつ、ボル気か!?

「さっき70バーツって言ったやん」

「700って言ったよ」

「いや!70って言った!」

「え?」

私も、普段から大体は機嫌よく暮らしているため柔らかい顔と言われる。
柔らかいといっても、モチモチしているわけではない。
柔らかい表情という意味だ。
旅行中は特に機嫌が良いのでニコニコしている。
ここは、微笑みの国タイ。
そうだ、微笑んでいては相手の要求を飲んだという意思表示になる。

「お前は嘘つきだ!ワーワーワーワー!」

バーサークモードに突入した。
私は騙されることがとにかく嫌いなのだ。
トゥクトゥクのタイヤを蹴りながら、ひたすらこっちの主張を叫ぶ。
ちなみに、トゥクトゥクのタイヤは小さくて固いから蹴ったところで車体はほとんど揺れない。
自分の足が痛いだけであまり効果はないのでこの方法はお勧めしない。
ただ、怒りを表現するには最適だと思われる。
私は、お寺の駐車場の中心で愛ではなくクレームを叫んだ。

「オーケー、オーケー」

「お前はさっき70と…え?おーけー?」

バーサーカーの前に彼は屈したのか。
でも、優しい顔を見せるとまたつけあがるかもしれない。
バーサークモードを装いつつ、雑に70バーツを渡す。
まだ怒っていることを表現したかったので、立ち去るときも足をドシドシと地面を強めに踏みつけつつ立ち去る。
木造住宅なら、それなりの音がして効果があるが、アスファルトの上でやっても音はせず、足が痛いだけなのでこの方法はお勧めしない。

結論
たまにはまともな事を書くと、タイでは観光地など外国人観光客の多いエリアにいるトゥクトゥクは観光用だから外国人価格を要求してくる。
一つのアトラクションとして乗るには楽しいけど、決して値段は安くないから注意。
タクシーやバイクタクシーの方が値段交渉は不要でぼられる確率も格段に減るのでそちらを利用することをお勧めする。

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