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【mina book festivalレポート】①本で人がつながる魅力

本と人にかこまれた、怒涛の1日でした。

会場の人の波が、ほんとうに途切れることなく、
私は、初めましての出会いに夢中にも、必死にもなっていたら、
気づいたら日が傾いていて、ふっとまた外をみると夜になっていました。

先週2月23日に、ミナガルテン(広島市佐伯区皆賀)で行われた、ブックイベント【mina book festival】のレポートを書きました。

本屋さん、読書会、絵本、本と珈琲、本とカレー…などなど。
このイベントでは、市内にある6店の個性派ぞろいの本屋さんが集結し(オールスターだった!)、5つのワークショップ2つのトークショーまで。
出店者さん側は20名オーバー。なんとも、豪華な イベントでした!
※イベント情報詳しくは、こちら

広い会場なのに、視界の端から端まで、本が並ぶ姿は圧巻で。
お昼前に漂うスパイスカレーの良い匂い。誘惑に負けておなかが鳴った!(味も最高)
明るいゆうやさんが手渡してくれる、味わい深い珈琲に、ほっと一息。

1週間経ってもあのときの感覚(喜び、感動、温かさ、寒さ、良い匂い…)を鮮明に思い出す、夢のような、とても楽しいイベントでした。
メモリアルな1日。


正直、「本」をキーワードに、こんなにもたくさんの人が来るなんて思っていなかったです!予想以上。本好きな人はきっとシャイな人が多いということで(勝手な推測)、本のポテンシャルすごい!

広島市は、繫華街の本屋の閉店がつづくなど、まちに本の文化があまり根付かない土地柄なのかと、Uターン組の私は寂しく思っていました。
本を読む人の姿も本にまつわるイベントも、そんなに見ないよな~と。

だから、広島市でこんなイベントが開催されるなんて…!感激です。

私は、ミナガルテンで1度読書会をさせてもらい、そのご縁から「モヤモヤさんのための1on1選書」というワークショップブースを持たせてもらっていました。

①本好きのいち参加者として
②読書会担当の出店者として
③良い場づくりに憧れる者として

3つの視点で楽しんでいました。

本当に楽しかった!半面、色々と実験・観察もしていたので、mina book festivalから感じたことを、備忘録として記します。

3つの視点に合わせて、3分割。

  1. 本の魅力はなにか?(本と人と繋がりの視点から)

  2. 私は自分の実験から、なにを得たか?(読書会の視点から)

  3. mina book festivalはどんな場だったのか?(菌と発酵の視点から)

では、まず1つ目から。

なぜこんなにたくさんの人が集まったのか?
本の魅力はなにか、印象深かった企画、本屋さんのお話も。


本を通じて、人と繋がり、人生が動き出す

photo by 青山浩一さん

これは、mina book festivalのスローガンです。素敵。

人は、どうして本を読むんだろう?
どうして本は、人間の歴史の古いときから、作られ続けてきたんだろう?

私は、国語の成績がずっと1番悪くて苦手意識の塊だったし、20歳までは本を読む習慣はほどんどなくて、ミーハーにハリーポッターシリーズくらいでした。本よりも部活や受験勉強、本よりもサークル活動。
それが、いまや、本に魅了されて、読書会(リードフォーアクション方式)と出会って、自ら読書会を毎月主催するまでに。2月は10冊も衝動買いしてしまった…あぁ。(このイベントで6冊+α、絶賛積読中)

「本」てどんな存在なのか、時折ひとり静かな夜を過ごしているときなど、立ち止まって、考えてしまいます。

今回のイベントのなかで、多くの人と本が行き交う様子をみて、本を通じて人とつながる面白さを改めて体感しました。

つながるとは、、

その人の人生を垣間見ること、共感すること、そんなイメージ。想いを受け継ぐ、もいいですね。


人生の3冊・今日の3冊

私は、人がつながることを強く実感したイベントが、来場者の方も自由に参加できる「人生の3冊」「今日の3冊」でした。

  • 持ち寄る「人生の3冊」
    前夜祭でのトークテーマでした。当日、会場に設置されたノートに、自分の選書ログを残すこともできました。大盛況だった!

  • 選ぶ「今日の3冊」
    当日会場で、どんな3冊があなたに響きますか?という問いかけから。3冊と決めて買うと何が起きるか。これは、後夜祭でのトークテーマ。みんな違う本で、選んだエピソードを聞くの楽しかった!

どちらも「3冊」がポイント。
1冊ではわからないけれど、3冊だったら、その人となりが立体的に立ち現れてくることを期待した、企画者・谷口千春さんの想いです。

私は前夜祭も後夜祭も参加して(皆勤賞!笑)、そこに集った人たちの、自分と3冊の本エピソードを聞いていました。

人生の3冊も、今日の3冊も、どっちもよかったな~
(人生の3冊、好きな本とはまた違う観点なので、選ぶの迷いました!おもしろかった。これは読書会のネタにしよう。)

選ぶ本、話す言葉や声色やペースなど、その人の人柄がにじみでるから、面白い。初めましての人ばかりで、しかもマイクを渡されるわけだから、緊張しそうな場だったけれど、笑いありの温かさをまとった夜の時間でした。

会場の奥にいる方が紹介した本について、マイクがぐるっと回って、会場の手前の方が「さっきも言われていたけど…」と、自分の番の時に話題にしたり。

誰かの愛読書が、「今日たまたま図書館で借りてきた本にも、おなじようなことが書いてあって…!」と笑いが生まれたり。

後夜祭で発酵の話が出たと思えば、「あっ、前夜祭で私が紹介した本です」とかばんから同じ本が登場したり。

人の声と笑顔と本と。
たくさんの出会いを目の当たりにして、
本っていいな、と改めてしみじみ思う。

photo by 青山浩一さん

本について話すことは、自分の一部を晒すこと

自分の日常の一部を、だれかに話してみる。

本の力を借りて、普段は話せないようなことを、世の中に落としてみる。

ブックイベントという非日常の時間だから、自分のことを、えいやで話してみる。

そしたら、初めましての名前も知らない人が、視線のはしっこで、自分のつたない話をきいてうなずいてくれる。嬉しい。

きっとお互いに名前を知らないっていう距離感も、心地よいんだと思います。話す方も聞く方に、妙な気遣いなく、より自由に、軽やかに。

本を選んだ理由や、本への感想は、必ずその人の思考がにじみでます。

思考を言い換えると、その人の好みや性格や暮らし方など。
自分の本棚を見られることは、自分の冷蔵庫を見られる以上に恥ずかしくりそうなくらい、自分自身が映っているはず。

たとえば「あなたの考えを教えてください」「どう思いますか」って急にマイク渡されたら困るけど、手元に本があると少しハードル下がる感じ。
丸裸の自分だけじゃなくて、味方がいる感じ(しかも誰かの知恵の結晶)。

自分のことをするりと話せてしまうわけだから、本って、すごいなー。

本は、自分の一部を晒して新しい人と関わる勇気をくれる気がします。

そして、本の向こう側に見え隠れする、その人の日常や人生を想像しちゃうのも楽しいものですね。


「先ほど紹介されていた『モモ』、私も好きな本です」
と、入口の扉を重い開ける私。

「あら、そうなのね。嬉しい」
と、にっこりと帰り間際の女性。

本があると、初めましてだとしても、気にならない。
知り合いかどうかよりも、本好きな気持ちが一緒かどうか。
本好きの共通点があるとそれでokな気がしてしまいます。

一言で、人の人生が交差する。
そんな光景をミナガルテンでみた、星瞬く2月の夜でした。

photo by 青山浩一さん

本を買うことの意味

昨年の12月から、「本屋と図書館はどうちがうのか?」という問いを考えていました。それ以来、本屋さんという存在への関心が高まっています。

  • 図書館/本を借りるところ

  • 本屋/本を買うところ

そりゃそうだ、
と突っ込みがはいりそうな明確な違いですが、

本を買う、本を借りる、両者はどう違うか?

私は、どちらかというと本を買う方が好きです。

図書館で借りた本はつい読まずに、貸し出し期間最終日を迎える、なんてことをよくやってしまいます。

本を買うと、お金を払った分、読まなきゃという気持ちになるし、自己投資した自分へのOKサインにもなるし、積読としてでも視界の片隅に居続けたりする。

なにより、本屋さんや誰かと話して買った本は、
そのときの記憶も一緒についてくる。本を買うと思い出が増える。
(素敵な司書さんがいる図書館だと、本を借りる思い出も増えていきそうですね。あいにく私はそんな司書さんとの交流ができたことがない)

どの店で買った本か、結構覚えているものです。

人の顔が浮かびながら読書ができる。
これって、なんだかよくないですか?

消費行動は関係が清算されると言われることもありますが、mina book festivalでは、売買のプロセスの中では、お互いの顔が見え、会話があり、関係が続いていく売買が発生したのではないでしょうか。

photo by 青山浩一さん


本はあったかいバトン

私が今日の3冊のうちの1冊に選んだ本は『本を読める場所を求めて』。

「これ、私が読んだ本なのよ~」

と、ほんのみせマドカラのひろえさんから。

他にも気になる本がいろいろあって、迷っていますってところから、あれこれ話していて。本っていいよね、本屋さんやらないの?なんて、本談義に発展していったところで、『本の読める場所を求めて』を紹介してくれました。それで、お会計のときのこの一言。

うわ、やられた。嬉しさ倍増です。
大事に読ませていただきます。
あのときの西日暖かだった空気も一緒に、ひろえさんの柔らかな笑顔も一緒に、大事に本に綴じておきます。

photo by 青山浩一さん

今日の3冊のうちの別の1冊が『夫のちんぽが入らない』。

これは三松文庫の赤松さんが、「これがいいと思う」とオススメされた本。

話題の書なので、本のタイトルはもちろん知っていたけれど、タイトルがパワフルだから自ら手に取ることはなくて。でも赤松さんが、私の読書会の話を聞いてくれて、違和感やモヤモヤ、問づくりを大事にしています、と話をしていたら、「普通はなにか?と考えさせられる本だから」とこれを手に。

いやぁ、それは私の好みにドンピシャです。
自分ではきっと買う選択をしなかった本。
ありがとうございます!

ミナガルテンでの担当場所が近くて、ちょっとお話できたお二人。店舗を持つか持たないかの葛藤話でも共感して、立っている場所が近い気がして、勝手に親近感を持っていました。お話楽しかったな!またお会いしましょう!


本を買うことで、人の想いを受け取る。
思い出も一緒に
買い取ってくる。

新しい本が自分の元に来るたびに、誰かからバトンをもらったような気分になりす。

ほっこり。

古本はもとはと言えば、誰かの私物だったのだ。当然のことではあるけれど、それを仕入れては商品としてまた別の主へと届ける。車の後部座席で積まれた大量の本は、一冊、一冊に誰かの体温が微熱として残っている。

『頁をめくる音で息をする』藤井基二・弐拾dB


ただ、今回悔しかったことがひとつあります。

私のブースでは本の販売はしていなかったこと。
モヤモヤを話してくれて、せっかく本(しかも自分が大事に選んだお気に入りの本)に興味を持ってくれた人に、その場で渡したかった。

職場で気難しいベテラン女性社員さんがいてね…とこそっと教えてくれたあの男性には、怒りについて・役割期待のズレについての本を。
気にしすぎる性格で…とモヤモヤを共有してくれたあの女性には、お坊さんの言葉をまとめている本を。気にしない練習に。

今回渡せずに、私の手元に帰ってきている本たちを手に取るたびに、きっとmina book festival でお話したお客さんとの一瞬を思い出すでしょう。

これもまた、本を通じて人と繋がる体験の1つかしら。


本屋のプロフェッショナル

本屋さんの話をあと1つ。

「このイベントに来る人を想いながら、本を選びます。」

後夜祭で、今回の感想のなかで本屋さんが言われていました。

直接言葉にするのではなく、本棚にお客さんへの想いをにじませる。本屋さんという生業は、粋です。素敵。

担当場所が近かったREADAN DEAT本と自由nice nonsense booksの本棚をみて、そう、プロはやっぱり違う、と思ったんです。
ホリデイ書店さんの本棚も見に行きたかったけど、一番離れていて、タイムオーバーでした。残念すぎる。またの機会を楽しみに)

なにがどう違うのか、よくわからんのんだけど。
言葉にできない私の語彙力のなさにうなだれるのですが、なぜかわからないけど、かっこいい本棚たち。

こんな本があるんだ、とタイトルや想定だけで目を奪われる本だったり。
その本とその本が並ぶのね、という発見がおもしろかったり。

選書や本棚の文脈のつくりかた。

ふむ。

「なぜかわからないけど」の感覚ポイントで、人の本能にささる仕事をされているからプロなんだろうな。そこから、人生が動き出す可能性を秘めた本との出会いが生まれていくんだろうな。

本をだれかに渡したい、という思いはは私にもありますが(だからきっと将来本を売る)、目の前に美しい本の並びを見て、「本屋」のプロにはなれないとガツンと思いました。うむ。

プロに会うって、大事。

photo by 青山浩一さん

とっておきの日常に、本屋さんに行きたい

「店は住宅街の真ん中にあり、そんななかで自分の個性だけを主張しても、人が集まる場所としての本屋としてはむなしいものになるのではないかと思いました」と辻山さんは、その著書『本屋、はじめました』(苦楽堂)に書いている。
ぼくはこの本を読み、そうだ、本屋は人が集まる場所なんだ、といまさらながらに思う。そういうふうに思って、改めてTitleに行くと、その二〇坪の敷地に並ぶ本の一冊一冊までもが、どういうわけか人のようにも見えてくる。

『本屋さんしか行きたいとこがない』島田潤一郎・夏葉社

日々、来るお客さんのことを考えて、本棚をつくる本屋さん。

お客さん想いの本屋さんに、未知の本に出会いに、自分に響く一冊を探しに、ちょっとおしゃべりしに、お店に足を運びたくなります。

本をテーマにしたトークイベントや、読書会に本談義。

だれかの人生が垣間見えたり、自分の日常とだれかの日常がふと重なる出会いが待っているので、ついつい時間を忘れて、対話を続けてしまいます。

多くの出店者が集まったmina book festivalは、非日常のイベントと感じそうですが、実際は、ちょっと特別な日常という感じでした。

あったかい人のつながり、をたくさん目の当たりにしたからか。

プラスの気持ちだろうがマイナスの気持ちだろうが、日常の一コマに、本屋さんに行くという選択肢があってもいいですよね。日常がちょっと特別な日常になり、人生が動き出す出会いが待っているかもしれない。

日常が特別にな魅力が、本にあり、本屋さんにつまっています。

とっておきの日常に、私は本屋さんに行きたいです。


私がいま本に対して思っていることを、すこし整理できました。
多様な楽しみ方ができたmina book festivalのおかげです。
そして最後まで、長文(きっと過去最高)を読んでいただき、ありがとうございます。

あと2つ、読書会編とミナガルテンの場づくり編、書きますね。ではまた~。


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