となり町戦争(著:三崎亜記)
町の広報誌に、となり町との戦争開戦のお知らせが、小さく便宜的に載っていたことから物語は始まる。
と言っても、主人公の生活に変化はない。
しばらくすると広報誌に戦死者の報せが載る。驚くものの、それでも日常は何も変わらない。
ある日、偵察業務の任命通知が届いたことから、日常は一変する。
この作者の作品はいつもそうだ。その視点に驚かされ、ぐんっと物語の世界へ引きずり込まれる。
本作に始まり、「失われた町」「刻まれない明日」「海に沈んだ町」「逆回りのお散歩」と、町とその住民を題材にした作品は特に一級品だと思う。
本当に好き。
現実ではありえない。いや、あるのかもしれない。
登場人物は救われたり救われなかったり、それでも生きていくのだ。非日常は、誰かの日常なのだから。
うやむやにしてきたこと、見て見ぬふりをしてきたこと、見ているだけのこと、聞いたことがあるだけのこと…
身近なことからメディアで報道されていることまで、私が選んできたものや流されてきたことが私の日常なだけ。お隣には、私の知らない日常があるのだ。
まさに、あなたの知らない世界。
少し、恐ろしくもある。
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