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水木しげるの「わたしの日々 」

今朝は開店直後にワイド版の漫画をまとめてご購入いただき、幸先よくスタート。その後、青空に誘い出されたかのように次々とお客さんがご来店。久々に普通に本が売れた、古本屋にとってよき一日となりました。

そんな中、たまたまネットで売れた本が目に付き、そのまま梱包前に読みました。それは水木しげる先生の「わたしの日々 」という漫画です。

この本は、水木しげる先生にしては珍しいカラーのワイド版。その内容は、水木しげる先生の日常です。調布に住み、家族と自然を愛し、等身大の生活を続ける92歳の巨匠の生活。それが、いつもの画風で綴られます。それはそれで面白い。

しかし、注目すべきは途中に掲載されているコラムです。そこには水木しげる先生が若き日に描いた水彩画や児童書のようなものが紹介されていました。驚くべきことに、そのレベルが非常に高い!おそらく絵本作家として活動されたとしても、成功したのではと思います。ちなみに本文中の言葉を借りると、その絵は「繊細で情緒的」なのだそう。鬼太郎や妖怪のイメージとはだいぶかけ離れていますね。

とにかく、水木しげる先生はデッサンや模写も非常に上手く、可愛い絵も描ける。にもかかわらず、あえて妖怪チックな絵だけを描いていた。その事実に驚きました。本作中に登場した水木先生が「好きなように描いている」と言っていたので、あの独特のタッチこそが水木先生が本当に描きたい画風なのでしょう。

先日、店主は「自分の実力を100%出すことよりも大切なこと」というブログを書きましたが、まさに水木先生はそのような人かもしれません。教科書的な絵も上手。何を描いても本当にうまいのに、自分の実力をひけらかすことなく、ただ淡々と自分が描きたい作品を発表し続けた。それだけが成功の秘訣だとは思いませんが、この姿勢は見習わねばと思いました。

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