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恐れが怒りに変わるとき「蟹工船」

先日、イライラすることがありました。ただでさえ気圧の変化や花粉が気になるこの春先、寝不足も相まってストレスが溜まります。そこで、逆にこの溜まったストレスを利用して本を読むことにしました。

選んだのは、普段読まないプロレタリア文学の名著「蟹工船」。2008年に大流行し、「ユーキャン新語・流行語大賞2008」ではトップ10にノミネートされた作品です。

店主はこの「蟹工船」を毛嫌いしていました。そもそも酷い話や不幸な小説を読むこと自体が好きではありませんし、政治色が強い小説も敬遠していました。そういうこともあり、今まで読もうと一度も考えたこともない本でした。

しかし予想に反して、この蟹工船という作品のパワーは凄まじく、読み始めるとグイグイ引き込まれることとなりました。プロレタリア文学の力強さに圧倒され、ページが次々と進みます。思った以上に読まされました。

特に労働者たちの酷い生活や仕打ち。そして労働者の諦めや恐怖や怯えが、怒りに変わる過程は丁寧に書かれており、本を通してそのエネルギーを十分に感じとることができました。

ただ、作品の中で紹介されるロシア(当時ソ連)や中国を称賛する内容に関しては、意外なほど初歩的でした。現代においては本書を読んで本当に「ロシアは素晴らしい国だ」と思う人はいないでしょうね。そういった意味で、警戒が必要な本ではありませんでした。純粋に素晴らしい文学作品として読むことができます。

冒頭の話に戻りますが、店主は悪い権力者に対して腹を立てていました。なので、この作品はドンピシャで共感できました。本当に情熱的に読んでしまった。ただ、この著者が考えるように資本主義がダメで、共産主義や社会主義がいいかと思うと、それは違うと考えています。

何故かというと、共産主義や社会主義でも悪い権力者は登場します。なので、悪い権力者を排除する方法というのが店主の次の本を選ぶテーマとなりました。このままネガティブな気持ちを利用して読書を続けたいと思います。

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