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『ガロ系』漫画「電話・睡眠・音楽」

傘の骨が折れました。それは暴風雨に傘が負け、布が裏返ってしまったから。それでも出勤しないという選択肢はない。布が再びめくれ上がらぬよう低く構え、風に逆らい歩きました。しかしその結果、傘の骨がボキボキに折れてしまい、捨てざるを得ない結果となりました。

そして、今日は漫画とも戦うことになりました。対戦相手は店主にとって初見の作家さん。著者は白土三平が創立者である『ガロ』で連載を続けていた川勝徳重氏。タイトルは「電話・睡眠・音楽」です。

この作品はシリアスな漫画の短編集です。しかし、画風が統一されておらず、それぞれが別々な方向に向かっている。唯一共通点があるとすれば、王道には染まらない描かれ方をしている、ということのみ。

中国の古典風だったり、文字が多い作品だったり、つげ義春テイストだったりと、あらゆる方向へ作風が分裂している。小説の短編集では見かけないパターンですなので、こんな編集は漫画単行本ならではかもしれません。

で、実際に読んでみると、読む前に感じていた絵の印象と、読んだ後の印象が変わりました。「毒々しい絵だなぁ」と感じていた画風がそれほど気になりません。そして意外と読みやすい・・・というか、疲れない。おじさんにとっては、細かい描写の漫画よりも、大雑把な線の漫画の方が読みやすいのです。白土三平の古本をお爺さんが好んで買って行く理由が今日分かりました。

ただ、『ガロ』系の作品は哲学的な内容を含んでいる場合もあり、作者の意図が読みとれないという悩ましさもありました。『路傍の石』の良さがわからない店主だから、それはある意味当然かもしれません。

でも、自分がよくわからないものを、まずはひとつ読んでみる。敵か味方かわからないものに対し、ファイティングポーズをとりながら近づいてみる。そうやって自分の視野を広めたい。

理解できない漫画を理解してやろうと思ってページをめくることは、暴風雨に傘を低くして突き進むことと同じです。この『ガロ』系の漫画文化を吸収し、古書店の店主として人に語れるほどの知識を身につけたいと思います。

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