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ソクラテスのつぶやき:Las Vegas Sands日本撤退の意味を改めて考える

こんばんは。先週末のニュースですが、本日は以下について取り上げさせていただきたいと思います。

世界を代表するカジノグループLas Vegas Sandsの日本進出断念

一時期はオリンピックとともに議論が盛り上がっていたIR・カジノですが、今ではすっかりコロナもあって音沙汰なしです。そんな中でのニュースです。本日はこちらのニュースの解説及び改めてラスベガスサンズの事業構造について簡単なおさらいができればと思います!

本記事のサマリーは以下のようになります

ラスベガスサンズが日本進出を制度面・事業環境を背景に断念

・同社はマカオ・シンガポール・米国を中心に展開する年間売上1.3兆円強、EBITDA5,400億円弱のカジノ業界最大手

・日本の技術・コンテンツ価値の収益機会拡大及び不動産業界の価値見直しの観点から両業界をみてきたソクラテス的にはとても残念

以下各項目について掘り下げていきます!

ニュースの概要

早速記事のポイントですが、以下3点です

・米ラスベガス・サンズが日本IRへの進出を断念

・断念の一番の理由は、契約期間の短さによる投資回収リスク

・同社の撤退を含め世界の大手カジノ事業者の日本カジノへの関心は低下

記事にも書いてありますが、事業ライセンス期間がグローバルスタンダードではなく投資リスクが高い点及び日本の地価や人件費は高く、銀行は建設費の半分超の融資に消極的だった点が主な撤退要因のようです。ラスベガスサンズ社は業界の中ではいわゆる「マーケットリーダー」的な位置づけとして、世界の様々なカジノ運営権入札では常に競合企業の中で最高額に近い応札を行う企業の一つとして知られています。その撤退宣言は1事業者の撤退として片づけていいのかはなんともいえません。

Las Vegas Sandsの事業構造

大事な点はチャートでまとめさせていただきましたので参考にしてください!ソクラテスの観点を何点か付け加えさせていただきますと、BudgetホテルですとNOIマージン(ほぼEBITDAマージンと同義でいったん考えてください)8割とかいきますが、いわゆるリゾート型ホテルですと、サービス・人件費等がかさなってなんやかんや25%~30%強になります。このことを踏まえますと、EBITDAマージンで4割程出している同社及び統合型IRの収益率は高い印象です(おそらく見ていただけますように高収益率のカジノ比率が高いからだと思いますが)。ここにさらにソフトコンテンツで差別化できればさらに収益性を引き上げる余地はあると思います。

ラスベガスサンズ地域別事業構造(2019年):マカオが全体の6割強

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外円は売上、内円はEBITDA(会社資料より)

Las Vegas Sands運営ホテル別収益:マニア向けです

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外円は売上、内円はEBITDA(会社資料より)

ビジネスモデル別収益構造:ざっくりカジノが全体の7割程度

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ソクラテスの戯言

とにかく残念ですね...統合型リゾートの投資に関しては直接的には素人ですが、やはり不動産・投資・エンタメに関わっていたソクラテスから言わせてもらいますと、

エンタメの観点:日本は映像技術といったハードの側面からもアニメといったソフトの側面からも統合型リゾートとのシナジーが高いです。それだけにグローバル展開する同社の日本進出は”日本型の統合型リゾートモデル”を新しく作り上げる機会にもなりえただけではなく、こうした日本のアセットの収益化を拡大する機会にもなりえたと思っています。

投資の観点:とにかく統合型リゾートというものは多額の資金とノウハウを要するもので、日本単独での開発はどうしても難しく、一流の統合型リゾートを作り上げるにはサンズのような大型プレイヤーの加入が必要不可欠であるということです。

不動産の観点:元々低金利という外部環境に加えて不動産会社の財務構造(レバレッジ高め)+各事業者の事業類似性から不動産業界の投資リターンは投資家の観点から厳しいものになっています。統合型リゾートは従来の不動産価値にエンターテインメント性という新たな付加価値を融合させることでジリ貧な不動産業界を活気づかせるきっかけにもなりえたと思います。言い換えますと、ネット化が遅れている不動産業界に統合型リゾートは、”ネットとリアルのハブ”という形で新しい不動産の形を提唱してくれる可能性があったと思っています。

技術・コンテンツ等日本が得意なものは日本でやって、資金力・スケール化といった外国資本が得意なものは任せればよかったものの、結局は様々なステークホルダーの特性と思惑の把握及びそれらを統合する仕組みづくりと制度化をする力が日本に足りなかったというのがソクラテスの率直な意見です。

もちろん当事者からすれば外野にはわからない”大人の事情”なるものが多々あったのだとは思いますが、長い海外生活と日本生活で両方の良さを知り、日本とエンタメが大好きないち個人としてはなんとか形にしてほしかったということです!

本日も最後までお読みいただきありがとうございました!好き勝手書かせていただきましたが、何かしらの形で皆さんの気づきに繋がれば幸いです。皆さんのご意見・感想・質問お待ちしております!!

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