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小学校という世界。

3月が終わろうとしている。もうすぐ新年度。

4月になると、長男は小学校に通う。

家族で「もうすぐ入学式やね〜」という話をしていたら、ふいに父が私が小学校に入学したときのことを話しだした。

私が入学式から帰ってきた時、私はすごく怒っていて「もう学校なんか行かん!」と言い出したらしい。父は内心「コイツ初日からマジか。早すぎじゃね?」と思ったらしいが、私が行きたがらない理由を話さないため、次の日の朝、なんとか学校に行かせようとむりやり玄関に連れて行ったらしい。

すると私はあまりのストレスから嘔吐し、驚いた父はその日学校を休ませた。幸いすぐ日曜日になったのか、父は私をどこかへ連れ出し、どうして学校に行きたがらなかったのか理由を尋ねた。その時私がようやく父に話をすることができ、気持ちに整理がついたのか、翌日から学校へ行けるようになったそうだ。

私はそんなことがあったことは全く覚えていなかったのだが、その話を聞いて、おぼろげに思い出したのが、入学式の日の出来事だった。

それは、初めての教室で、担任の先生がみんなの名前を呼ぶ場面だった。一人ひとり名前が呼ばれる中、あろうことか先生は私の名前を正しく読めなかったのだ。確かあの時先生は「ひしたさん」と読んだのではなかったかと記憶している。

私はその時激しく憤った。学校の先生ともあろうに、人の名前を正しく読めないとはどういうことだ、と。確かに「日下」を初見で「くさか」とは読みにくいのはわかる。それでも事前に調べておくくらいできなかったのだろうか。その出来事が、一年生になったばかりの私を深く傷つけ、嘔吐するほどのストレスを与えていたのだ。

幸い、そのことがイジメに繋がるということはなかったのだが、その後私はイジメにあう経験もした。

一つはその「日下」という変わった名字が理由だ。「くさかは臭か〜」という言われ方で、よくイジられた。それは私にとって大きな苦痛だった。なにせ名字は変えることができないものだ。「なんでそんな名前の家に生まれたんや!」と親に当たり散らしたこともあった。

もう一つは、小学生の頃から、私は白髪があった。父もそうだったらしく、完全に遺伝の賜物なのだが、そのことは当初特に気にされる様子はなかった。だが、2年か3年の頃、国語の教科書に、言葉を逆さまから読む、というような言葉遊びをする内容の詩のようなものが掲載されていた。

作者も作品名も思い出せないが、その一文は今でも覚えている。

「とんがらしのはんたいはしらがんと」

という一文だった。

これがなんともマズかった。それ以来しばらく、私のあだ名は「しらがんと」になってしまったのだ。これも私を深く傷つけた。国語の教科書にそんな一文が載っていたばっかりにいじめられるなんて、不条理にもほどがある。そんな文章を載せた国語の教科書を激しく恨んだ。

当時は本当につらい日々だった。学校が大嫌いだった。それでも行かなくてはいけないと、毎日気持ちを奮い立たせていいっていた。一応負けん気もそこそこある人間だったため、そうやってイジってくる奴らに抵抗もしたが、それでおさまるはずもなく、かえって面白がられてイジりは激しくなる。

親に相談しても「そうやって怒るからからかわれるんや」と言われるばかり。しかし、名前のことにしても体質のことにしても、私は何一つ悪くない。そんなことで日々からかわれて、怒るなというのは、無理な話だ。

幸い、5年生の時の先生がとてもいい先生で、そうやっていじめられている私の姿を見つけてくれ「名前のこと、体のこと、本人がどう頑張っても、どうにもできないことでいじめるのは許さん!」と、同級生を厳しく叱り飛ばし、常に私の味方をしてくれたことがきっかけで、いじめはある程度おさまった。しかし、それまでは本当に学校というものが嫌いだった。

それと同じ小学校に、これから長男は通わなければならない。親として、小学校に入学するというのは子どもの成長であり、とても喜ばしいことだ。しかし一方、自分がそういうつらい時代を経験した小学校でもあるから、大丈夫なんだろうかという心配は大きい。

長男は私と違う人間だし、保育園では同級生とうまくやっていたようでもある。時代も違うし、幸い若白髪が遺伝している様子もない。それでも、やはり息子のことを心配せずにはおれない。

これから始まる6年間。子どもにとっては長い長い6年だ。そんな中で、いろんなことに出会うだろう。友だちと喧嘩をすることもあるだろうし、人間関係が一筋縄でいかないこともあるかもしれない。

学校だけが全てではないし、つらい時には無理に学校に行かなくてもいいと思う。

けれど、親として思うことはただ一つ。

私と同じようなつらい思いをせずに大切な6年間を過ごしてくれたら。

そのことだけだ。



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