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ガリア戦記をラテン語で読もう!

またぞろ古文漢文役に立つとか立たないとかSNSで繰り返されている。

特に読みたいものもないのに古文や漢文を学んでどうするのかと思うが、それらを学ぶことで現代日本語のセンスが良くなるという効用はあるだろう。

だが効用があるからといって、義務教育でやるべきとは即座には言えないだろう。

もし古文や漢文を義務教育で学ばなくてはならないなら、ラテン語や古典ギリシャ語も学習するべきだ。

ラテン語や古典ギリシャ語を学ぶと英語の理解が格段に上がる。英検準一級から一級に上がるくらいの違いはあるだろう。英語は学校で学ぶ科目のうちでも特に有用性が高いことを考慮すれば、ラテン語や古典ギリシャ語を学習する価値は極めて高いというほかない。

さらには現代のヨーロッパ言語がイージーモードになるのも間違いない。それを私は先日ドイツ語で体感した。

なのでとりあえずラテン語を勉強しよう


ところで、こないだガリア戦記第1巻ようやく読み終わったのだ。めちゃ時間かかった。

けっして初心者向けではないガリア戦記が、ラテン語学習者の定番である理由はいくつかある。まず各国語での翻訳、注釈が充実していることである。また読み物として普通に面白いのも大事だ。

文法的には、カエサル自身も含めて、ほぼ三人称だけなので、動詞の活用は三人称単数と複数だけわかっていればいい。しかし時制は未来形以外は、接続法も含めてほぼ全部頻出するので、じつはかなり難しい。またラテン語お得意の、独立奪格、分詞構文が飛び交いまくるから、とても勉強になる(白目)

まあでもなんとかなるから、ある程度文法をマスターしたら挑戦してみよう。

まずはラテン語さんもおすすめしていた遠山先生の対訳を紹介する。

これ悪くはないけど、注釈がいささか不親切。大学の授業で使う前提なのだろう。

わたしが超絶おすすめしたいのは山下太郎先生のやつだ。

完全に品詞分解して日本語で解説してあるから、初心者でも安心。しかもKindle Unlimitedだ。

唯一の難点は54節中の30節までしかないことだ。。。まあ30節でやめてもいいのだが、どうせなら1巻の最後まで読みたいよね。

そうすると英語の教材を探すことになるので、ここからは英検2級以上が条件になる。

まず定番はPerseus Digital Libraryだ。

品詞分解してあって、単語をクリックすると辞書に飛べるようになっている。端的にいって最高である。

ただし間違いも多い。私でもわかるくらいの間違いが散見されるので、じっさい相当数の誤りがあると想像される。まあ無料なので文句を言ってはいけないね。

Perseusの使い方はこちらの動画を参照してね。

しかしPerseusはまじ便利だ。これがない時代の人たちがどうやって、ラテン語やギリシャ語を読んでいたのかもはや謎である。

でもまあ間違いが多いし、また長音記号がないので初心者だと厳しいかもしれない。

どうしたものかと思っていたら、Twitterで誰かがこれを紹介していた。

英語が読めるならこれが一番良い。完全に品詞分解してあって、行間に英訳が書いてある。しかも無料。ありていに言って神である。

ではそういうわけで早速やってみよう。

ガリア戦記の有名な書き出しである。

Gallia est omnis dīvīsa in partēs trēs, quārum ūnam incolunt Belgae, aliam Aquītānī, tertiam quī ipsōrum linguā Celtae, nostrā Gallī appellantur. 

Taro Yamashita. Gallic War book1: Parsed Caesar (Japanese Edition) (Kindle の位置No.31-32). Kindle 版.

Galliaはガリアだ。固有名詞は適当に訳せばOK

estは英語のisだ。Be動詞にあたるsumの活用はまっさきに覚えよう

omnisは英語のomni、つまり全部だ。

divisaは英語のdivideの完了分詞だ。
前置詞inは英語のin, into, toなどである。対格も奪格もとりうるが、細かいことはいったんよろしい
つまりdivided intoだ。

partesはpart、tresはthreeだ。それぞれ複数対格だが細かいことはいったん無視して、three partsと理解すればよい。

quārumは関係代名詞だ。関係代名詞も格変化するのがめんどいが、ārumとかōrumで終わってたら複数属格である。複数なので先行詞は女性名詞複数のpartesである。

unamは一である。Unoってゲームを思い出そう。amで終わっていると女性単数対格であることが多い。だからpartsを受けていると当たりをつけることができる。つまり一つの部分だ。

incoluntはincolo(住む)の三人称複数現在直接法能動態である。三人称単数と複数の現在形直接法は能動態も受動態も覚えること。

Belagaeはなんかベルギーっぽいな。

aliamはothetとかanotherとかいう意味の代名詞的形容詞であるaliusだ。amで終わっているから女性単数対格だろう。unamと同じくpartを受けてるっぽいから2つ目の部分だろう。なのでincoluntが省略されてるっぽい。

Aquītānīは固有名詞。

tertiamは英語のtertiaryつまり3だ。3つ目の部分てことだろう。またしてもincoluntが省略されてるらしい。

quīは関係代名詞。ラテン語のめんどうなところは、関係代名詞に先行詞が勝手に吸収されがちなことだが、これもそのパターン。英語だとwhatだけなのにね。代名詞の類がīで終わっていたら、たいてい男性複数主格である。

ipsōrumは再帰代名詞。ōrumはたいてい男性複数属格。彼ら自身のと訳せる。
linguāはlanguage。āで終わる名詞は女性単数与格または奪格であることが多い。
よって彼ら自身の言語で、と訳せそう。奪格は厄介だが適当でOKなことも多い。実際ローマ人も便利だから適当に使ってたんだろう。

Celtaeは固有名詞。

nostrāは一人称複数の所有形容詞だが、āなので女性単数与格または奪格だ。おそらくlinguāが省略されている。

Gallīは固有名詞

appellanturは呼ばれるという意味である。turとかnturで終わる動詞は三人称単数、複数の受動態であることがほとんど。主語はquīだろう。
つまり彼ら自身の言語でCelataeと呼ばれ、我々(ローマ人)の言葉でGallīと呼ばれる、、、と訳せそう


ではつなげてみよう。

全ガリアは3つの部分に分けられる。1つにはベルガエ人が住み、2つ目にはアキターニー人が住み、3つ目には、彼ら自身の言語でケルタエ人、我々の言語でガルリー人と呼ばれる人々が住んでいる。

はい、できましたね!

こんなふうに、パズルのピースがぴったりハマるような快感がラテン語の醍醐味である。古典ギリシャ語は、小辞とかいうものがいっぱい文章の中に散らかってて、なかなかこう気持ち良くはいかないのである。

無駄のないラテン語は引き締まった文を作りやすく、格言や碑文に向いているのだ。

というわけで君も早速ガリア戦記を読んでみよう!

文法書のおすすめも、山下太郎先生だ。

羅和辞典はこれ一択。

紙でもいいが、Appleユーザーの皆さんには物書堂バージョンをおすすめしたい。

羅英辞典も持っているが、Perseus使えばいいのでおすすめはしない。

これらがあればあなたも快適なラテン語ライフを送れること間違いなしだ。


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