岡奈津子『賄賂のある暮らし :市場経済化後のカザフスタン』読んだ
旧ソ連シリーズどんどんいくぞ、というわけで、一部で評判の『賄賂のある暮らし』読んでみたのだ。
著者の岡奈津子さんは2年前に53歳で亡くなられていた。。。残念である。
本書はカザフスタンの簡単な紹介から始まって、本題の賄賂のお話になっていく。
もともと汚職は日常生活に蔓延していたが、ソ連解体後にその性質が変わっていったという。昔はコネが主力だったが、市場経済化の影響もあってカネ主体になったらしい。
お金がかかるのは嫌だが、カネを払えば後腐れがないというメリットもあるようだ。
こういうことが教育現場では点数や学位をお金で買えるし、良い就職先もお金で買える。都市部では兵役が免除されるし、田舎では軍隊に就職できる。
警察は微罪で呼び止めて袖の下を要求するし、お役所ではカネやコネを使えばたらい回しを回避できる。
袖の下を受け取ったら、一部を上司に上納しなければいけないし、その上司はその上長にその一部を納めなくてはいけない。
このように皆の生活が賄賂に依存してしまっている。もちろんそれは給料が安いからだが、こうやって統計的に捕捉されない所得があると、公式の給与には反映されないっていう。。。
賄賂が甚だしいのは病院であり、ゆすりに近い格好で袖の下を要求するけしからん医師もいるという。市場経済化により福祉の予算が削られて、また患者負担がゼロで、給料が安いのもあるだろうが、、、
市場経済化されてもサービスが十分に供給されず、また価格が機能してないと、こういうことがおこるのは人類の性なのだろうか。
なお医師にだって、医師になるまでにコネやカネを駆使するものがたくさんいるのは言うまでもない。
能力ではなくカネやコネで給与やポジションが決まるなら、有能な人材が登用されずやる気をなくすし、税収も上がらず公的資本形成が進まないっていう。
とはいえ、これを抜本的に改革するのは簡単ではなかろう。だから途上国はいつまでたっても先進国に追いつけない。東アジア諸国がキャッチアップできたのは奇跡的に思える。まあ東アジアは人口動態的に滅びそうなんだけど。
このような非効率は旧ソ連圏というか、途上国なら当たり前なのだろうが、日本がそういう国じゃなくて良かったなあと思うのであった。
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