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山本七平『一下級将校の見た帝国陸軍』読んだ

これだから日本は駄目なんだシリーズ。

山本七平氏が陸軍に入隊してからフィリピンを転戦し終戦を迎え収容所に入れられるまでを描いたもの。

兵站が崩壊し、物資も糧食も圧倒的に不足する中で戦わされたのが東南アジア、南太平洋での帝国陸軍だったわけだが、なぜそんな現場無視の作戦が続いたのか、、、

そもそも名誉とか形式主義が幅を利かせていたために正確な情報を上げるインセンティブに乏しかったみたい。あるいは正確な情報を上げたところで、なんとかしろと言われるだけだったようだ。

そんな無茶が通ったのは、気魄だけは超一流の参謀クラスが力を持ってしまっていた。満州事変の関東軍のような下剋上は太平洋戦争でも続いていたようだ。そもそも師団長クラスが、その下の参謀などの気魄に依存するところはあったようだ。

その気魄の典型は辻政信であり、著者は戦後に辻の演説を実際に見て、その魅力に納得したらしい。

また著者はルソン島の収容所で武藤章を近くで見る機会があり、その威厳に感じ入るものがあったようだ。その迫力は死者の側にいるものの特権と評している。つまり本気で死を覚悟したものの迫力ってことである。

武藤はその迫力でもって満州事変のときは下剋上をしていたわけだが、皮肉なことに太平洋戦争開戦時は軍務課長として、田中新一作戦部長らから突き上げられてタジタジであった模様。

それでも武藤はちゃんと処刑されたわけで、戦後ものうのうと生き延びた田中や辻よりよほどましだろう。

どういう神経をしてたらこんな本を出せるのかと思うが、そういう厚顔無恥と「気魄」は表裏一体なのだろう。



本書の山場はやはり、米軍のルソン島上陸後の地獄であって、読んでいて本当に胸が痛くなった。どう考えても戦争はめちゃくちゃ身体に悪い、コロナのような雑魚ウイルスとはわけがちがう。戦争反対、ダメゼッタイ。

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