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キャラから考察する【シン・エヴァ:||】「気持ち悪い」の先にあったものとは

!!シン・エヴァンゲリオン劇場版 :|| ネタバレを含みます

鑑賞2回目を終えて、いろいろなことが見えてきました。今回、登場人物に焦点を当てながら、シン・エヴァ:||の考察+感想をまとめます。

僕自身は、1995年のテレビ版放映時に14歳だった、結構いい歳の大人です。

シンジはエヴァのない世界を望みましたが、僕の生にループがあるならば、再びエヴァに出会う世界を望みます。決して触れられないのに、あの頃から彼らはずっと苦しさや寂しさを僕らと分かち合ってくれていたし、臆病な僕らの代わりに闘ってくれていました。自己と他者、現実と虚構を考える視点を与えてくれたし、時に逃げ込める暖かな場所でもありました。彼らは、僕らの現実の友人たちと同じように、大切な気持ちをくれました。

25年間、みんなよく頑張ったねと思います。そして彼らも僕らに対して、君は頑張ってきたよと言ってくれた気がしました。そういう彼らの生き様を通して、エヴァの物語を考えてみます。

①新劇場版シリーズ タイトルの意味

【序】シリーズの序章、テレビ版のリビルド(序破急)
【破】テレビ版の「破却」、話の拍子を変える(序破急)
【Q】話の加速(序破急)、ループ世界からの逸脱(ループの輪=Oからの逸脱=、)、後戻りできない世界線の選択と移行(YOU CAN (NOT) REDO.)
【:||】反復の終わり、エヴァに乗らない「新世紀」へ戻る、1度だけ時間を巻き戻して未来から過去へメッセージを伝える(THRICE UPON A TIME、『未来からのホットライン』)

完結編の反復記号については、僕は【1度だけ時間を巻き戻して未来から過去へメッセージを伝える】ということだと思っています。「THRICE UPON A TIME」が『未来からのホットライン』というタイムマシンに題材をとったSFのタイトルであることを考えると、しっくりきませんか。28歳になったトウジ達が14歳のままのシンジに伝えたことは、60歳になった庵野が時間を戻して、過去の自分や、当時テレビ版・旧劇を見ていた僕らに伝えたいことだったと思います。

②真希波・マリ・イラストリアス

真実(シンジ)の希望の波を連れてくる、母なる存在(マリア)(イラストリアス=母艦)

マリはとても重要な役割を担っていたんですね。テレビ・旧劇の円環を断ち切る役目であると同時に、突破して新たな世界線へ導く存在。ただの見た目は子供、中身はアラフィフではありませんでした笑 コンテ部分で描かれていたように、ゲンドウにユイを紹介したのがマリならば、2人を引き合わせた結果として運命を仕組まれた子供達に対して、責任を感じていたのかもしれません。

色のない線画の世界の渚に座るシンジにマリは「よかった間に合った」と言います。あの場面、シンジはエヴァのない新世紀をどんな風書き換えるか考えていたのだと思います。

マリが背負っていた使命のひとつは、シンジが世界を作るときに隣にいて世界のカタチを一緒に考える。シンジの知らない世界のカタチを教えて、選択肢は無限にあるのだと伝えることだったのではないでしょうか。その「新世紀創造」のタイミングに「間に合った」結果、マリがエヴァを消して海に落ちた瞬間、世界は色づき、青い海が広がる「新世紀」になったのだと思います。

新世紀、宇部新川駅で神木シンジの手を取ったのがマリだったことで、シンジ×マリと言う人もいますが、僕個人は母子のような関係にも見えました。犠牲になることで自分の子供達を守るのではなく、一緒に歩むことで子供たちを守り続ける母親像を担ったマリは本当に素敵な女性でした。ありがとう。

③式波・アスカ・ラングレー

▼旧劇で惣流アスカは死んだ
新劇の式波アスカは、レイと同じく造られた存在でした。苗字に「波」の字をつけたことの意味はここにあったんですね。オリジナルの惣流アスカは、おそらく旧劇で弐号機が槍に貫かれたときに死んだのだと思います。その後に描写された旧劇の「気持ち悪い」エンドは、当時からアスカとシンジだけが残った世界とされてきましたが、シン・を見ると別の解釈が浮かびます。

新劇が旧劇からループする世界だとして、式波の登場はオリジナルである惣流がループ世界に戻れなかったことを意味します。つまり世界が巻き戻る時、開始時点はシンジを最後まで拒絶した惣流が死んだ後に設定されたわけです。人々が溶けあっているLCLの海で唯一個体(自我)を獲得した惣流アスカはシンジを拒絶した疎ましい存在(首を絞めて殺そうとする)として旧劇に置きざりにされ、シンジが理想(好意を向けてくれる異性)とするアスカとして式波が造られました。

しかし、破でレイに自分の想いを譲った直後、アスカの乗った参号機は使徒に侵され、エントリープラグはダミーシステムの初号機にかみ砕かれます。

シン・で、式波はこの場面を指して、
「どうしてあの時私があんたを殴りたいほど怒ったか分かるか」とシンジに問います。

シンジ「助けることも殺すことも自分で決めなかったから。自分で責任を負いたくなかった」
式波「少しは大人になったってことね」

"シンジが望むアスカ"として造られた式波は、好意だけを自分に向ける存在でなければいけない。式波自身が黒波に語ったように、彼女達はそうなるぺく調整されていました。しかし第9使徒の侵入が、自分の選択次第で彼女に「嫌われるかもしれない」状況を作り出し、予定調和を崩しました。その結果、使徒を取込み「理想から外れた存在」となった式波は、それ以降シンジにとって「見たくない現実を突き付けてくる他者」となっていきます。それは、旧劇で自我をもってシンジの前に現れた「都合の悪い」惣流アスカの、あの先の続きの人生だったと思います。

シン・終盤、マイナス宇宙という虚構世界シンジがアスカの名を呼ぶと、旧劇ラストと全く同じ構図、赤い海の渚で横たわるアスカが出てきます。しかし、そのアスカは「成長」していました。女性らしく柔らかな曲線の身体、【赤い】プラグスーツは身体に合わなくなって破れている。

▼僕ら自身が抱える”エヴァの呪縛”
アスカの心と身体を”分けた”意味をすこし考えてみたいと思います。

シンジが理想とするアスカとは、エヴァファン(男性)が求めるアスカ像とイコールです。旧劇でアスカの裸体を見て自慰をするシンジは、自分の都合の良いように頭の中でアスカを改変して汚すファンの姿でもありました。アスカ自身の自我は終始無視され続けましたが、旧劇でアスカはシンジ以外で唯一自我を持ちます。それは、僕らの望んだアスカではない——そうして14歳のアスカは虚構の世界に留め置かれました。

そうして生まれた式波は、僕ら(シンジ)がそうあってほしいと願って生まれた存在です。そのためアスカ自身の自我(28歳)は無視され、僕ら(シンジ)が望む14歳の姿で僕らの前に存在することを強いられていました。このアスカの肉体と精神のちぐはぐさは作中でエヴァの呪縛と説明されますが、つまりは、現実世界の僕らがエヴァ世界のあるべき姿としてアスカに強いていた呪縛でもあったわけです。

その呪縛が解けた時、僕ら(シンジ)が見ないようにしてきた28歳のアスカが現れました。アスカとして生きた式波の心と惣流の身体がひとつになったとき、アスカはやっと自我を持った等身大の彼女自身として存在することを世界に許されました。そして虚構であるマイナス宇宙を抜け出し、自分が守りたい自分の居場所になるだろう場所へ旅立ちました。

▼思春期のおわり
こうして論理的に考察するまでもなく、シン・を見終わった直後の僕らの多くは「エヴァからの卒業式」「思春期の終わり」という感情を自然と抱きました。自分の手で変えた世界に14歳のまま取り残されたシンジは、大人になってもどこかで子供のままでいたいと思っている僕ら自身の写し鏡でした。僕らは、彼らが14歳のまま変わらずにいる世界が存在し続けることを望み、僕らがそうありたいと望んだ思春期を彼らは僕らの代わりに生き続けた。

けれど、庵野はエヴァ世界の時間を強制的に動かしました。そして、かつて僕らの友人であり初恋だった彼らを大人の姿にすることで、25年という時間がたったんだよという現実を僕らに示しました。アスカは、最期まで僕たちのために身体を張って闘ってくれたのだと思います。

アスカが自分自身の幸せをつかめる世界に行けただろうことを、とても嬉しく思います。ずっと僕らのアスカでいてくれてありがとう。誰かのアスカになれただろうあなたの世界が幸せで溢れていますように。

④葛城ミサト

ミサトさんをきちんと理解するためには、テレビ版・旧劇を見る必要があると思います。ミサトは、シンジの「親のような何か」なろうとしました。それはミサト自身が親と離れた寂しさを知っていたからです。けれど、親を知らないミサトは、シンジへの情を「大人のキス」として伝える事しかできませんでした。エヴァゲージの前でシンジが指摘したとおり、そして「まごろこを、君に」でミサト自身が独白したように、ミサトは保護者になり切れなかった他人でした。

NERV本部爆発の瞬間、倒れたミサトのそばに綾波レイが立ち、ミサトはループ世界に入りました。新劇でのミサトは、大人のキスではなく、シンジ自身の想いを尊重するという言葉で背中を押して彼をエヴァに乗せます。

「行きなさいシンジくん、誰かのためじゃない、あなた自身の願いのために」

旧劇とは違う、エヴァに乗ることを強制しない、あなたの好きなようにやりなさいと今度こそ「理解ある親のような言葉」を言えたミサトに待っていたのは、加持の死と彼が造った組織と、彼の子供の母親になった自分でした。

WILLEでのミサトは、バイザーを深くかぶり目を隠しています。それは、碇ゲンドウを彷彿とさせる姿でした。加持の死=ユイの死、WILLE=NERV、そしてひとりで親になった2人。シンジの問いに答えない、自分の想いをシンジに伝えない2人。ループから外れたQ世界は、シンジがミサトに「親」を望んだ結果として、彼が最も望まなかった形でミサトを存在させました。

しかし、少年加持リョウジの存在を知って、ミサトが望んだ世界が自分が望む世界と決定的に違っていたことを知ります。それでもなお、すべてが変わっていた14年後の世界でミサトだけがシンジの味方だという。自分の子供を捨ててまで、血のつながりもないシンジの行動の責任を取ろうと闘い続けるミサトの決意は、シンジにミサトの正しい姿を認識させました。母・姉・恋人でなくても、ミサトは「葛城ミサト」としてシンジを大切に思ってくれる存在なのだと。そのことにシンジが気づいた時、素顔のミサトが穏やかな顔でシンジの前に現れました。

「自分の起こした事は自分でケリをつける。ミサトさんの背負っているものを半分背負わせてほしい」と話す、かつて庇護する対象でしかなかったシンジの成長した姿は、ミサトに自分の本来の役割を自覚させた気がします。「親のような何か」になろうと試行錯誤したしたかつての自分はもう必要ない。「親として」自分はどうケリをつけるのか——。

「お母さん、あなたのためにこんなことしかしてあげられなかった、許してねリョウジ」

そういって、ミサトはシンジの物語から自分の物語へと還っていきました。

シンジの物語に最初から立ち会っていたミサトが、シンジの物語を抜ける。それは、エヴァ世界のループを終わらせるために必要不可欠な鍵だったと思います。そして、そのカギは新世界を創造するカシウスの槍としてシンジに届けられました。

かつて14歳だった僕らは、現実を生きる中でミサトさんの年齢を越えていきました。それでも、アスカと同じく、僕らはミサトさんに永遠に「僕らのミサトさん」でありつづけることを求めました。旧劇の頃から、僕らの知らないミサトさんが加持さんとの未来を描いていると気づいていたのに。ミサトさんのあり得た幸せを奪ったのは、シンジであり僕等だったような気がします。ずっと最後まで、絶対的な味方でいてくれてありがとう。別の世界で、加持さんとリョウジくんと幸せな家庭を築いてください。

⑤第壱中学校の同級生

第3新東京市の惨状と、シンジが来たシャツにトウジの名前があったことで、彼らがもう死んでいると考えていた人は多いですよね。僕もその一人だったのでシン・で28歳のトウジと目が合った時は心底驚きました。

▼鈴原トウジ
トウジは、4thとしてエヴァに乗り片足を失う世界から、序破でエヴァに乗らないで良い世界線へ移行しました。初号機のせいでケガをした彼の妹は退院し、ケンスケに「よかったな」と言われてシンジはトウジに対する引け目から解放されます。それがシンジの望んだトウジの本来あるべき姿でした。

僕等と同じくトウジが生きていたことに安堵した一方で、大人になった彼の姿はシンジに14年という時間を突き付けました。アスカ・レイの容姿が自分が知っている頃のままであったため、14年が経っていると言われても実感が薄かったシンジですが、トウジがヒカリと結婚して親になっていること現実を知ったことで、14年の時間経過を受け入れたのではないかと思います。

そしてトウジが「早く大人になりたかった」と言ったことで、シンジはトウジがもう自分とは違う世界を生きていることをはっきりと悟ります。大人になる、親になるということは「他人の人生を背負う覚悟を持つ」ということです。それが出来ている友人の姿は、子供のままではいられないという自覚をシンジにもたらしました。その結果、アスカに対して責任を持たなかった自分を認めることができたのだと思います。

▼相田ケンスケ
テレビ版のケンスケはエヴァに乗りたいと願いながら叶わなかった少年でし
た。真ん中になれなかった彼は冷静な観察者のまま成長し、シン・では何でも屋として加持さんを思わせる姿に成長しています。さて、アスカとケンスケの関係について考えてみましょう。

テレビ版のケンスケは、アスカを「自意識過剰女」と呼んで嫌っており、アスカは執着と言っていいほどに加持を慕っていました。しかし新劇では、ケンスケはアスカの同級生に過ぎず、アスカに至っては加持に興味すらないようでした。それが、Qでは加持のようになったケンスケのそばにアスカがいる。ケンスケは、加持さんの別の姿として描かれたのでしょうか。

ケンスケはミサトの私的な事情を知っていました。ミサトが少年リョウジを見守ってくれる人としてケンスケを選んだ理由はわかりません。ここからは推測ですが、父がNERV職員であるケンスケは、加持さんが犠牲となりサードインパクトを止めたことを知ります。WILLEが生き残った人々をKreditを通して支援する中でミサトとケンスケは再会し、事情を知っていると伝えたケンスケに、ミサトが少年加持の事を伝えたのではないでしょうか。

加持さんの生き様を知り、彼を目標としてケンスケが生きたとしても不思議ではないと思います。ケンスケは加持さんの焼き直しではなく、加持さんのような大人になりたいと思っていた僕らの成長した姿ではないかと思います。そうして、アスカはケンスケと出会いました。ケンスケ≒加持さんとして、ケンスケはアスカを子ども扱いしたり表層だけで判断せず、「アスカはアスカだ」と言って彼女の28歳の自我を受け入れました。

だから、ケンスケはアスカの居場所になったのだと僕は思います。

ケンスケ×アスカなのか、一時の安らぐ場所に過ぎないのかは、観る側に委ねられていると思います。直接的な描写を避けて想像の余地を残したところに、アスカガチ勢への庵野の優しさを感じました。ちなみに僕は、アスカの項でも言いましたが、ケンスケ結ばれる未来を祝福したいと思います。

⑥渚カヲル、"ニセ予告"と空白の14年

やり直される世界で何度でも会えるように生命の書にシンジの名前を記したカヲルは、シンジを幸せにするために犠牲になる運命を仕組まれた子供でした。月面に無数に浮かぶ棺は、シンジが望むやり直しの世界を受け入れてきたカヲルの亡骸と、これからも望まれるなら何度でも会いに行って幸せにするという覚悟でした。これまでずっとシンジを甘やかすだけの存在だと思っていたことを、とりあえず謝りたい気持ちです。

カヲルの真意を知って序破Qを見返せば、破のラスト、カシウスの槍で初号機を凍結しニアサーを止めたカヲルがつぶやいた「今度こそ君だけは幸せにしてみせるよ」とは、サードを起こすために大人達に利用されるシンジをループ世界から救い出して、シンジ自身が望む幸せを叶えるという決心だった気がします。

▼「渚司令」
シン・では渚司令が出てきましたが、これは破ラストの「ニセ予告」で描かれていたカヲルそのままの姿でした。これで「ニセ予告」が破→Qの空白の14年の断片映像だったことが分かります。

ニセ予告を、カヲルに焦点を当てて振り返ります。

<幽閉されるNERV関係者、ついに集う運命を仕組まれた子供達>
破のラスト、ゼーレにとっての「真のエヴァ」であるMark.06に乗ったカヲルが投げた槍によって、サードは「ニアサー」にとどまりました。このことから、破の一連の流れはゼーレの意に沿わないものだったことが伺えます。そのため、ゼーレによってゲンドウを含むNERV関係者は幽閉され、ゲンドウに代わってカヲルがNERVの「渚司令」となりました。加持はゼーレがゲンドウ監視のために置いた鈴でもあったため、幽閉されることなくカヲルと会話を交わしています。
渚司令の前に立つ4人のシルエット。僕はこれが、その後のカットで映る背丈の違うアヤナミシリーズの姿だと思います。このアヤナミシリーズは、シン・終盤でアダムスの器である4体のMark09~12に搭乗します。新劇で語られるセカンドインパクトが「胸にウルトラマンマークが描かれたアダムス4体」によって起こされたこと、そして、渚司令の前に「4つウルトラサインが浮かんでいる」ことからの着想です。

▼マリ・冬月・カヲル
このMark09~12は、シン・において冬月が用意したゲンドウの望みを抑える最終手段でした。それらを捕食することで最強のエヴァとなったマリの乗る8号機は、マイナス世界へシンジを運び、ラスト新世紀の渚までたどり着きました。それらにつながる4体にカヲルが早い時点で対面していたとして、これがもしカヲルの願うシンジの幸せを叶える保険だったとしたら———。ちなみに、予告ではアヤナミシリーズと同じ背景でマリが眼鏡を取っている姿があります。シン・で交わされた冬月とマリの会話から、アダムスの器4体の存在を知っていたこと、そしてそれが「アディショナルインパクト」を止めることに必要だと共通理解があったことが伺えますので、マリー冬月ーカヲルは密かにつながっていたのかもしれませんね。

Q(052:50~)でカヲルは言います。
「ただ、償えない罪はない。希望は残っているよ、どんな時にもね」
そうして、見つめた先にあったのは「加持の畑の跡」でした。シン・で2人が畑のあたりを歩いていたシーンがありました。イマジナリーによる虚構ではないかとも思いましたが、おそらく加持との場面は14年の間の実際のできごとだったのだと思います。本来シンジと対であるカヲルもまた、加持の生き方に想うところがあった故の行動なのだろうかと思うと、切ないものがあります。

次の世界では、自分の幸せを願える道を選んでほしいです。

⑦まとめ

今回は、テレビ版・旧劇通して主要な位置にいたキャラクターを通して、シン・:||を考察しました。シンジと綾波レイについては、エヴァの世界観の根底にある存在なので次項で触れたいと思います。

エヴァが「自己と他者」を巡る物語である以上、どのキャラクターも苦しい思いを重ねてきました。旧劇での、弐号機とアスカの最期や、アスカの首を絞めるシンジと「気持ち悪い」というアスカ、というラストは、それまで抱いていたエヴァ世界に対する温かな思いを一瞬で絶望に塗り替えました。それが、当時庵野が選んだ僕らに対する虚構の否定、現実への回帰を促す方法だったと理解してもなお、シンジとアスカをこうまで痛めつけるのかと、苦い気持ちは消えませんでした。

シン・は、1997年に本当は描きたかったけれど描き切れなかったシン(真)エヴァだと思っています。旧劇の続き、旧劇のラストのTRUE ANSWER。そこで、それぞれのキャラが自分なりの幸せを見つけられたことが本当に嬉しいです。あの赤い海が、青い海になったことが本当に嬉しかった。

みんなが、誰かの手を取れた世界を描いてくれて「ありがとう」。

<了>


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