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物を作り出す事の難しさ

物を作り出す時、必ず頭の中でアイデアが浮かんでから作る様にしている。私は陶芸で写実的な野菜や木の実を制作したことがある。その時に考えていたことや今の現状を書き残しておこうと思う。

まず、制作したいものがどの様なものなのかを脳内で設定してから、時々その事について考える。ハッと頭にアイデアが閃いた時、まずはクロッキー帳に描きアウトプットしてからそのアイデアが本当に価値があるものなのか見極める。

見極めるには一度そのアイデアから離れなければならない。そうすることで、自分のアイデアを客観的に見ることができる。閃いたアイデアが必ずしも素晴らしいものであるとは限らないからだ。

後日、再びクロッキー帳を開いた時にはなぜこのアイデアがが良いと思ったのか、自分で不思議に思うこともある。いいアイデアは時間を置いて見ても始め考えついた時のような、面白さが色褪せていない。

ボツになってしまったアイデアは捨てるのではなく、必ずとっておく様にしている。アイデアに行き詰まった時に、新しいアイデアの土台になってくれる部分があるからだ。

客観的に見ても面白いアイデアが出たところで、今度は制作方法について考える。これもアイデアと同じ様な考え方だが、アイデア出しよりは簡単だ。

アイデアは何もないところから生み出さなければならないが、制作方法は自分の中の経験と技術の中でできる範囲のことで作り方を考えることができる。時には思いがけないところにヒントが隠せれていることもある。

こういう時に、普段は当たり前で忘れてしまっている先人たちが築いてきた技術や知識を得られる事に心から感謝する。

頭の中でいくつかの制作方法が浮かんだところで実際に作品を制作してみる。頭の中で制作方法を幾らシュミレーションしたところで、現実との食い違いはよくある。その食い違いを実際に制作していくうえで埋めてゆく。

もし制作に行き詰まり制作したものが想定していたとおりに出来なかった場合はまた制作方法を考え直しながら制作する。手間が掛かる工程ではあるが、私はこの工程が好きだ。出来ない事をどうやってできるよにするのか、とてもワクワクする。何をしていてもどうすればうまくいくのか考えてしまう。

全ての工程を終えて窯で作品を焼く時に、胸がドキドキする。作品を焼く事になったら作品は私の手を離れ後は作品次第になってしまう。焼いている時に割れてしまうことがあるからだ。これはどうしようもない事で割れない様に気を付けてはいるが、防げない時もある。

作品が焼きあがって無事焼きあがるとその作品に対して愛情を感じる。一緒にここまで来てくれたことを嬉しく感じる。

作品には自分の心の一部が入っていて、私の心を何でもわかってくれている様な気がする。いつも私が作品を作っているのではなく、作品が頑張ってここまで来たのを私がお手伝いしている気持ちになる。

長々とここまで書いたのはいいが、私は今陶芸の作品に本腰を入れて制作できていない。

芸術系の高校に行った私は陶芸の面白さを知って、大学は陶芸をサークルで出来る場所を選んだ。なぜ専門的に陶芸を学ぶようにしなかったのかと言うと、私が作りたかったのは器ではなくオブジェだったから。

そして、私は陶芸だけを学ぶより苦手な平面(絵画、水彩画など)や立体(木彫、ガラス、金属など)を学ぶことで様々な方面から陶芸の作品について発想力を養えると思った。

大学に行ったのはいいが、大学生活の忙しさを理由に陶芸と向き合えなくなってしまった。私は大学にAO入試で入学した。作品の賞歴があったから受かったのだと思う。

賞歴にいつもプレッシャーを感じていた。賞歴があるにも関わらず、努力不足で平面が苦手な私に。AO入試で受験したため、大学に入る前から話したことのある教授が賞歴から私に対して期待しているのではないかと。

なによりも賞歴があるのにも関わらず、大学で成果をあげることが出来ない自分を認められないことからプレッシャーを感じていたのかもしれない。

結局、昨年のコロナ禍で変化したオンライン授業についていくことが出来ず、去年の前期で大学を辞めてしまった。大学を辞めて本格的に陶芸を始めようと思っていたが、今もなお真剣に取り組めていない。陶芸をしてみてもあの高校生の時に感じたようなワクワク感が続かない。目標がないからなのかもしれない。

高校生の時に制作した作品たちは元気にしているだろうか?高校にある作品はいつ私のもとに返ってくるのか心待ちにしている。でも反面返ってくのが怖い。私は高校を卒業する時に作品たちと約束した。

「あなた達とまた会う時には、あなた達を超える作品を作って胸を張って会えるよに頑張るからね」
と後ろ髪を引かれる思いで置いてきたことを今でもありありと鮮明に思い出せる。私の心の中で一人話しかけたことだけれども、反故したくないと思う。

昔のような気持ちで作れないかもしれない。うまくいかないかもしれない。自分に失望してしまうかもしれないが、気持を新たに、過去を吹っ切って自分と作品と向き合ってみようと思う。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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