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琵琶湖をゆく#10~マキノ~

 湖北の木陰を過ぎると湖西への街乗りが始まる。

 都会の、車に相当の注意を払いながらビル群を彷徨う街乗りではない。静かな道路を古くからある民家に囲まれながら進んでいる。道の左右に民家があるが広々とした庭をとおして琵琶湖は絶えず望める。きちきちに所狭しと敷き詰められた、太陽すら満足に確認できない都心とは何もかもが違う街乗りだ。

 マキノというカタカナで表記する街がある。日本初のカタカナ町名だ。昭和の時代に4つの村が合併するさいに揉めに揉め、観光地として栄えていた近くのマキノスキー場からマキノを頂戴したらしい。マキノ町にあるスキー場だからマキノスキー場ではない、マキノスキー場があるからマキノ町なのだ。

 マキノビーチという砂浜がこのあたりからずっと続いている。夏には海水浴、もとい、湖水浴場として多くの人が訪れる。水もきれいであるから、そして、淡水と言うことで体がべたつくこともなく楽しい水遊びができるだろう。

 僕も実家の田舎では夏になると海や川で遊んだものだ。夏休みの部活おわりなんかには
「川と海どっち行く?」
とよく友人たちと相談していた。海ならば防波堤から、川ならば岩場から飛び込んでいた。僕は川のあの身が締まるひんやりした感じが好きだった。

 たまにある漁港はどこも釣り禁止と柵がされていた。釣り人口の増加に伴いマナーの悪い下郎が増えたのは間違いない。親子そろって釣りに興じる我が家で父が釣り具を手入れする僕に
「昔は釣り具がぜんぜん手に入らなかったんだよな。今は中古なんかでもすぐ買える」
 なんていわれるが、今は釣り具が手に入っても釣りをする場所が減ってそれどころじゃない、と返している。

 湖西の適当な砂浜にテントを立てて、酒を1缶引っかけて寝袋にくるまった。
 波の音だけが響いていた。

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