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愛する者のために

 中学校の時に読んだチャールズ・ディケンズの「二都物語」に感銘を受けて何度も読み返した。
 同じころ見た映画、イングリッドバーグマン主演の「カサブランカ」と「誰がために鐘は鳴る」(ヘミングウエイ著)を見て感動した。バーグマンは美人だったし、ハンフリーボガードもゲイリークーパーもかっこよかった。
 この3つの共通点わかりますか。
これより先はネタバレになります。本を読む気がある人や、映画を見ようと思う人は見ない方がひょっとしたらいいかもしれません。

 答えは、どれも愛する女の為にわが身を犠牲にする、ということだ。カサブランカは少し違うかもしれないけど、概念は一緒だ。
 「二都物語」はフランス革命時、愛する女性のために、その夫の身代わりとなって、ギロチン台へむかう主人公が書かれ、「カサブランカ」も同じように愛する女の為に、その愛人と女をナチスの手から逃がしてやる。「誰がために鐘は鳴る」はスペイン内戦でのゲリラ部隊の男が惚れた女を逃がすために敵に向かい犠牲になる。有名なセリフがある。「キスする時、鼻は邪魔にならなかったのね」
 感受性の強かった中学生時代、これぞ、本当の愛の姿だと信じて疑わなかった。キリスト教に興味を抱いたのはそれからである。
 好きになった女性のためなら死んでもいい、そんな恋愛を夢見た。
 
 唐突だが、プーチンが戦争を起こした。そしてこともあろうに、新約聖書「ヨハネによる福音書」第15章13節から「人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない」という聖句を引用したという。
 ウクライナにいる親ロシア系住民の人たちをウクライナ人によるジェノサイドから解放するために軍事作戦を起こしたといっているのだ。
 いかさま野郎のファシスト、プーチンが聖書を引用するなどとは、恐れ多い。
 でもこのニュースを聞いて、昔の自分の恋愛観を思い出したのだから可笑しなものである。すっかり忘れていた。今では立派な浄土真宗の徒である。   
 でも愛する者のためなら己を犠牲にする覚悟以前に、自然と体がそういうふうに動くのではないかと思っている。

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