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【後編】こんぴらさんと、おうどんと。娘と2人、香川旅。

前編はコチラよりどうぞ。

昨日あんなに食べたのに、朝からモリモリ食べる母娘。胃袋の働きには尊敬の念を禁じ得ない。

雨が少しパラついているけど、こんぴらさんの石段上りには問題なさそう。JRで行くという選択肢もあったが、すっかり「ことでん」ファンになったわたしたちは、今日も「ことでん」に乗る。


ことでんマスコット、ほのぼの「ことちゃん」


グリーンの「ことでん」も愛くるしい


座席の足元から吹き出すヒーターの熱、窓からの牧歌的な眺め、ガタンガタンというリズミカルな列車の音。どれもとても心地よく、娘はうつらうつらしていた。高松駅から1時間で琴電琴平駅に到着。

四国随一のパワースポット、こんぴらさん。大きなツアーバスが何台も止まり、雨天にもかかわらず、外国の人も含めて多くの観光客がいた。

大学生のころにツアコンのバイトをしていたので、ツアーでこんぴらさんに来たことはある。でも当時は、お客様のアテンドや次の目的地の手配、ホテルやレストランへの連絡などで、落ち着いてお参りできなかった。

こんぴらさんが初めての娘とボチボチ歩き始める。参道にたくさんのお店があるけど、それは参拝後のお楽しみね。お店を眺めて、あれが可愛い、これもいいねと話しながら、石段を上る。

「一の坂」と呼ばれる急階段を上がると、大門がやっと見えてきた。

境内の入り口、大門


茅葺の立派な門構え、大門(おおもん)。ここが参拝のスタート地点。この場所で、石段365段目。


鳥居には「金刀比羅宮」の文字


飼養されている神馬にあいさつしたり、表書院にフラリと立ち寄ったりしながら、ポツポツ降る雨のなかを歩いていく。立ち寄る場所があるおかげで気が紛れ、石段のキツさもそれほど感じない。

と思っていたら、歩を進めるとさらに石段が!

ひぃーーー。まだこんなに上るんかい!



ちゃっちゃと歩いていく娘のあとをゼイゼイ言いながらついていく。若さよ、羨ましいぞ。途中で休憩し、ようやく石段を上りきって御本宮に到着。


御本宮 現在の社殿は1878年に改築されたもの


ここまでの石段は785段。

2人並んでお参りをする。偶然にも挙式の最中で、神主さんや巫女さんの姿が見え、太鼓の音も聞こえてきた。巫女さんの装束が濃い紫色。珍しい。

「せっかくここまで来たんやし、もうちょっと歩いて奥社にも行ってみよう!」ということになり、ここから更に坂道と583段の石段を歩き、奥社「厳魂(いづたま)神社」を目指す。

奥社に続く坂道に入った途端、あたりの空気が急に厳かになった。

雨のせいか、奥社に向かう人はまばら。葉を落とした木々や山の傾斜ばかりが続き、吹く風も一層ひんやり。声は木々の間を抜けて曇り空に吸い込まれていく。


うすい霧に包まれ、神秘的な様相


山道から下りてくる人も少なく、わたしたちの声以外は聞こえない。清らかな空気。山道の途中に鎮座する、朱塗りで茅葺屋根の社「白峰神社」の姿が見えてきた。朱色が美しい。


崇徳天皇(すとくてんのう)を祀った白峰神社


ここで923段目。奥社まではあと400段以上。

辿り着けるのか、自分?という弱音が芽生える。普段はPCの前にかじりついて仕事ばかりの生活。特にここ2ヶ月くらいは、ひとりブラック企業か?というくらい締切との戦いが続き、運動もすっかりサボっていた。体力と筋力にまったく自信がない。

「ほな、行こかー」

明るくそう言う娘には、石段はさほどこたえていない様子。若さよ、羨ましいぞ(2回目)。

坂道の傾斜はだんだんキツくなり、足どりが重くなる。娘は安定したペースで歩き、おしゃべりする余裕もある。突然「聞く専」になるわたし。

ひょえーーーーー、もう無理やで。

思わずそう言いたくなるタイミングで、奥社の参拝を終えて下りてくる人たちと行き交う。なかには、わたしよりも10も20も年上の方たちがいて勇気づけられた。

歩みを進めるにつれ、坂道は急になり、石段の高さも高くなる。

ちゃきちゃき歩いていた娘もさすがに口数が少なくなり、歩くことに集中している。歩けど歩けどなかなか着かない。途中の坂道で何度か休憩。暑くなり、上着を1枚脱ぐ。ひんやりした山の空気が気もちいい。

何人もの人の声が聞こえてきた。もうすぐ奥社に違いない。


奥社(厳魂神社)



1368段目を上り「厳魂(いづたま)神社」に到着。荘厳な雰囲気が辺り一帯にただよう。お社の横の断崖には、天狗と烏天狗の彫り物。天気がよければ瀬戸内海まで見渡せるらしいが、霧でなにも見えなかった。残念。

娘と一緒にお参りをし、清らかな空気を肺の奥までゆっくりと吸い込んだ。神聖な場所に身を置くと心がスッキリ整う。しばらく休憩してパワーチャージをしてから奥社をあとにする。

下り階段では、ひざがカクカク笑いっぱなし。達成感で頬は緩みっぱなし。

下山後は門前町をそぞろ歩き。お土産屋さんをのぞき、食べ歩きをする。

早速向かったのは、年間400万人が訪れるという「こんぴらうどん本店」。その建物は築百数十年で、登録文化財にも指定されている。なにを注文しようか迷っていると、お店の方が「しょうゆがおススメ!」と教えてくれたので、濃い口しょうゆベースの出汁に決定。


しょうゆうどん、しょうゆえび天


出汁が、長時間歩いたあとにはちょうどいい濃さ。北海道産の昆布、瀬戸内海のいりこ、さば節、かつお節のオリジナルブレンドの出汁。15時間かけて抽出しているんだとか。

うどんがもちもちで美味しい!かき揚げは厚みがあり、サクサク食べ応えがあった。あっという間にたいらげる母娘。

お腹が少しふくれたので再び参道めぐり。いろいろ目移りしながら、デザートはこれに決めた。


香川名物の「おいりソフト」


娘はきなこ味、わたしはしょうゆ味のソフトクリーム。しょうゆ味なんて面白い、どんな味だろうと思っていたら、あまじょっぱくて「みたらし団子」みたいな感じ。

まんまるでパステルカラーの粒々は「おいり」。めちゃくちゃ可愛い!

「おいり」は、西讃岐地方だけに伝わる伝統の嫁入り菓子のようだ。なるほど、それで幸せに満ち満ちたような柔らかい色合いなのね。ニッキの香りがほんのり漂う。口の中に入れたとたんにフワッと優しく溶ける、ほのかな甘さの幸せお菓子。

こんぴらさんを堪能し、帰りもことでんに乗って高松へ。

「さて、夕飯、なんにする?」
「そりゃー、うどんやろ」

ということで、再びうどん屋さんを目指して歩く母娘。

夕飯は、釜あげうどん「岡じま」へ。


高松駅から徒歩で数分


釜たまうどん(中)、かしわ天


釜あげうどんが自慢のお店なので、迷うことなく「釜たま」を注文。中細麺はふんわり&モチモチ食感。ツルツルしたのど越しが大変よい。キリッとした味わいの出汁も最高。近所にあったら毎日通いたい。


ざるうどん、スナップエンドウ天


娘は、春を感じるスナップエンドウの天ぷらを注文。揚げたて熱々の天ぷらと、キュッと冷えたざるうどん。旨くて喉が喜んでいたらしい。

店内は地元の人や観光客(外国のバックパッカーさんもいた)でにぎわっていた。ビジネス街にも近いし、お昼は激混みだろうなぁ。

「うどんの食べ歩きしたいねん」

娘のひとことから始まった香川旅、控えめに言っても最高だった。

コンビニの数よりもうどん店のほうが多いという、さすがの「うどん県」。今回行ったどのお店にもこだわりがあり、麺も出汁もそれぞれ違う。きっと、お店の数だけうどんの味わいも違うんだろう。

大阪に戻っても、きっとまた食べたくなる。

次回は島めぐりをしながらアートも堪能し、そしてまたうどんの食べ歩きをしよう。

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