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アラルの「昇格」についての簡単なレポート(改稿)

 ウズベキスタン3部リーグ所属のアラル。このチームにまつわる報道が、ウズベキスタンサッカー界にひそかなセンセーションを呼んでいる。

 きっかけはウズベキスタンサッカーの権威の一人であるアリシェル・ニキンバエフ氏のTelegramの投稿。内容は「アラルが来シーズン1部に昇格する」というもの。直後の12月11日、現地複数メディアが一斉に取り上げた(情報の確度はメディアによってまちまちで、確定事項のように扱うところもあれば、可能性レベルでとどめているところもあった)。2部はともかく、3部リーグなど滅多に伝えない大手スポーツメディアがこぞって報じたことからも、そのインパクトの大きさがうかがえる。

 今回は、この怪情報の詳細と事の顛末について簡単にまとめた。(不確定事項が多いので、適宜追記していきます)

簡単なチーム紹介

 カラカルパクスタン共和国はウズベキスタンの西部に位置する自治共和国。カラカルパク人が多く暮らしており、彼らの言語や文化はウズベク人よりもカザフ人に近い。共和国内にはアラル海があり、ソ連時代は世界第4位の大きさの湖として周辺の産業を担った。しかし同時に進められた無計画な灌漑により、流入河川のアムダリヤもろとも急速に縮小。砂漠化と塩害により地域社会を破壊し、現在消滅の危機に瀕する負の知名度の高い湖である。

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かつてのアラル海沿岸部は荒涼たる砂漠と化し、その中に朽ち果てた漁船が直立する異様な光景が広がる。このような「船の墓場」は、モイナク近郊のいたるところで見られ、漁業と食品加工業が栄えた往時の姿を忍ばせる。この50年間で、海岸線はモイナクから約80km後退したという。

 そのアラル海からも程近い、カラカルパクスタンの首都ヌクスに本拠地を置くアラル。説明の必要もないだろうが、チーム名はアラル海にちなんでいる。1976年に「アムダリヤ」の名で設立されて以来、長くソ連下部リーグに所属。ウズベキスタン独立後はカラカルパクスタンを代表するチームとして新生1部リーグに組み込まれ、パフタコル、ネフチ、ヌラフション(現ブハラ)などの強豪チームとしのぎを削った。しかし1994年に早々と2部降格。その後2000年に再び1部に戻ってくる(この時のチーム名は「トゥロン」)も2001年に再度降格、これを機にウズベキスタンサッカーの表舞台から姿を消す。零落する地域と歩みを揃えるように沈没(多かれ少なかれ財政難だろうが、ネットで収集できるチームの情報が非常に少なく、いくら探しても詳細は分からない)していき、チーム名も「NOZK」「ジャイフン」「アラル」と次々と変更。ついには3部リーグにまで転落した。

 なお、現在のチーム名も錯綜しており、国内リーグを統括するウズベキスタン・プロフェッショナルサッカーリーグ(以下「リーグ機構」)のサイト上やチームのTelegramアカウント名はカラカルパク語で「風」を意味する語を添えて"Aral Samali"となっているが、各消息筋の記事ではたんに"Aral / Orol"となっている。この辺りも情報の少なさを物語っているといえる。


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アラルのイレブン。ユニフォームはチームカラーと同じ爽やかな白と青。

報道の背景

◆今季のアラルの戦いぶり

 今シーズンのアラルの戦いぶりはどうか。アラルは現在下位リーグの2位、つまり全体7位(註:3部リーグはやや変則的な前後期の2期制。前期は本拠地の東西ごとに分かれた7チームずつの2リーグ制、後期は各リーグの上位チームと下位チームを集めた2リーグに分かれ総当たり。最終順位はリーグ全体で付けられる。なお後期リーグはズィラブロクとアンディジャンIIが不参加のため、上位リーグ・下位リーグともに6チームずつの全12チーム。)。総得点、総失点共に見るべきものはない。

 決して「アラルの圧倒的な実力が認められて……」というわけではない。それどころか、はっきり言って弱い。そんなチームが、どうして今回「1部昇格する」と報道される状況にまで至ったのか。

◆なぜ昇格できるのか?

 情報量が少ない中ではあるが、「国家を挙げた強力なサポートの結果」が大きな理由である。報道に先立つ10月、「カラカルパクスタン共和国におけるプロサッカーの発展、サッカークラブ『アラル』への支援、設備・技術基盤の強化ならびに人的資源活性化の方策について」というサッカー強化に関する行動計画が閣議決定された。シャフカト・ミルズィヨエフ大統領のカラカルパクスタン訪問の際に提案があったという。

 カラカルパクスタンは「サッカー空白地帯」である。当地出身の有名選手はほとんどおらず、例外は独立初期に活躍したナグメトゥッラ・クッティバエフ、ベドラク・アッラニヤゾフくらい。この状況を改善すべく地域のサッカーを大規模に整備をし直そうという計画のようだ。この一環として、計画に「ヌクスの1部昇格」が盛り込まれていたのだ。その内容を以下に抄訳する。

■カラカルパクスタンの行動内容
・ウズベキスタン国立文化芸術研究所ヌクス支部の使われていない建物をチームの拠点に転用
ホームスタジアムのトゥロン・スタジアムの改装
2021年より共和国の予算からアラルへ資金を供給
アラルと関係団体・個人に法律の範囲内で支援
・チームの移動用に約50人乗りの大型バス2台を提供
・州内の年齢別選抜チームの編成と練習拠点のサッカーセンターの整備
・アラルの拠点にメディカルセンターの設置と必要機器の供給を共和国保険省に指示
■ウズベキスタンサッカー協会の行動内容
アラルの2021年からの1部リーグ参加
・第1サッカー学校専用の人工芝グラウンドを整備
・2021年第1四半期までに、必要な機器の整備とチームスタッフの派遣
・2023年までにヌクス市とケゲイリ、エルリクカラ、アムダリヤ、モイナク、コングラト地区に青少年スポーツ学校を整備

 アラルのみならず、地域のサッカー全体を一から作り直すほどの「魔改造」である。この閣議決定の背景にあるのが、昨年12月に出された「ウズベキスタンサッカーの完全なる新レベル引き上げのための措置について」という大統領令。平たく言うと国が主導となってサッカーのレベルをどんどん上げていくぞ!という大号令のようなもので、今回の閣議決定もこれに沿ったもの。カラカルパクスタン共和国のサッカーを底上げするにあたって、地域のサッカーシーンの頂点に立つチームあるアラルをガッツリ強化せねばならないということである。

 ニキンバエフ氏の投稿の数日前には、ウズベキスタンサッカー連盟とリーグ機構の職員からなるワーキンググループがカラカルパクスタンを訪れ、閣僚評議会長と国会にあたるジョゴルク・ケネシュの議長と会っている。ここでも先の行動計画について話し合ったものと見られるが、このことが噂により現実味を与えたのかもしれない。

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ヌクスのトゥロン・スタジアム。9,000人収容の地方都市によくあるクラシックな装いのスタジアム。これがどう変わるのだろうか。

◆過去の例

 アラルの昇格は国家主導の強化策の一環なので、身も蓋もない言い方をすれば政治的決定である。FIFAは政治のサッカーへの不干渉を各組織やチームに求めており、これを基本的原則としている。どこからどう見ても政治干渉以外の何物でもないが、自治共和国の閣議で出た話題をリーグ機構で審議・承認され正式決定する、一応の「正規のプロセス」は踏んでいるという認識なのだろうか。

 もっとも、ウズベキスタンではこのような「スポーツの原則」に従わないチームの昇降格が非常に多く、2019年には2部4位、自動昇格圏外のスルホンがリーグ参加チーム増加(12→14)の恩恵を受け、2位のマシュアルを差し置いて特別措置で昇格。反対に2017年の1部リーグでは16チーム中15位だったネフチが残留し、財政難ながら7位の健闘したマシュアルが降格している。これらはすべて成績によるものではなく、リーグ機構と連盟の決定によるものである。

◆リーグ機構の反応

 この件の第一報を出したニキンバエフ氏は現在カタールサッカー協会技術委員長を務めており、ウズベキスタン人ではあるが「中の人」ではない。そのため彼の発言は公式発表ではない。言ってみれば「すっぱ抜いた」だけ。

 報道後、リーグ機構のディヨル・イモムフジャエフ共同代表はすぐさまコメントを出し、実際にアラルの昇格が以前よりリーグ機構内で話し合われ、検討されてきたテーマであることを明かした。同時に「FIFAはスポーツへの政治の干渉をよしとしない。財政基盤や環境が改善したからといって、すぐにアラルが昇格するとは限らない」「来季のリーグ戦参加チーム数も未定」と先行する国内の報道や憶測にクギを刺した。いくつかの噂話の「答え合わせ」にはなったが、肝心なポイントには言及しなかった。

続報:年明けからの急展開

◆「1部昇格」ではない?

 昨年12月の第一報からしばらく国内サッカー界にセンセーションを巻き起こしたアラルの昇格報道であるが、年末ごろにはすっかり続報が無くなり、すわ沙汰止みか、または「うやむやのうちに正式決定されていた」というお決まりのパターンか、という雰囲気が漂い始めていた。
 12月21日にはイモムフジャエフ共同代表が、自身のTelegramアカウントで「来シーズンの1部14チーム2部10チームでの開催が正式に決まった」と発表。しかしそれぞれのリーグ参加チームにまで触れることはなかった。

 そして年が明けた1月11日に突然事態が動く。2021年シーズンの2部リーグの展望をまとめた記事だが、そこに不思議な一節があった。

 2021年、プロリーグのチームによる1部昇格争いはこれまで以上に激しくなるだろう。今年は10チームがプロリーグに参加予定で、ネフチ、ブハラ、ディナモ、アラル、シュルタン、イスティクロルの各クラブがスーパーリーグに出場します。(中略)また、アレクサンドル・イェジョフ監督のホラズム、アリシェル・ショグロモフ監督のオクテパ、テムル・カパゼ監督のオリンピヤ、エルドル・サカエフ監督のヤンギイェルもプロリーグに所属している。
 2021年から、アラルは例外的にプロリーグに参加することになった。数日中にチームの年間予算が承認される予定だ。チームにはさらに注意が払われ、カラカルパクスタンのリーダーシップの下でサポートされる計画である。チームのタスクは1部昇格だ。

 何の前触れもなく、さも当然のごとく「アラルが2部リーグに参加する」といっている。単に筆者が情報を見落としていただけかもしれないが、アラルの来季所属リーグについてのサッカー連盟やリーグ機構からの公式な発表を見た記憶はない(アラルのTelegramアカウントにさえもアナウンスはない。いけしゃあしゃあと新年の挨拶をし、1月14日の祖国防衛者の日のお祝いで更新は止まっている。ふざけている)。確実なのは、前述の「1部14チーム、2部10チーム」という情報だけである。確かに2部参加チームに、昨季1部最下位のブハラや新たに発足する五輪代表チームオリンピヤの存在が明示されているため、確度はさておき情報の新鮮度は高い。

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アラルのもう一つのユニフォームは、全身青のシンプルなデザイン。胸には何も書いていない……。


◆やはり所属リーグは2部だった

 先ほどの記事を見て「情報入れてるんだったら言えよ……」と、サッカー連盟、リーグ機構、ニュースサイト、ジャーナリスト、アラル、カラカルパクスタン政府とあらゆる方面に憤慨し、情報をフォローするのも怠りかけていたころ、もう一つ気になるニュースが目に入った。

 アラルに関する久しぶりのニュースである。アラルの監督を務めるテムル・トゥルディエフ氏へのインタビュー記事であるが、冒頭部分にはっきりと所属リーグについて言及がある。
 昨年カラカルパクスタン政府首脳により出された計画が知れ渡ると、多くの人はアラルの1部昇格を予想した。そしてセンセーショナルなニュースがしばらく続いた後に明らかになったこととして、次のように紹介している。

チームは2021年シーズンをスーパーリーグではなく、プロリーグで過ごすことになった。

 相変わらず明確な情報源が明示されてはいないが、ここまで断言されてしまったら、もうほぼ「確定」と判断してもいいだろう。アラルは昇格こそすれ、来シーズンの所属は「プロリーグ(2部リーグ)」である。12月の第一報から1か月少し、アラルの昇格問題はようやく結論が出たようだ。同時に、来シーズンの1部、2部リーグの参加チームが以下の通り確定した。

・1部リーグ
パフタコル、ナサフ、AGMK、ブニョドコル、コーカンド、ソグディアナ、メタルルグ、ナフバホル、ロコモティフ、マシュアル、キジルクム、スルホン、アンディジャン、トゥロン

・2部リーグ
ネフチ、ブハラ、ディナモ、アラル、シュルタン、イスティクロル、ホラズム、オクテパ、オリンピヤ、ヤンギイェル

現在のアラル:監督へのインタビューより

 国家のサッカー強化の旗印の下、サッカー連盟とリーグ機構のお墨付きを得、カラカルパクスタン直々の支援と計画に沿って近い将来のトップレベルを目指しめざましい発展を遂げる。その第一歩として、来シーズンは2部リーグに参入することになった……。誰の目にもアラルは前途洋々に見える。
 以下に、先ほどのトゥルディエフ監督のインタビューを抄訳する。いささか話題先行の感のあるアラルが一体どういうチームなのか。その実態は、なかなか衝撃的な姿だった。


 隠す必要はありません。チームはまだ年間予算の見積もりと明確な計画を立てていませんが、今週から選手を集めて新シーズンの準備を始めました。クラブハウスがまだないため、チームは主に地元出身選手で構成されています。彼らは自宅から練習に通っています。

 チームには28人の選手がいます。彼らのほとんどはアカデミー出身者です。今年も自前の育成組織出身の地元選手にフォーカスしていくでしょう。現在は2003-2004年生まれの選手がいます。このチームには才能ある若者が多くいます。たとえば昨シーズンは2002-03年生まれの選手が可能性を見せ、存在感を発揮しました。2003年生まれのある選手は、喜ばしいことにユース代表にも招集されました。私たちの目標は、今年も若手選手を発掘し、代表チームに送り届けることです。

 ご存知かもしれませんが、2020年は全くの無給で活動しました。郷土愛、忠誠心、献身性を見せたチームのすべてのメンバーに感謝しています。チームの役員が今年のリーグ戦開幕までに昨シーズンの債務を返済してくれるよう期待しています。ウズベキスタン・プロリーグからも警告状が来ました。債務問題はなるだけ早く解決せねばなりません。さもないと、リーグ機構によって、プロリーグ参戦が不許可になるでしょう。

 事実、私たちは現在チームについての閣議決定を待っているところです。チームに専任のスポンサーが不在で、共和国当局が単独でチームを運営するのは困難です。チームにはまだやらなければならないことがあります。身近な例だと、人工芝ピッチの整備です。何とかしないといけないので無理やり練習していますが、プロリーグの要求を満たしていません。ですのでグラウンドにももっと関心を持ってもらいたいと思っています。

 もちろんこんな状態で1年間無給で活動し、どうやって食っているのか疑問に思われるでしょう。正直に言うと、私はサッカースクールでも働いています。チームの経験豊富な選手たちもアルバイトで収入を得ているので、私たちは皆喜んでアラルで仕事をしています。しかし経営陣もこのことを理解して、今すぐでなくてもいいにせよ何とかして欲しいと思っています。いつまでもこの状況を続けることはできません。

 アラルには、イスラム・セイトナザロフ・ミイラス・カルリバエフ、ダミル・ニザノフ、ナウルズ・アリモフ、ラスル・ムサエフといった経験ある選手が現在も私たちと新シーズンに向けた準備を行っています。一方、経験豊富なフォワード、ナウルズ・ハイポフは姿を見ていないので、どうやら引退したようです。私が知る限り、彼はスポーツ学校のキャリアも終えたようです。

 コーチ陣では、アッボス・シャムシッディノフが私を補佐してくれています。また、選手兼任コーチのセイトナザロフもサポートしてくれています。

 先ほども話した通り、財政問題を解決しないことには、タシケントなどのより良い環境で新シーズンの準備をする計画すら立てられません。外国から選手を獲得し、チームを強化したいとも考えていますが、このような危機的な状況では他州から選手を呼ぶこともできません。まず、チームの拠点を作らねばなりません。バスもありません。この先これらすべてが少しずつ改善していけばと思っています。

 私は文句を言ったりはしません。サッカースクールではちゃんと給料をもらっています。サッカー協会はこの点はしっかりしてくれています。アラルもそのようになってくれるでしょう。

 いかがだろうか。華々しく復活が宣言されたアラルだが、現状は想像を絶するほど危機的なようだ。
 給与すら払えない絶望的な資金力、自前のスタジアムなし、チームの拠点なし、練習場なし、医療スタッフなし、バスなしという衝撃的なリソース不足、チームの大半は18歳にも満たないような地元選手(「アカデミー」とは言うものの、おそらく地元のスポーツ学校ということだろう)……。昨シーズン後半はアウェー戦への遠征すらままならなかったとの情報もある。
 こんな中で春から一段高いレベルのリーグに船を漕ぎ出そうとしている。たとえカラカルパクスタン政府の手厚いサポートが実現し急ピッチで各条件面が整備されたとしても、時期的にどうしてもシーズンと平行する形になる。政府からどれくらいのお金が来るのか、何に投資するのか、いつ結果が出るのか……これらについての情報はない(補強の話もないので、まだ何も決まっていなのだろう)上に、チームはアマチュアに毛が生えた程度。これには「勇敢」と「無謀」をはき違えているのではないかと思わざるを得ない。

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上記の選手紹介にもあったミイラス・カルリバエフ(おそらく右)。

 ちなみにトゥルディエフ監督はアラルのOBらしく、2015年のニュースでは選手として登場している。この時もアラルの財政難に関する話題である。何とも気の毒な人だが、同時にアラルへの驚くべき忠誠心を持っているようだ(この時もサッカースクールでのアルバイトの話題が出ており、「アラルでのプレーは2番目」と発言している)。

 なお、冒頭のチーム紹介でも述べたとおり、アラルは2000年に「トゥロン」のチーム名で1部リーグを戦った。その時も連盟主導の特別措置による参戦で、そのうえ明確な資金源、チーム拠点、リザーブチーム、アカデミーを欠いていた。そして案の定、2部リーグ降格後に長い長い不振の時代が始まった。
 リーグ機構のイモムフジャエフ共同代表は昨年11月の時点でこのことに触れ、今度はカラカルパクスタンサッカーの設備、技術基盤を強化し人的資源を増やさねばならないと発言していた。事実、2018年から少しずつカラカルパクスタンにも少年の育成のための施設が整備されてきた。しかし、共和国内のサッカーの頂点に位置するアラルがこの体たらくではどうだろう。いくら優秀な少年が増えたって、一定の年齢になればナサフなりパフタコルなりブニョドコルに引き抜かれていくだけだ。

 センセーショナルなニュースが国内を沸かせたアラル。しかし彼らを取り巻く諸条件は改善された形跡も改善される兆しも全くもってない。むしろ何十年と放置され続け、ここ最近でさらに悪化しているような印象さえ受ける。この国のことだから、最悪「共和国政府からの資金も確保できませんでした」という可能性だって十分にある。カラカルパクスタンは決して豊かではないし、むしろ国内でも有数の「持たざる」地域で、サッカーなどに回せる金などない……となっても何ら不思議でないからだ。
 稚拙な計画により衰微し、ついには自らがもたらす地域への恩恵もろとも消滅してしまう。そんなところまでアラル海に似てほしくはないものである。しかし、残念ながら現状ではアラルが辿る結末はすでに見えている。歴史は繰り返すのだろうか?答えはおそらく"Awa"である。

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更新情報
2020年12月22日:記事立ち上げ
2021年1月31日:大幅に加筆修正
2021年2月1日:加筆修正


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