七月七日(土曜日)23時 居酒屋「ちょーちん」 今夜も居酒屋「ちょーちん」は多くの客で賑わっていた。七月になって初めての土曜日。暑くなり始めた気温に反応したように、店内には多くのサラリーマンや学生が集い、笑い声が響き合う陽気な場所になっていた。だがそんな賑やかで愉快な時間も、そこで働くスタッフにとっては過酷な時間だ。店内のお客の数とスタッフの汗の量は比例し、スタッフの余裕は逆比例しスタッフは一様にピリピリしていた。そして今日も、僕と瞳ねぇ、智樹先輩そして貴子さんは出勤して
六月三十日 (土曜日) 20時頃 居酒屋「ちょーちん」 今日は週末。私、柏木瞳は居酒屋でバイトをしている。週末はひっきりなしに客が入り、店内は大賑わいだ。 「瞳ちゃん、これ二番テーブルね」 オーダーを伝えると、厨房の人に料理を渡された。「ありがとうございます」と言いながら、ドリンクのオーダーも伝えなければいけないし、四番テーブルに呼ばれていることも思い出す。やることを頭の中で整理し段取りを組んでいると、厨房を出た途端に、 「二番テーブルですよね、僕が持っていきます
六月二十日(水曜日) 21時頃 居酒屋「ちょーちん」 「ありがとうございました」 森さんの声が店内に響くと、僕も続けて「ありがとうございました」と声を上げた。平日の「ちょーちん」は、週末とは違う穏やかな雰囲気だった。開店時は結構客がいたが、8時を過ぎたあたりで少しずつ客は減ってきた。今はまばらにお客さんが入っているだけだ。 平日の「ちょーちん」は、三人のアルバイトで回すことが多い。今日は僕と瞳ねぇ、そしてもう一人の女性スタッフの三名だった。 「修也君、最近調子どう
六月十六日(土曜日) 21時頃 居酒屋「ちょーちん」 「いらっしゃいませ!こんばんは!」 客が扉を開け店内に入った瞬間に、僕は大きな声をあげた。ここは駅前の居酒屋で、時刻は七時を過ぎた頃だ。入ってきた客の名前を確認した僕は、そのまま店内を案内する。店内は、間接照明の広がる少し落ち着いた雰囲気で、店に入ると左側にカウンター、右側に少人数用の個室がずらっと並んでいる。 客を席まで誘導する僕は、頭に赤いバンダナを巻き、背中に赤字の「ちょーちん」という文字の入った黒いTシャ