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アフリカのグランピング事例から学ぶ日本のグランピング施設の設計アイデア

アフリカのグランピングを参考に、国内グランピング事業へのアイディアを考察します。



グランピングの第一条件は、自然と一体になれること

アフリカのサファリで主流の宿泊形態であるグランピングは、ラグジュアリー化の一途を辿っています。世界中のお金持ちが高級グランピングを利用し、大自然との一体感を楽しみます。

そもそもなぜ普通のホテルではなく、グランピングなのでしょうか。それは、必要に迫られて作られてきました。

自然環境保護のため、国立公園内に建設する宿泊施設は可動式、つまり完全に撤収できるものでなければならないという原則です(国や地域によってルールは異なります)。

水道も電気(電線)もない荒野に建てますので、おのずとグランピングの周囲は、見渡す限りの大自然となります。

宿泊客は、この大自然への没入感を楽しみます。そのため、人工的な光や音はできるだけ排除される傾向にあります。

そのような宿泊施設はアフリカの観光産業の拡大ととともに急速にラグジュアリー化して、1泊30〜40万円という施設も珍しくなくなりました。

今や、グランピングは楽してキャンプ体験をするためのものではなく、高級リゾートに位置付けられています。


貴族の遊びから発展したグランピングにBBQはない

日本のグランピングでは、BBQが必須コンテンツのようにメニューに入っていますね。「BBQ楽しいよね!」というイメージをアピールする広告写真もよく目にします。

しかし、アフリカのグランピングではBBQはありません。グランピングは、確かに野営キャンプから発展しましたが、日本の野営キャンプからの発展とはまったく異なる歴史を持っています。

アフリカのグランピングは、サファリのためのものです。サファリとは、もともと植民地時代に欧米の貴族が家来達を引き連れて狩りを楽しんだのが起源と言われています。時代を経て、自然保護の考えが取り入れられ、ハンティングのために担がれていた鉄砲が望遠カメラに置き変わり、写真撮影をするためのサファリが一般大衆化しました。

そのような経緯があるためか、アフリカのグランピングでは、宿泊者は貴族のように「優雅なひととき」を楽しめるように設計されています。

貴族は自分で肉や野菜を焼きませんよね。ですから、食事は、高級レストランよろしく煌びやかな装飾が施されたダイニングテントで提供されます。食事の内容も、きちんと訓練されたシェフが腕によりをかけて作るコース料理です。

高級レストランさながらのダイニングテント


沈む夕陽を眺めながらワインを飲むサンダウナーは必須コンテンツ

BBQはないけれど、アフリカのグランピングでお決まりのコンテンツがあります。それは、ワインを飲みながら地平線に沈みゆく夕陽をのんびり眺めながらお酒を飲む「サンダウナー」と呼ばれるものです。

グランピングの敷地内には、サンダウナーに最も適した場所が用意されています。時には、車で数分〜10分程度移動して、岩の上や丘に登り、クッションや毛布などを敷いて、夕陽を楽しむ場合もあります。

その時に、かならず携帯されるのが、ミニバーセットです。ワイン、蒸留酒、ソフトドリンク、おつまみのナッツなどが、綺麗に磨かれたグラスとともに入っています。

これにも専属のスタッフが付いてきて、すべてお膳立てしてくれます。宿泊客は、気忙しくせずに、のんびりと優雅なひとときを楽しめばよいのです。


キャンプファイヤーで他の宿泊客との交流を楽しむ

サンダウナーに間に合わなかった!という場合は、敷地内の焚き火スペースでお酒を楽しみます。

焚き火は、かなり大きな炎が焚かれる場合が多いです。焚き火を取り囲むように椅子が並べられます。

サンダウナーは、基本的にプライベートで楽しむものですが、キャンプファイヤーは、他の宿泊客とおしゃべりを楽しむ機会にもなります。

今日は、どこどこで、こんなことをして、とても楽しかった、驚いたといた体験談を共有して、会話に花を咲かせます。純粋に一期一会の会話を楽しむのもよいですが、ここでの情報共有が翌日の過ごし方に生かされることもあります。

このような夕方から夕食前のコンテンツは、欧米人が好むものと言えるでしょう。夕食前のお酒とおしゃべりは、文化的に重要なものとされているようです。

反対に、日本人観光客といえば、翌日に備え、荷物の整理、その日に撮った写真の整理、夕食前のシャワー、翌日の準備などに忙しい傾向にあります。
真面目な日本人らしいといえば日本人らしいのですが、夕方の時間をゆったり楽しむという体験をしてみてもよいのではないかと思います。

本物のランプで演出された屋外ダイニングは非日常でロマンティック


他の宿泊客との交流とプライバシーのメリハリは超重要

他の宿泊客との交流は、バランスよく、ちょうどよいボリュームにするのがグランピングを楽しむコツです。

アフリカのグランピングでは、大自然を優雅に満喫するために、プライバシーが尊重されています。

例えば、隣のテントとの間隔は、普通の声のボリュームで話しても会話が聞こえない程度が基本です。外に出た時に、他の宿泊客がチラチラと見えるのもお互いに目障りです。

そのため、テント同士の距離は配慮されており、安いグランピングでも5〜6メートル、料金が高いグランピングほど、隣との距離が遠くなります。

客室テントの前に他のテントが建っているということはほぼありません。少なくても筆者は見たことがありません。

客室から見える景色が、グランピングの最大の価値といっても過言ではありません。


日本のグランピングは、ぎゅうぎゅう詰め

それに比べて、日本のグランピングは、料金、客層、立地、採算などの条件を十分考慮してのことだとは思いますが、隣同士のスペースが不十分な印象を受けます。

日本は森林が国土の6割を占め、島国ならではの海岸線が長い国です。土地の値段が高いのはネックではありますが、今後、富裕層を対象にした本格グランピングが建設されるのであれば、ぜひとも客室からの人工物のない眺めとプライバシーにこだわってほしいと切に願います。


トイレ、シャワールーム、洗面台にもセンスが求められる

日本のホテルや旅館は、温泉やトイレの清潔感にこだわるのに、なぜかグランピングとなると、共同トイレ・シャワーであることが多いです。

自前でテントを設営する野営キャンプから発展した経緯を考えれば自然なことだと思います。共同であっても、きちんとお金をかければ、宿泊全体の価値が上がると思います。たかがトイレ、されどトイレです。

富裕層向けグランピングは、バスルームこそセンスを表現する場所として重要視されています。

おしゃれな洗面ボウルと大きな鏡、青空を眺めながら開放的な気分で入れる青空シャワーと室内シャワー。水洗トイレはもちろん各客室テントについています。

バスルームでいかにリラックスできるかが、グランピングの価値といわんばかり、ここに力を入れる会社は多いように思います。天然エッセンシャルオイルが配合された生分解性の高い高級石鹸やシャンプーなどを揃えることも一般的です。

自然への没入感を大切に

日本のグランピング市場は、アウトドアを気軽に楽しみたい客層に向けてデザインされてきたように見えます。

残っている市場は、高級リゾートとしてのグランピングではないかと思います。

大自然は贅沢なコンテンツです。手付かずの大自然の中で、手を煩わせることなく美味しいものが食べられ、ゆったりとした自然との一体感を味わえるような時間の過ごし方は、お金を払う価値があるのではないでしょうか。

欧米の貴族の遊びから発展したアフリカのグランピングの特徴を挙げつつ、日本のグランピング設計の新たなデザインの提案をしてみました。

読んでくださって、ありがとうございました。

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