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安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(8/完結)

複製技術時代は継続する

 ヴァルター・ベンヤミンが「複製技術時代の芸術」を著したのは今から100年近く前のこと。「複製技術時代」は現在も継続中であり、当時にこの視点を持ち得たベンヤミンは、やはり「鋭い」としかいいようがありません。この論考の最終稿は1939年とのことで(※21)、翌年のピレネー山脈での死が惜しまれます。
 大阪府の「塩漬け」保管作品に対する「デジタルで見られるなら」発言への異議として、これまで、デジタル技術が持つ問題を考察してきました。作品現物のデジタルによる再現においてもデータの保管においても、問題は「複製」の次元にありました。「複製」は、現代において、芸術やあらゆるジャンルの創作に関わりがあります。
 この論考の締めくくりに、「複製技術時代の芸術」の大きなテーマであった写真について考察してみたいと思います。この論考から100年近く経た現在、高度情報化社会における写真の状況とは如何様でしょうか?

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