メンヘラホイホイ-55 もう1人の女性

銀座のホステスであるミサキはお袋さんがいる。
しかし、父親については3人。兄弟はミサキをミサキを含めて3人居るが、全員血が繋がっていないか、父親が違うからしい。

お袋さんは熟女キャバクラで働いていて、ホストに借金してまで入れ込み、たまにそのホストを自宅に連れてきて子供の前でイチャ付くらしい。

ミサキはお袋さんに金を数百万貸している。

俺の感覚からしたらさっさと縁を切ってしまえばいいと思うのだが、それは口にせず、ただミサキの愚痴を聞いている。
ミサキ自身もストレスを抱えていて、毎晩の様に俺に愚痴っていた。

予め言っておくが、俺はミサキの飲みに行こうと言う誘いは信じていない。所々、嘘が混じっていると俺の勘が語りかける。

言い方は悪いが、敵に回すとミサキ自身を被害者に仕立て上げ、背びれや尾ひれ。いや、もう10匹くらいのお魚さんとサカナくんまで付けて話の規模がゴジラよりバカデカくしている。

だから敵と見なされないように、俺はクラゲの様に話しを水に流してその水流に身を任せていた。


ミサキには話しをしなかったが、クラブハウスで知り合った千夏という子にLINEを聞かれてやり取りをしていた。千夏はミサキを良く思っていない理由は、ミサキが俺が居る部屋に毎回来るからだそうで、ミサキはミサキで女性は全員嫌いみたいだ。

千夏は俺の家からは500キロ程遠方に住んでいるが、月に数日は俺のうちに来たり、一緒に地方にツーリングしたりした。

千夏はとある爆弾を抱えていた。それはまた後ほど。


前回の初顔合わせから1週間が経過し、ミサキとアベちゃんと再び飲みに行った。

1軒目は普通の居酒屋。
そこでミサキに
「ほら、あーんして。」と飯を食べさせようとする。俺が拒むとミサキがイチイチ怒るから仕方なくそれを食べる。

それを見ていた自称ミサキの護衛であるアベちゃんは悪酔いし、ゲロ吐いて帰宅。

ミサキは行きつけのバーに俺を連れて行き、ミサキが距離を詰めてくる。

整形したその瞼を閉じて、キスをせがんで来るが・・・俺は全くその気が無い。


ミサキは泣き始めたが・・。
残念ながら俺は自営をやる様になり、色々な人から話しを聞く。ホステスだからと言って全てがそうでは無いが、彼女の場合は所謂マクラ系のホステスで、プライベートの噂も耳にしていた。

銀座のクラブ御用達の某企業の方
某アメリカのバイクメーカーディーラーの店長

きっとミサキは寂しがりなんだろう。

俺はたまに酒を飲んで、前回の様に12時間飲みっぱなしでもいいんだが、酒が別に好きな訳じゃない。自宅で酒を一滴も飲まない。しかし、ミサキは四六時中飲みたいそうだ。

どう生きるかは本人の勝手だ。

俺は齢22歳にしてミサキの所有する高級な物の全てが、彼女の精神までは満たせない事実を目の当たりにして何だかそれがすごく悲しかった。

それっきりミサキとは会っていない。
こっちから連絡した事は一度も無いから今後もそうだろう。


しばらくして千夏とは一緒に長野県にツーリングへ行った。

別に付き合ってはいなかったから同じベッドで寝た事はなかった。旅先のホテルは別々の部屋を取ったが、夜に千夏が散歩しようと連絡してきて、夜の松本城を散歩した。

部屋で飲もうと言われて酒をコンビニで買い、俺の部屋で飲む事になった。

そこで千夏に告白をされると同時に
その爆弾発言を聞いた。酔っているのか内容も過激ではあるが。



千夏「私は〇〇(俺の名前)と付き合いたい。イク顔が見たい。

でも、実は私・・結婚していて旦那は海外に単身赴任してるんだ。」


またか。また来た。
俺は既婚者にとってお手軽ハッピーセットかなんかなんだろうか。

俺は少し千夏の事を意識していたからとても辛かった。


俺「それってさ、俺がメインがいない時の代役じゃん。覚悟を持って結婚したんだろ。君は真面目な子なんだからもう俺と関わらない方がいい。その人との明るい未来をちゃんと見た方が幸せだと思うぞ。」

千夏「だって、帰ってくるの再来年なんだよ?辛いよ。」

俺「俺ともしセックスしたらもっと辛い目に遭うのは君だよ。例えるなら、もし付き合ったら俺はヘロインみたいなもんで、一時的に良くてもすごく害になる。」

部屋に帰りなと説得した。


翌朝、一緒に途中まで出かけたい。と言われて、それが最後になった。

無駄に高いあまり口に合わない蕎麦を一緒に食ったが、気分が悪いから実に不味い。会話も無い。

途中コンビニに寄って水分補給をした。千夏は高速の入り口まで見送りたいと言う。

俺「いや、ダメだ。この場を持ってお別れしよう。で、ちゃんと前を向こう。君には旦那さんがいる。俺は孤独に馴れてる。帰ったら旦那さんに電話してあげな。」


高速の入り口で俺はスピードを上げた。
ETCレーンを通過してすぐに側道に停車。

涙が二、三滴流れたのを拭って、狂った様に飛ばして帰宅した。


あー。俺はあの子の事が好きだったんだな・・。

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