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議決権行使助言会社とは?ISS社とかグラスルイス社とは? ー 個人投資家・個人株主の方向けに分かりやすく解説してみました

早いもので、9月も半ばを過ぎ、今年もあと3ヵ月と少しで終わりです。年明けには株主総会の準備に入る上場企業も多いと思います。私の場合、株主総会関係ですと、国内の機関投資家と同様に、議決権行使助言会社の議決権行使ポリシーの改定の方向性が気になるところです。ということで、本日は、個人投資家や個人株主の方向けに「議決権行使助言会社って何?」ということを説明したいと思います。

議決権権行使助言会社という用語は、普段目にすることは多くないと思いますが、株主総会シーズンになると日経新聞でも「株主提案の議案にISS社が賛成推奨した」等の記事を頻繁に目にすることと思います。けど、個人投資家・個人株主の方はよくわかっていない人も多いのではと思います。

議決権権行使助言会社とは、株主総会(定時株主総会・臨時株主総会の2つがあります) の際に機関投資家が投資先企業の総会議案に対して議決権を行使するに当たり、議案への賛否を推奨することを仕事としている「議決権行使の助言をする会社」です。大手ではISS社やグラスルイス社があります。あくまで賛否の推奨を行うのであり、企業の株式を保有して、自らが議決権行使をするわけではありません。ここが大事です。

具体例をあげます。ある上場企業の株主総会の取締役選任議案としてAさん、Bさんの2名が候補者になっているときに、議決権権行使助言会社が「Aさんの選任議案には賛成推奨」「Bさんの選任議案には反対推奨」というレポートを書きます(ちなみに、レポートは全部英文です)。勿論、議決権行使助言会社は好き・嫌いで賛否を判断しているわけではありません。議決権行使助言会社が毎年改定する「議決権行使ポリシー(日本企業版)」に詳細な基準が書かれており、これをベースに判断します。
そして、その企業の株式を保有する機関投資家がAさん、Bさんの取締役選任議案に議決権行使をする際に、議決権権行使助言会社の賛否推奨レポートを購入、その内容を見て議決権行使するのです。

機関投資家には、海外投資家と国内投資家の2つがありますが、議決権行使助言会社の賛否推奨結果を採用して議決権行使をするのは、海外の機関投資家です。何故でしょうか?

海外機関投資家は、日本株に投資しているといっても外国人であるため、日本企業の細かいところまで十分に理解する時間もなく、また日本企業の英文開示が十分でなく情報も足りないため、てっとり早く助言会社のレポートを使用したいことが理由にあります。また、そもそもとして、議決権行使助言会社の議決権行使ポリシーは日本企業のコーポレートガバナンスの実態を踏まえ、かつ機関投資家の意見なども踏まえて毎年アップデートされており、日本企業を判断するに適した内容と言えるわけです。従い、海外機関投資家がこれを利用しない手はないわけです。

一方、国内機関投資家は、日本企業のことを熟知しているので、各社独自の議決権行使基準を持ち、それに基づき議案への賛否を判断しており、議決権行使助言会社のレポートを使用していないといってよいかと思います。勿論、国内機関投資家も毎年議決権行使基準を改定しますので、改定に当たって議決権行使助言会社の議決権行使ポリシーは参考にしている場合もあるかも知れませんが。

ということですので、外国人株主比率の高い上場企業は、議決権行使助言会社の賛否推奨にかなり敏感になっています。だって、仮に外国人株主比率が40%ある企業が、取締役選任議案で経営トップに対して助言会社が反対推奨した場合、外国人株主の多くが反対行使をする可能性があり、経営トップの選任が否決されるリスクも出てくるということです。大きなリスクですね。