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2分でわかる  科学で解明ジャングルに実在した人喰い花

 1818年、トーマス・ラッフルズ率いるイギリスの調査隊が、インドネシアのジャングルの奥地で巨大な花を発見した。

 茎も葉も無く、直径1mほどの巨大な花だけが地面に咲いており、ぽっかり開けた大きな口からは死体に似た臭いが漂ってくる。これはジャングルに生息しているとされる人喰い花なのだろうか。

 なんとも恐ろしい話だが、この花の正体は、世界最大の花「ラフレシア」である。
ラフレシアは、寄生根という管をブドウ科植物の木の根に食い込ませ、養分を吸い取って成長している寄生植物だ。そのため、葉や茎を作る必要がなく、花を大きくするために全ての栄養を使うことができる。

 彼らは他の植物に寄生して暮らすことを決意した何百万年も昔に、葉緑体を作る遺伝子を自ら捨て去ったのだからその潔さが見て取れる。
生粋の寄生植物なのだ。

 植物にとって最も大切な器官は、種子を残すための花である。寄生される側はたまらないが、寄生戦略というのは非常に合理的なのだ。

この大きな花を咲かせているのは1週間ほど。
生息地も限られているため、「幻の花」とも言われている。

 他の植物に寄生すると楽に暮らしていけるのなら、なぜラフレシア以外の植物もそうしないのだろう。

 実は植物には人間と同じように、外部から入ってくる異物を認識して排除するシステムがある。
そのため、簡単に寄生することはできない。一方でラフレシアは非常にズル賢い方法で、このシステムを突破している。ラフレシアは宿主の遺伝子の一部を盗み、あたかも宿主の体の一部であるかのように見せかけるのだ。

このような別々の個体間で遺伝子が移動することを「遺伝子の水平伝播」という。
この仕組みを利用して、ラフレシアは快適な寄生生活を送っているのだ。

 人喰い花でないことが分かっていても、ジャングルの中でラフレシアに出会うと、異様さと大きさに恐怖を感じてしまうだろう。

ましてや人喰い花の存在が信じられていた時代に、ジャングルの奥地で地面に大きな口をぽっかりと開けた巨大な花が咲いていたら、人喰い花と考えてしまうのも無理はないかもしれない。


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