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神の使い【読切超短編小説】

神が、使いの蛇と共に、
村へ降り立った。


ところが彼、
というより神とは、
本来そういうものなのだが、

かなりの面倒くさがり屋。
村の仕事は蛇に任せっきり。
かなり久しぶりの訪問だった。


そのため村人達は、
神を見ても、神と認識できず、
蛇にばっかり挨拶した。

それもそのはず、
彼らが普段世話になっているのは、
蛇の方なのだ。


自分が無視されている感覚。
神あっての神の使いというもの。
誰のおかげで、
平和に暮らせていると思っているのだ。


彼、というより神とは、
本来そういうものなのだが、
すぐかっとなる性格。
使いの蛇を、はずみで殺してしまった。



今度は、自分が蛇の姿に変身して、
村中を回る。


けれどもなってみて初めて、
わかることもあるというもの。

屋根の修理から、子供の世話まで、
神本人には、頼みにくいことでも、
使いだと思って散々こき使われた。


それで最終的に村人達に感謝されるのは
結局いつも、使いの蛇でなく神だった。

働けども働けども、報われない感覚。
あいつ、よくやっていたもんだな…


もう手遅れであることに気づく。
この村は誰かが管理しなければならず、
使いの者に頼もうとしても、もういない。


新人も見込めない。
なにせ、あんなに忠実に働いてくれた、
使いの蛇を、
つまらない理由で殺してしまったのだ。


神の姿に戻ったところで、
誰が信じてくれるだろう。

「自称神」の、変な老人として、
扱われるだけだ。
証明してくれる使いはもういないのだ。



彼は、使いの蛇として一生を終えた。

全くこの世は絶妙なバランスで、
成り立っているのである。












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