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【Management Talk】「テラスカイをエンジニアパラダイスにしたい」クラウドコンピューティングで最先端を走るリーディングカンパニーが掲げる未来

株式会社テラスカイ 佐藤秀哉

米国アカデミー賞公認短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」は、2018年の創立20周年に合わせて、対談企画「Management Talk」を立ち上げました。映画祭代表の別所哲也が、様々な企業の経営者に、その経営理念やブランドについてお話を伺っていきます。
第24回のゲストは、株式会社テラスカイの創業者で代表取締役社長の佐藤秀哉さんです。2006年の創業以来、成長を続け、2018年には東証一部上場を果たした同社。進化するIT業界のなかで、大きく飛躍できた要因やそのブランディングについて、佐藤社長に語っていただきました。

株式会社テラスカイ

クラウドのテクノロジーが起こすであろうパラダイムシフトを予見し、2006年にクラウド専業のシステムインテグレーターとして創業。クラウド・インテグレーションのリーディングカンパニーとして、企業のクラウド化を支援し、クラウドCRMで世界No.1のシェアも持つセールスフォース・ドットコムのコンサルティングパートナーとして、トップクラスの導入実績を持つ。


流れるように自然に現在の立場に至った


別所:まずは、御社が手がけられているクラウドコンピューティング事業についてお伺いできればと思います。

佐藤:コンピュータの利用形態は、時代とともに変遷しています。少し前までは、クライアントサーバー型というシステムが主流でした。ユーザー様がご自身でサーバー側のハードウェアを買い、自社に設置して保守メンテナンスまで行うというモデルです。それが、現在では、クラウドコンピューティングに移行してきています。これは、サーバーを外部にあるデータセンターに格納して、それを複数の企業や個人で、インターネット経由で共有して使うという仕組みです。

別所:サーバーをシェアするわけですよね。メリットはどんなところにあるのでしょうか?

佐藤:クラウドコンピューティングを利用することで、まず、コストが下がります。そして、同時に、固定資産を無くすことができるというメリットがあります。たとえば、新規事業を始めて、それがうまくいかなかった場合、自社でハードウェアを購入していると、原価償却が必要なため、大きな足かせになってしまいます。けれども、クラウドコンピューティングならば、月単位や、極端な例で言えば秒単位での契約が可能なので、それを解除すれば済むわけです。あるいは、新規事業が予想以上にヒットして、システムを拡張しなければならないとなったときに、ボタン一つでそれが可能になる。いま、クラウドコンピューティングは普及期に入っており、アマゾン ウェブ サービスさんやマイクロソフトさん、セールスフォース・ドットコムさん、グーグルさんといった会社がしのぎを削っている状況です。私たちは、そうしたシステムを導入する企業の支援を行なっています。

別所:なるほど。佐藤社長は新卒で日本IBMに入社されて、以来、ずっとコンピュータとともに人生を歩んでこられているわけですよね。いま振り返ってみて、現在に至るまでのターニングポイントは、どんなところにあったとお考えですか?

佐藤:非常に難しい質問です(笑)。実は、私は、なにか大きく悩んで人生の転機を決めたという経験はないんです。流れるように自然にここにたどり着いたというのが正直なところでして(笑)。たとえば、日本IBMに新卒で入社した理由は、面接のタイミングが一番早くて、すぐに内定を出してもらえたからなんです。大学時代は、コンピュータの学科でしたから、その分野に進もうと漠然とは考えていたんですけど……結局、就活では、その一社しか受けませんでした。

別所:一社目ですんなりと就活を終えたと。

佐藤:ええ。当時の日本IBMは、様々な部署の社員が面接を担当していて、各自が、自分の部署の人間を採用するというシステムだったんです。私は理系でしたから、面接官は、かつて中央林間駅にあった研究所兼工場で、プリンターの研究や開発をしている部署の方でした。けれども私は、面接の場で、自分は、その部署ではなく、現場に出てシステムエンジニアとしてお客様と接したいという希望を伝えたんです。新潟の田舎者が都会に憧れて上京してきたのに、勤務先がそんな田舎なのは耐えられないと思ったので(笑)。今でこそ、中央林間駅は栄えていますけど、当時は本当に田舎だったんです。

別所:たしかにそうだったかもしれません。ただ、それでも、内定を貰えたわけですよね。

佐藤:ええ。でも、入社してみたら、なぜだかいきなり、営業に配属で(笑)。理系出身の営業はかなり少なかったですから驚きましたけど、とにかくやってみようと思って……それから約14年ずっと営業を続けました。

別所:すごい。そして、14年の営業の後、転機があったわけですよね。

佐藤:そうですね。おかげさまで、IBMではそれなりのポジションまでは上がれたんですけど、ある程度のところで、自分がこの会社で社長になるのは難しいなとわかってきまして……。いまではもうだいぶ変わりましたけど、あの頃のIBMでは、50歳がある意味での定年だったんです。つまり、50歳を越えたときに一定以上のポジションにいなければ、たとえ、それまで部長として100人位の部下を束ねていたとしても、世代交代ということで、部下ゼロの担当部長にされてしまうという。そういう先輩の姿をたくさん見ていたから、みんなだいたい40歳前後になると、そわそわしはじめるんですね(笑)。私も同じで、38歳になるときに、外の世界に活躍の場を求めようと考え、会社を辞めました。


人材さえ確保できれば売上は伸びていく


別所:その後はどうされたんですか?

佐藤:セールスフォース・ドットコムの日本法人の立ち上げに、営業責任者として参加しました。そこの社長だったIBMの先輩に誘ってもらったんです。立ち上げ後、セールスフォース・ドットコムは、あっという間に大きく成長して、現在では、ソフトウェアカンパニーとしては世界第4位にまでなっています。そして、まだまだ成長を続けている。私は、そこでいろいろ勉強させていただき、5年弱在籍したのち、起業しました。

別所:それが現在につながるわけですね。起業のきっかけはなんだったのでしょう?

佐藤:当時、セールスフォースの製品を、お客様が使いやすい形にカスタマイズする事業を展開している会社が少なかったんです。それで、今後きっとニーズが増えるだろうということで、この会社を作ったわけです。

別所:まさに、流れのなかで。起業されてからはいろいろなご苦労もあったのではないですか?

佐藤:よくご質問されるんですけど、それが、本当に全くないんです(笑)。私にとって最大の幸運は、セールスフォースが、毎年30%以上の成長を持続してくれていることです。常に仕事がたくさんあるので、人材さえ確保できれば売上が伸びていくという状態がずっと続いている。おそらくあと数年は同じ状況でしょう。そういう意味で、苦労していると言えば、人の採用だけです。

別所:すごいですね。採用については、海外からも人材を獲得していたりするんですか?

佐藤:現在、外国籍のメンバーは、10%程度です。代表的な存在として、ジェイソンがいますけど(笑)。

別所:厚切りジェイソンさん(笑)。そこはどういう接点だったのでしょう?

佐藤:彼はもともと、アメリカのGEヘルスケアで働くITエンジニアでした。奥様が日本人で、本人も日本が大好きだったので、ずっと日本で仕事をしたいと思っていたそうです。それで、あるとき、日本で働くことができるということで、アメリカのITベンチャーに転職をして、カントリーマネージャーとして東京に赴任してきました。私が、彼と知り合ったのはその頃です。ジェイソンの会社の商材が、セールスフォース・ドットコム関連のパッケージソフトウェアだったので、展示会などで会っていたんです。

別所:ええ。

佐藤:ただ、彼は一人で頑張っていたんですけど、その会社の製品は、残念ながら日本では売れなかった。それで、本社から、すでに商品が売れはじめていたシンガポールに転勤するよう命じられたんです。彼は、すごく悩んでいて……一緒にお酒を飲んだときに、「行きたくないんです」って言うから、「じゃあうちの会社にくれば」と誘ったわけです。

別所:芸能活動をはじめたのはその後ですよね?

佐藤:ずっと後です。頭のいい優秀なエンジニアとして勤務していました。そして、ある日突然、芸能人のジェイソンに(笑)。私たちが東証マザーズに上場したのは、2015年4月30日で、そのときに、当社のWebサイトのアクセス数が跳ね上がったんですけど、実は、ジェイソンが、『R-1ぐらんぷり』で決勝戦まで勝ち上がってブレイクしたのが同じ年の2月でした。だから、そのアクセス急増の要因が、私たちの上場の結果なのか、ジェイソンのブレイクのおかげなのか、まったく判断がつきませんでした(笑)。


お客様にとって「信頼されるパートナー」に


別所:相乗効果でしょう(笑)。さて、続いては、御社のブランディングについてもお話を伺いたいと思います。私たちは、映画祭で、「ブランデッドショート」という、動画マーケティングを特集する部門を運営しています。近年、シネマと広告のハイブリッドコンテンツを多くの企業が製作していますが、佐藤社長は、動画を使ったブランディング、あるいはブランディング自体について、どのようにお考えでしょうか?

佐藤:今課題になっている人材採用のためにも、企業ブランディングは非常に重要だと考えています。学生さんたちや転職を検討している方々に対して、当社の事業内容や魅力をどのように伝えていくか。担当者とともに知恵を出し合っているところですが、おっしゃる通り、映像を活用するというのは効果的な側面があるのかもしれません。ただ、現状はそこまで手が回っていない状況で……。

別所:人材採用のためにショートフィルムを製作している企業も数多くあります。

佐藤:そうですよね。そして、当社のブランディングのなかで、人材採用に次いで重要なのは、お客様にとって「信頼されるパートナー」になることを目指しているという私たちのビジョンを発信していくことです。当社のビジネスは、BtoBですから、付加価値の高い仕事を提供し続けていかなければ、高い利潤は得られません。だから、他者が真似できないような領域に進出していかなければない。そのためには、エンジニアがスキルを身につけるのは当然のことながら、私たちが、お客様に信頼していただき、良き相談相手になっていくことが必要だと考えています。

別所:お客さんのニーズを把握して、高付加価値の仕事をつくるということですね。

佐藤:ええ。そうすることで、利潤を高め、さらにそれを社員に還元していくことによって、人材が定着して……という良いスパイラルが生まれるわけです。ですから、会社の認知度というよりも、私たちが、お客様にとっての「信頼されるパートナー」であり、高付加価値のチャレンジンングなビジネススキームやシステムを構築できる会社であるという姿も発信していく必要があるのではないかと思っています。


新しいビジネスの種を探してどんどんトライしていきたい


別所:素晴らしいですね。そして、続いては、新しい元号がはじまるというこのタイミングで、佐藤社長がこれからの世の中をどんな風にご覧になっているのかについてもお伺いできればと思います。

佐藤:日本のマーケットにおいて、少子化の影響は間違いなく避けられません。そうした環境のなかで、日本が、現在の国力や経済力を維持していくためには、やはり生産性を上げるしかないでしょう。そのために必要不可欠なのがITです。いま「働き方改革」が叫ばれていますけど、そこからもう一歩進んで、人間の生産性を高めるためにITをどう活用するのかを真剣に考えていかなければならない。私たちとしても、そのお手伝いができるような仕組みを作っていきたいと思っています。

別所:AIやロボットについては、どのようにお考えですか?

佐藤:少し夢のない話になりますが、現在は、第3次AIブームが終わろうとしている状況です。それはつまり、現在のAIの限界が見えてきて、過度な期待がされなくなってきたということです。いまあるコンピュータの基盤の性能では、AIはこれ以上飛躍的には進化しません。要するに、いまのAIの未来に、アトムもドラえもんもいないんです。

別所:そうなんですね。

佐藤:ええ。その壁を乗り越えるために人類が持っている可能性として現在注目されているのが、量子コンピュータです。実用化までにはまだまだ時間がかかりますけど、量子コンピュータは、今あるコンピュータ・チップの約20万倍の性能が出ると言われています。IBMやグーグルといった企業もその分野に大きく投資をしていますし、私たちも取り組みを始めています。量子コンピュータの上でAIが動くとなると、もしかしたらアトムみたいな存在が生まれるかもしれません。残念ながら、私はそこまで生きていないでしょうけど。

別所:そうすると、僕も生きていないでしょうね(笑)。ただ、世の中のIT化はどんどん進んでいますよね。

佐藤:ええ。生活の中でのコンピュータの利用はここからさらに加速して、情報過疎地が世界から無くなっていくだろうと思います。ビジネスの世界においても、あらゆる業種業態がIT無しではビジネスを語れない状況になっていますよね。

別所:2020年からは、小学校でプログラミング教育が必修化されます。

佐藤:子どもの頃からITに慣れ親しむことは非常に重要だと思います。ただ、現場の先生方に話を聞くと、プログラミング教育の準備はまだまだ十分ではないようです。私は新潟出身で、上場企業の社長になって以来、地元で講演をする機会が増えました。そのなかで、昨年7月、上越市の公立小学校・中学校の校長先生会に呼ばれた時のことが、特に印象に残っています。その会は、校長先生が77名いらっしゃったんですけど、まずそもそも、そんなにたくさんの校長先生に一度にお会いできる機会はなかなかないでしょう(笑)。

別所:たしかに(笑)。

佐藤:やっぱり、50代中盤から60歳くらいの年齢層で、男性が多かったんですけど、せっかくなので、いくつか質問をしてみたんです。その一つが、スマホを持っているかどうか。結果は……3割です。

別所:えー! あとはガラケーですか?

佐藤:そうなんです。そういう世代の先生方が、子どもたちにITを教えるのはどう考えたって難しいでしょう。そして、もう一つ。77人のなかで、算数や数学といった理系出身の校長先生がどれだけいるかという質問もしました。

別所:これも少なそうですね。

佐藤:結果は2割です。理系の先生はシャイな人が多いから、あまり出世欲がないことが原因かもしれませんけど(笑)、将来、理系の人材が足りなくなるという統計が出ているなかで、教育現場がそういう状況では心もとないですよね。子どもたちの将来を心配するのであれば、今後間違いなく伸びていく分野の教育を強化すべきでしょう。だから、そのときは、かなり強く批判しました(笑)。

別所:たくさんの校長先生相手にすごい(笑)。

佐藤:ただ、言いっ放しでも申し訳ないので、私の会社が、ボランティアでITの出張授業をやります、と提案したんです。すると、昨年は4校から依頼がきまして、実際に授業を行いました。さらに、新潟の高校や専門学校の子どもたちが当社に見学にきてくれるようになりました。子どもたちや保護者、そして先生方にもITの魅力を伝える活動は強化して行っていくつもりです。

別所:将来そのなかから御社で働く子どもが出てくるかもしれません。地元にも大きく貢献されていますね。それでは、最後に、この会社のこれからのビジョンを教えてください。

佐藤:先ほど申しました通り、主力のクラウド事業は、私がいなくても数年間は伸び続けていくでしょう。また、その周辺事業も大きく広がりを見せてきています。そうしたなかで、私は、その次の成長エンジンを見つけることが、社長としての自分の仕事だと考えています。量子コンピュータも含めて、新しいビジネスの種を探して、どんどんトライしていきたいです。
そして、会社としては、「社会の役に立っている」「面白いことに取り組んでいる」「常に技術的にチャレンジしている」という姿勢を維持し続けていきたいです。また、当社は、社員の約8割がエンジニアですから、「テラスカイをエンジニアパラダイスにしたい」という願いも持っています。ブラック企業はだんだん減ってきているとは思いますけれど、当社は、ブラックでないだけではなくて、給料も満足できるし、仕事も最先端で、働く環境も心地よい、と社員に思ってもらえる会社でありたい。そして、それを世の中からも認知していただきたいと思っています。

別所:ありがとうございました。


(2019.2.26)


佐藤秀哉(株式会社テラスカイ 代表取締役社長)

1963年生まれ、新潟県妙高市出身。1987年、東京理科大学理工学部情報科学科卒業後、1987年日本アイ・ビー・エムに入社。2000年には年間最優秀営業部員に送られるセールス・オフィサー賞を受賞。2001年、セールスフォース・ドットコム日本法人の立ち上げに参画、執行役員営業統括本部長に就任。2006年3月にテラスカイ設立、代表取締役社長に就任。