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プロレスから学ぶ物語論〜現実と虚構の狭間の物語 10タッグマッチには「長編の物語」が全て詰まっている〜物語は二人いれば完結する?
プロレスの「最初の物語」 プロレスにおける「物語の始まり」とは、どこにあたるのか? 入門テストから練習生時代、デビューから海外武者修行と、シングルプレイヤーとしてのイベントは多々あるが、入門テスト合格後の展開としてはほとんど個人差はない。どちらかというと「物語が始まる前」のチュートリアル的な印象に近い。むしろ入門テストに不合格した人間が他団体や海外に渡航し、紆余曲折を経てデビューにこぎつけるまでの展開の方が「物語の始まり」にふさわしいが、個人的な体験に由来するところ
プロレスから学ぶ物語論〜現実と虚構の狭間の物語 08ユニット編成が変わる時「ストーリー」は動き出す〜物語のバリエーションはそれほど多くない。
プロレスの「ストーリー展開」 プロレスにおいて試合外で展開される「ストーリー」は大まかに分けて二種類ある。 一つはレスラー個人に属するもので「海外武者修行」や「凱旋帰国」、「キャラクター・ファイトスタイルの変更」がそれに当たる。これは#05、06である程度、説明したので今回は省く。 もう一つは所属する軍団(ユニット)の内外におけるいざこざや対立である。これにベビーフェイスとヒール、どちらの側のユニットに属しているかで更に細分化される。ベビーであれば「世代闘争」「ラ
プロレスから学ぶ物語論〜現実と虚構の狭間の物語 04プロレス実況は「フィクションの語り方」に似ている〜レスラーの情報をいかに無駄なく説明できるか。
「プロレス」を説明する難しさ プロレスの実況は「プロレス」を説明するための一つの表現方法である。 小説には小説の、まんがにはまんがの、映画には映画の観せ方や伝え方、表現方法があるように、プロレスを誰かに魅力的なものとして説明するために「プロレス実況」ほど適したものはない。そして数あるスポーツ実況の中でも、プロレスの実況は「フィクションの表現方法」と親和性が高い。 ほとんどのスポーツ実況ではスポーツを実況することに主眼が置かれ、あくまで選手の情報は副次的なものに過ぎ
プロレスから学ぶ物語論〜現実と虚構の狭間の物語 03「世界観」とはロープワークである〜「お約束」を理解することで物語に没入する。
「世界観」と「お約束」は同義 フィクションで「世界観」を指す場合、多少の解釈の違いはあれど、その単語を知っている者ならそれほど齟齬のない使い方になるだろう。プロレスにおいてもその使い方はそう変わらない。ただ「世界観」という語を用いないだけだ。それは実は呼び方が変わるだけで、どの分野でもエンターテイメントであれば多かれ少なかれ存在する考え方だ。 汎用性の高い例を用いるなら、「お笑い」の世界で言うところの「お約束」や「天丼」といった行為も名を変えた「世界観」の一種である
プロレスから学ぶ物語論〜現実と虚構の狭間の物語 02「キャラクター」はマスクマンが教えてくれる〜歴史を考えることで人物造形に深みが出る。
プロレスにおける「キャラクター」 #00でも少し触れたが、メキシコの「ルチャ・リブレ」というプロレスから「キャラクターとは何なのか」を学ぶことができる。だがその前に、プロレスにおける「キャラクター」とは何なのか、それを少し掘り下げていく。 そもそもフィクションにおける「キャラクター」と、プロレスのおける「キャラクター」に単語の使い方として大きな差はない。端的に言ってしまえば、プロレスにおける「キャラクター」とはレスラー個人の「特徴」や「個性」を指し示す。明確にフィク
プロレスから学ぶ物語論〜現実と虚構の狭間の物語 01ビッグマッチの後には必ず物語的な「引き」がある〜プロレスに「大団円」はない?
アメリカにおけるプロレスの「物語」 これは元々アメリカのプロレスで用いられている手法で、近年では日本のプロレスでも行われることが多いが、年間何百試合も行うプロレスでは一興行で盛り上がった後で「では次回(数ヶ月後)」というわけにはいかない。次の巡業先の地域、あるいは銘打たれたシリーズ興行(新日本で言うなら「G1クライマックス」や「1・4東京ドーム」、全日本なら「チャンピオンカーニバル」など)の宣伝、選手のピックアップ(チャンピオンに挑戦する次期挑戦者は誰になるか、とか)
プロレスから学ぶ物語論〜現実と虚構の狭間の物語 00プロレスはなぜ「善玉(ベビーフェイス)」と「悪役(ヒール)」に分かれているのか?
「善と悪」のように「正反対の立場」の方が「対立構造」を作りやすい、というのが最も簡単で最もわかりやすい説明になるのだが(個人的にも立場的にも嫌い合っている方が「戦う理由」になりやすい)、それだけでは不親切というか、不十分というか、物語論とは別にプロレスの「見せ方」の歴史にも関わってくる問題なので、もう少し丁寧に解説してみようと思う。 スポーツにおける「観戦」と「応援」 最近のプロレスにおける選手の立ち位置はユニット(派閥)ごとに区分けされている印象があり、応援スタイル