【エッセイ】空いた檻から出ない生き物
道を歩く。ぼんやりと空を見る。草木のにおいを嗅ぐ。踏切の音を聞く。
当たり前、普通。9割の人間はこれらに対してさしたる感情を持っていない。
だって当たり前だから。当たり前に悩む人間などいない。
では、これはどうだろう。
人の気持ち。誰かの発言。漠然としたナニかに対しての恐怖。気のせいか、あるいは霊か?
人は五感で知覚できないものに対しては極端に敏感であり、脆弱だ。
人はそれを心だとか、そういったものに形容しようとし、正確に認識しようとするが、到底理解というものには及ばない程度で終わりを迎える。
ではなぜ感情があるのか、なぜ悩む必要があるのか。感情に支配されている人間は、感情に支配されていることに気付かない。悩んでいる人間は次から次へと思考する。
複雑なのか?
いや、単純なのだ。人はみな、そうやって生きていくようにできている。
私はそのような単純なことを自覚していながら、空いた檻から出ることが出来ない。
怖がりな人間なのだ。
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