先日、通勤電車の中でサブスクでランダムに曲をかけてたら、ブッチャーズの「僕たちの疾走」が流れてきた。

完全に不意打ちというか、油断していた僕の心は、

ぐわんぐわん

と激しく揺さぶられた。

この懐かしい感覚に、やっぱブッチャーズは、他の音楽とは違う、というか、それはもはや僕にとって

人生

そのものなのだ

ということに改めて気がついた。

ちなみに、この曲はブッチャーズ後期の代表作「無題 NO ALBUM」に収録されている。

アルバムジャケットのアートワークはブッチャーズと同郷の北海道の画家、深井克美の遺作である。

遺作…。

そう、深井はこの作品を作成中に実母の目の前で飛び降り自殺したのだった。

とてもグロテスクなのに、見る者に美しいと思わせる独特の作風の画家だったが、この遺作はそれまでの作風とは異なり、カラフルで淡い色遣いに、なにか明るい希望のようなものすら感じる。

ブッチャーズの吉村秀樹はたまたま札幌の美術館で出会ったこの絵に一目惚れしてアルバムジャケットに採用した。

絵のタイトルは

ランナー。

そう

この「僕たちの疾走」は

同じく北の大地で、表現の世界にガチンコに向き合い走り続け、しかし、志半ばに力尽き、ゴール直前でリタイアした名もなき道産子ランナーへのブッチャーズからのレクイエム（鎮魂歌）だったのかもしれない。

うん、たとえ、やがて、

降り積もる雪でかき消されることが予め分かっていたとしても、

ブッチャーズがつなぎとめたいと思ったおもいを

そして、

あのときブッチャーズに何度も激しく揺さぶれられた

僕自身のおもいを

この命のある限り

つなぎとめ、つないでいきたい。

それこそがすなわち、僕にとっての

生きる

ことなのだ。

ブッチャーズがいなくなって10年目になる冬がもうすぐやってくる。