先日、ばあばから、可愛い孫のために、と大量の神戸ビーフが届いた。

でも、あいにく、そのかわいい孫はおなかの調子が悪くて結局、一枚も食べられず、そのほとんどは僕の胃袋に収まったことは彼女には内緒にしておこう。

そして、僕は膨れた自分のお腹をさすりながら、こんなことを考えていた。

「じいちゃん、ばあちゃんって、孫への愛情を食べ物で表現する生き物だよね。しかも大量の。」


そして、その流れで自然と社会人一年目のGW（ゴールデンウィーク)に起きたある出来事を思い出していた。

その年のGWは大学時代の友人と三人で、博多〜湯布院〜臼杵を車で旅行する計画を立てていた。

このとき、そう言えば、母方のじいちゃん、ばあちゃんがこの周辺の◯◯市に住んでいるな、と思い出した僕は、早速、ばあちゃんに電話して、友達と一緒にちょいと顔出すから、よろしく！と伝えた。

そして、その旅行の最終日。

約束どおり、僕らがじいちゃん、ばあちゃんの家を訪れると、居間のちゃぶ台の上には、一瞥してこんなの食べきれねーよと思うほどの大量のごちそうが並べられていた。

焼肉、うなぎ、寿司、お刺身、からあげ、天ぷら、チャーハン、ばあちゃん特製のやきもち、などなど。

「みんな、こんな田舎までわざわざ顔出してくれてありがとね〜」と一言言ってから、ばあちゃんは席を外した。

そして、この瞬間、うちのじいちゃん、ばあちゃんプロデュースによる大食い大会？の幕が切って落とされたのだった。

幸いメンバーには、普段から大食い自慢のぽっちゃりくんが1人いたから、序盤は順調だったけど、約30分経過後、みなの箸が見事にぴたりと止まった。

それでも、

せっかくのおもてなしを無駄にしてはならぬ

と僕らは決死の形相でほふく前進のように箸を進め続けた。

そして、ようやくゴールが見え始めたまさにそのときだった。

窓越しにじいちゃんが自転車に乗ってどこかに出かける姿が見えたのは。

一瞬、嫌な予感がしたが、いやきっと僕の思い過ごしだと考えることにした。

10分後、じいちゃんが自転車に乗ってどこかから帰ってきた。

このとき自転車の左ハンドル部分には大きな白いビニール袋がかかっていて、いかにも重いものが入ってる感じでぶらぶら揺れていた。

そして、居間に現れるなり、じいちゃんは開口一番

「きっとみんな食べ盛りで足りない思うたから、たこ焼き買ってきたわ〜！」

と言ったのだった。

この瞬間、完全に心が折れてしまった僕たちは素直に

「すみません！せっかくのごちそうなのに、もうおなかいっぱいで食べられません！」

と無条件降伏したのだった。

でも、まったく怒られることなく、

むしろ

ついつい張り切って作り過ぎてしまってごめんね〜

とばあちゃんから謝られた記憶がある。

あと、あのじいちゃんのたこ焼きはちゃんとお夜食用のおみやとして手渡された(笑)

あれから早いもので、もう20年以上が過ぎた。

あのまんが日本昔ばなしに出てきそうな、じいちゃん、ばあちゃんももうこの世にはいない。

しかし、その伝統芸？は、見事にうちの母親に引き継がれており、今では彼女の孫である僕の息子（もともとすごい少食）があのときの僕らと同じような当惑の表情を浮かべている。

でも、いつも申し訳ないとは思っているけど、めちゃくちゃ嬉しいんだからね！