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見習い⭐︎魔法少年ポップくん

先週の金曜日の夜

飲み会でいつもより遅く家に帰ると、ちょうど息子が「魔女の宅急便」を観ているところだった。

僕はそっと、画面を食い入るように見つめている彼の横顔を覗きながら、

「見習い魔法少年が見習い魔法少女のアニメを見ているぞ。」

と思って、ちょっと可笑しくなった。

そして、ひょっとすると、この時の彼女の勇姿に息子は勇気づけられたのかもしれない。

というのも、それから3日後の

今週の月曜日の夜

息子は去年のクリスマスにサンタさんからもらってからずっと大事にしまっていた魔法の杖をこのとき初めて取り出して、使ってみたからだった。

つまり、この日は記念すべき彼の魔法使いデビューの日となったわけだ。

けど、本音を言うと、今までずっと彼のことをそばで見ていた僕からすれば、魔法の杖をもらう前から、もう彼はすでに大きな魔法を自分自身と僕ら家族にかけていた、と思っている。

どういうことか?

正直、これから書くことは、読んでてかなりしんどい話になると思うけれど、やはり息子の人となりをみんなにちゃんと知ってほしいから書き進めることにしよう(少しでも雰囲気を明るく?したいので、ここからは僕の大切な友人が名付けてくれた彼のニックネームであるポップくんの名前を使うことにする)

あれは忘れもしない今から2年前の4月中旬のことだった。

小学3年に上がったばかりのポップくんは、同級生のAくんと下校中だった。

Aくんとは小学1年から同じクラスで、わりと仲良しだったはずなのだけど、そのAくんがなぜか突然、立ち止まって、ポップくんの胸を思いっきり正拳突きして来たのだった。

痛かったのと突然のことでポップくんはその場で泣き出してしまったから、周りの下校中の生徒たちが駆けつけて、最後には先生まで来て結構、大騒ぎになったらしい。

という話を、その日の夕方に彼から聞いた僕と妻はもちろん驚いてしまったけど、幸い大きな怪我にはならなかったこと、そして、何よりポップくん自身が「ショックだったけど、明日、なぜこんなことしたかAくんに聞いてみるよ」と割と冷静に話していたから、まあ大丈夫だろう、と考えたのだった。

しかし、これが全然大丈夫じゃなかったのだ。

というのも、翌朝からポップくんは、原因不明の激しい吐き気を発症して、学校に行くどころか、動くことすらままならない状態になってしまったからだ。

その病状は4月から6月にかけてが特にひどく、彼曰く、辛さのマックスを10とすると、この時期は8〜10というとてつもなく激しい吐き気にほぼ一日中、悩まされてしまうことになる。

このときのポップくんは激しい吐き気のせいで夜もなかなか寝つくことができず、ほとんど毎晩のように

「もう苦しくて死にそうだ。いっそのことを誰か僕を殺してくれー!」

と泣き叫んでいた。

その度に、何もできない僕と妻は、オロオロしながら、とにかく背中をさすったり、抱きしめてあげることしかできなかった。

あまりにも辛そうな彼の姿に本当にこのまま死んじゃうんじゃないかと不安になって真夜中に救急車を呼んで緊急外来に連れていくことも一度や二度じゃなかった。

でも、それも単なる気休めにしかならず、このときのお医者さんたちは異口同音に「おそらく心因性のものなので、少ししたらよくなると思いますよ」と言うだけだった。

それだけでもあの小さな身体には余りあるほどの辛い日々なのに、僕ら家族、いや、ポップくんに、まるで追い討ちをかけるように、とてもショックな出来事が襲ったのだった。

それは、担任の先生がこの事件(と言い切ってしまおう)を隠蔽しようとしたことに端を発する。

事件当日、先生がポップくんはじめ現場にいた子供達にしっかりと事情聴取していたにも関わらず、そして、後日、僕と妻からも二度に渡って担任の先生にこの件はどうか不問にせずしっかり調査してください、と伝えていたにも関わらず、先生は何も行動を起こさなかった。

しかし、結局、この事件は現場にいた児童の保護者からの告発によって校長や教頭の知るところになり、事件から約一ヶ月後、校長や担任の先生たちが慌ててうちに謝罪にやって来たのだった。

けど、今思うと、このときの彼らの不誠実な対応が、ポップくんの症状を長引かせた原因になったと僕は確信している。

いろいろチグハグでおかしなことばかり言われたけれど、おそらく決定的だったのは彼らがAくんの「そんなつもりはなかった。たまたま腕を振っていたら、ぶつかってしまった」という主張を、まるでそっちのほうが真実かのように息子に伝えてしまったことだ。

おそらく事を大きくしたくない、という学校側の思惑も働いたのだろうけど、これを聞いたポップくんは、

「どうして誰も僕の言う事を信じてくれないの?」

と絶望してしまったのだと思う。

それが証拠に他人の悪口とか絶対に言わない彼なのに、その後、Aくんに対してではなく、先生たちに対してだけは何度か悪態をついていたからだ。

何はともあれ、その後、ポップくんは、本当に筆舌に尽くし難い地獄のような日々を1年以上にも渡って体験してしまうことになる。

正直、このときに起きた様々を僕はまだ冷静に振り返る自信はないので、代わりに、当時、とにかく苦しむ彼をなんとかしたいと、素人ながら色々調べた(結局、何の役にも立たなかったけど)過去記事を貼り付けておきます。

しかし、当時を振り返ると、僕たち家族も専門家もほとんど何の役にも立たなかった、というのが僕の偽らざる感想だ。

結局、

「いづれ時間が経てば、治りますよ」

と他人事のように言っていた小児精神科の先生がいちばん正しかったのかもしれない。

そう、おかげさまで、今ではあんなに苦しんでいた吐き気からも解放され、あのとき満足に食べれなかった食事もきちんと摂れるようになり、何より、また家族と一緒に釣りに行ったり、ゲームしたり、テレビのくだらないバラエティ番組を観ながらゲラゲラと笑い合える、そんな

どうってことのない

かけがえのない日々

を自らの力で取り戻すことができたポップくんである。

これを魔法と言わずに何と言うだろう。

そして、こんなすごい魔法で自らを救ったポップくんは、サンタさんからもらった魔法の杖を使って、今度は周りのみんなのことを救いたいって本気で思っている。

まだまだ見習いだけど、そんな魔法⭐︎少年ポップくんがこれから一人前の魔法使いに成長していく様子を間近で見られるのが、僕は楽しみで仕方がない。

「おちこんだりもしたけれど、ポップくんは元気です」

最後に、最新のポップくんのインタビュー動画とロケットランチャー制作動画(以前、青豆さんに静止画を何度もタップさせてしまったヤツ😅)を貼り付けておきます。

なお、プライバシーに関わる内容なので、大変申し訳ないですが、ここから先は有料とさせていただきます。

インタビュー動画ほか

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