ボクはブルペンピッチャー
昨日、突然、気がついたんだ。
これまで僕はずっとブルペンにいたんだって。
そう、実は僕は、いつ自分の出番が来てもいいように、ブルペンでボールを投げ込みながらずっと肩を温め続けている控え投手だったのだ。
そして、この歳までずっとブルペンから出られなければ、もう一生、声なんかかからないだろうと普通なら思いそうなところだけど、僕の場合は不思議と全然そんなことはない。
それは、何よりこうやってブルペンで投げ続けている人生そのものがとても楽しくなっているせいかもしれない。
あと、ぶっちゃけ、マウンドで活躍できるという自信も年を重ねるごとに増しているしね。
実際、以前のようなスピードボールは投げられなくなったし、スタミナもなくなったけど、その分、たくさんの変化球とノムさん的な心理テクを覚えた僕は、常に、
今が最高のコンデション
だって自負している。
だから、本当にいつ声がかかるのかと内心ドキドキしながら、毎日、僕はブルペンでキャッチャーミットめがけて全力でボールを投げ込んでいるのだ。
そんなある日のこと、ついに監督から声がかかった。
「ピッチャー交代、N.O.T.E!」
5万人の大観衆が固唾を飲んで見守る中、スタジアムの真ん中にあるあの丘の上に立つ。
その瞬間、みんなの視線が一斉に自分に注がれるのが分かる。
「心地いい緊張感だな・・・。」
とニヤリとしてから僕は、大きく両腕を振りかぶって、自分の人生の全てが凝縮された自分にしか投げられないとっておきの魔球をお披露目する。
そして、数分後、
地鳴りのように鳴り響く大歓声を全身に浴びながら、僕は
「ヨッシャ!」
と小さくガッツボールするのだ。
・・・というイメトレをついさっきもやっていた(笑)
というか、僕に限らず、人は(自分さえ諦めさえしなければ)誰だっていつの日にか必ず自分にとっての最高の晴れ舞台に立てるはずなのだ。
まあ真偽の程は定かじゃないけど(笑)、そう思って過ごしておくことに越したことはないだろう。
だって、せっかくペタジーニ監督から鶴の一声がかかったときに、
「準備不足なので無理です」
じゃあ、あまりにもダサ過ぎだもん。
一方で、もしかするとこの世で一番イケてるヤツというのは、ずっとブルペンで万全な状態を保ち続けたまま、永遠にマウンドに立つことのない人かもしれない、とすら思っている。
要するに、マウンドに立つ立たないは実はさしたる問題ではなく、大切なのは一人の職業人として自らの責任をしっかり果たせるように常に自分の能力を高める努力を怠らない姿勢なんだろう。
まあ、そんな殊勝なことを言いながら、
いつの日か、おまえらに僕の勇姿を見せつけてやんかんな、橋本環奈
と内心ではめちゃくちゃギラついてもいるけど。
そんな訳で、
どうやら僕の登板はまだまだ先の話になりそうだ(笑)
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