スナップチャットよ、お前もか。

「スナップチャットって何が面白いの?」って身の回りでよく聞きます。私も、そう思ってました。色々なアプリやサービスを積極的に使っている方ですが、スナップチャットだけは今ひとつ良くわかりませんでした。一年くらい前にアカウントを作って子供達にお友達リクエストしたところ「ママ、やめてよ」と冷たく断られ、一人スナップチャットするのも寂しいのでそのまま放置状態です。

私には敷居の高い「若者アプリ」なので、横から見ているだけですが、ティーンエージャー達の観察をまとめると:

▪️ 「今、この瞬間」を友達と共有して「その場に一緒にいる感」を味わえる

▪️ 目玉が飛び出てきたり、口から虹がこぼれ出てきたり、「フェイススワップ(顔を入れ替える)」したり、ギャグフィルターが楽しい

▪️ すぐ消える。送られたものは一回見たら消える。「ストーリー(タイムライン)にあげたものも24時間で消える。ここでは思い出が「揮発性」があってOK。「イマココ」を伝えるのが満足。お友達が「そんなことあったっけ」って覚えてなくても気にならない。(形に残したい記憶は選りすぐった上で綺麗に修正してインスタする)

なるほどね〜、と思います。私も高校・大学の頃の自分をそんなに残したいと思わないし、振り返って見たくもない。「高校の時の自分はとてもカッコよかった!もう一度見てみたい!」と言った友人もいますが、彼は(多分)マイノリティーだと思います。

スナップチャットの「飛ぶ鳥うつ」勢いの成長は「インターネットへの若者層の影響力」を直接的に反映してるんでしょうね。「Snapchatを使いこなせないのは30歳以上に限らない」とBloombergのこの記事で使い方説明してますが、「右スワップ・左スワップ・タップ」でなんでこんなに器用にできるんだろうって、本当に不思議です。10代の子供達が持っている「脳内コマンド・マップ」は私達と違うんじゃないかって気がします。

スナップチャットのメインストリーム化はどんどん進んでいて、今年の野球シーズンはメジャーリーグ公式スナップチャットストーリーが各チーム毎にさ公開されるらしいです。また、コンサートやイベントでその場所にいるスナッパー達からビデオをコンピレーションする「Live Story」とか、同じ大学キャンパス内の「Campus Story」とか新しい機能もあるんですね。(どれも私にはまだハードル高いですが。)

前置きが長くなりましたが、スナップチャットの法律よりの話をちょっと。(念のため、法律アドバイスでは決してありません。この分野の専門でもないので非常に大雑把な内容になっています。)

スナップチャットって本当にどこまでが「消える思い出」なのか、考えてみました。

法的手続きを経てユーザ情報を取得することは可能だし、著作権違反としてテイクダウンリクエストもできます。たとえば警察の捜査令状や裁判所からの証拠提出命令には応じなければなりません。全ての開示要請に応じるわけではありませんが、法的有効性が認められた場合は一定の手続き方法にのっとって情報提出しています。

「消えるサービス」のスナップチャットも他の企業と同じように情報開示リクエストに対応していて、その状況を去年から「Transparency Report」で公表しはじめました。

Transparency ReportはGoogleが2005年に率先して情報開示をはじめ、今ではネット系のサービスでは標準になりました。(年に2回、が標準です。)たとえばFacebookのこのページには自社の状況に加え、他の各社のTransparency Reportをまとめてくれています。会社によって情報のまとめ方は様々ですが、一般的に以下のカテゴリーに分け、また国別に分けてるところが多いです)

✔︎ ユーザーアカウント情報開示を求めるもの
✔︎ コンテンツのテイクダウンを要求するもの(著作権違反、誹謗中傷)
✔︎ 警察からの緊急リクエスト(犯罪がらみ)
✔︎ 国家安全保障にかかわる情報開示リクエスト(たとえばテロ対策が相当すると思います)

スナップチャットの直近のTransparency Report(2015年6−12月期)は興味深いものでした。

ユーザー数100millionを超えてるにもかかわらず、情報開示要請件数は意外に少ないと思いました。また、Criminal Legal Request(犯罪捜査関連の開示要請)は862件のリクエストがあり、そのうち80%に応じてるのは他のところに比べて高い比率という印象です。

「すぐ消えるコンテンツ」なだけにコンテンツのテイクダウン要請はさすがにほぼゼロですが。

一方、スナップチャットユーザーが写真やビデオをコピー保存したり、スナップを簡単に保全可能にする「Snapped」というハック系アプリも存在する(した?)ようです。スナップチャットはこうしたThird partyアプリを規約違反として厳しく批判しています。

コピー保存はスナップチャット的には規約違反行為なのですが、それが犯罪者逮捕につながったケースもあります。「スナップチャットだから大丈夫!」と殺害の現場でスナップしたものを誰かが保存して警察に届け出たのが大きな手掛りになったそうです。あり得ないクレージーな話ですが。。。(元記事はこちら

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「デジタルワールドでの振る舞い」について子供達は中学・高校の授業でレクチャーを受けてきました。「ウェブにあげたものは永遠」との刷り込みが活きていて、ソーシャルメディアとは比較的慎重に付き合っている感じです。(親としてはありがたいです。)そんな子供達にとってスナップチャットは「安全地帯」な位置付けで、ちょっとガードをおろして自然体で遊べるところみたいです。

うちのお姉ちゃんはお友達との誕生日パーティーの翌朝、「スナップチャットでよかった。。。」と心の底の底から思ったらしいです。iPhoneに残ってるビデオは誰にも見せず永久お蔵入りらしいのですが、パーティーの現場ではお友達とスナップチャット共有して多いに楽しかった、と。ちょこっとしか見せてくれなかったですが、彼女のお年頃の若者として一応普通の範囲内でふざけてはしゃいでて、場所はお友達とのホームパーティーで特に誰に迷惑をかけるわけでもなく、皆それぞれがUberで無事に帰宅してて、若者パーティーとしては上出来で安心な内容でした。(ほっ。)でも彼女が「スナップで良かった」という気持ちもわかりました。(笑)

でもスナップチャットもデジタルワールドの立派な一員なので、「スナップ性」には大いなる限界があります。消えるから大丈夫!って過信せずに、他のものと同じように「デジタルは永遠です」という意識をちょこっとは持ってた方がいいよ、と子供達に改めてお説教する必要を感じてます。

今日も読んでいただきありがとうございました。


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