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【これは運命?】学校の給水塔から聞こえる声に恋をした。



これはもう何年も前なんだけど、
俺が体験した不思議な出来事の話だ。

当時俺は入学したばかりの高校に馴染めずにいた。

学校とか人生とか
なんかつまんねーなぁ
って、退屈とヒマを持て余してたんだ。

クラスの連中とも馴染めないっていうか
陽キャも陰キャもそろって面倒くさいなって。

それでどっか一人になれる場所ないかって探して
屋上はどうかって思ったわけ。

屋上は鍵がかかってて入れないようになってるんだけど、
ネットでピッキングのやり方調べて試してみたら、
案外すんなり開いちゃってさ。

こりゃいいやって。

屋上には給水塔があって、
日陰になるからそばで寝てたんだよ。

そしたらボソボソと声がした。
教師にバレたのかと思ったんだけど、屋上には誰もいなくてさ。

「あれ? 空耳?」

って、声に出したら
突然

「誰?」

って女の声が聞こえてきたんだよ。
俺はもう一回屋上を見渡したけど、やっぱり誰もいない。

「誰かいるの?」

ってまた声が聞こえてきたんだけど、
どうもその声が、給水塔の中から聞こえてきてることに気づいて。

なんかちょっと気味悪くなって、すぐに教室に戻った。

それから一週間くらいかな。
屋上には行ってなかったんだけど、
どうも気になって、もう一度行ってみることにした。

で、恐る恐る給水塔をコンコンってノックしてみたんだ。
まあ我ながら間抜けっぽいとは思ったけど。

そしたらまた声がしたんだ。

「誰?」って。

試しに名乗ってみたら、少し間があって、

「知らない」

って言うから、そりゃそうだろって。

はじめは幽霊かと思った。
生徒の死体を給水塔に入れて隠したとか、ホラー映画とかでありそうじゃん。
で、その幽霊がこうやって話しかけてきたんじゃないかって。

気になって、調べてみたりもした。
この学校で行方不明になった生徒がいなかったか。

当時はできたばかりの新設校だったから
調べるのはそんなに難しくなかった。
で、調べた結果、結局何も出てこなかったんだ。

まあ例えそういった事件とかあったとしても
そもそも、あんまりオカルトとか信じるタイプじゃないんだけどね。

たぶん給水塔の配管が校内の、例えばトイレとかに繋がってて
トイレにこもってる女子と話しているとか
そんなところだろうって。

あまり深く考えないようにした。

とりあえずこの状況がなんだか面白く思えて、
給水塔から聞こえてくる声と話すのが日課になったんだ。

何を話したかって言うと、大抵はくだらないこと。
こないだのテストがどうだった、とか
変わった夢をみた、とか

まあそんなやり取りがしばらく続いたんだけど、
ある日屋上に行くと、
給水塔から泣き声が聞こえてくるんだよ。

どうしたか聞いても泣いてばかりで答えない。

それでしばらく彼女が泣きやむまで
給水塔にもたれて座ってた。

で、30分くらい経ってから
少し落ち着いた様子の声で彼女が言ったんだ。

「ありがとう。そばにいてくれて」

それ以来、もう給水塔から声が聞こえてくることはなかった。

二年にあがって、
それなりに学校でもうまくやっていけるようになった頃、
校内放送が流れてきたんだよ。

よくある放送部が昼休みに流すやつ。

驚いた。
だってスピーカーから流れてきたのは、あの『声』だったから。

俺は慌てて放送室に向かった。

放送室の中には一人の生徒がいたんだ。
マイクに向かって話しているその生徒の声は、間違いなくあの声の主だった。

俺は放送中とかおかまいなしに中に入ったから
向こうはビックリした顔していて。
今考えたらかなり大胆なことしたなって思う。

で、俺は気がついたら名乗ってた。
こっちの名前は言ってたから、名乗ればすぐわかると思ってさ。

けれど彼女、知らないって言うんだよ。
何が起こってるのか全くわからないって顔して
何のことだからわからないって。
給水塔から聞こえたあの『声』で言うんだ。

それから彼女とは普通に学校で話すようになった。
給水塔越しに話したことは、何度聞いても身に覚えがないって言うし
実際話した内容も彼女は知らなかった。

今、その彼女とは結婚して一緒に暮らしてる。
あれから高校を卒業して、同じ大学に入って就職して。
働き始めて2年目に俺からプロポーズした。

最近、彼女が妊娠したことがわかって、喜んだのもつかの間
流産になっちゃったんだ。

彼女、ずいぶんとふさぎ込んじゃって。

出来ればずっとそばにいてやりたかったけど、
さすがに昼は会社いかないとならないし。
一人にさせちゃうことに罪悪感があった。

ある日、家に帰ると彼女が言ったんだよ。
「私、あなたと話したかも」って。

彼女が言うには、妊娠したくらいから
壁から声が聞こえるようになったらしいんだ。
うちは角部屋だから隣に部屋なんてないし、
幻聴かとも思ったらしいんだけど、その声の相手は俺の名前を名乗ったって言うんだよ。

はじめは怖くて知らないフリしてたみたいだけど、
だんだん話すうちに本人じゃないかって思うようになったらしい。

それでどんな話したのか聞いてみたら、
あの時、給水塔で話した内容と同じだったんだよ。

もしかしたら、
大変なときにあまりそばにいてやれなかった俺の代わりに
あの時の俺がいてやったのかなって。

最近、そう思うようになった。

おわり


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